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雑話143「ルノワールとブリーチーズ」

ルノワールが独身の頃は、簡易食堂と呼ばれるところでよく食事をしていたようです。


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ピエール=オーギュスト・ルノワール「自画像」1875年頃

※34歳でまだ独身の頃

さて、19世紀のパリにあった簡易食堂とは、どんなものだったのでしょう?


それらは、たいてい女性が一人でやっているような、小さな日用雑貨の店のことでした。クリームや牛乳、バター、卵などの売り場の隣に3つ4つのテーブルをおいた部屋があり、常連客たちはそこで「その日の特別料理」を食べることができました。


部屋のすみの小さなストーブでは、子牛のシチューや羊の煮込み、ポトフなどがとろ火でぐつぐつ煮られ、それが暖房にもなっていました。たいていはポトフでしたが、この料理だといちいち傍について加減を見る必要がなかったからでしょう。


ルノワールが通っていた簡易食堂では、デザートには一切れのチーズが出されました。ルノワールを娘婿にしたかった食堂の女主人は、彼のために一番いいブリーチーズをとっておいてくれたそうです。


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ルノワールの好物だったブリーチーズ

※彼の好みは「あまりべとべとしない、ちょうどいい加減のやつ」でした

実は、ルノワールはブリーチーズが大好物でした。彼はブリーチーズのことを「チーズの王様だね。だが、パリでしか喰えないんだよ。いったん市門を出ると、もう喰えたものじゃないね!」などといっていました。


ブリーチーズとは、大型の白カビチーズのことです。フランスのパリ東部のブリー地方で作られていた白カビチーズが、地元の名前をつけて「ブリーチーズ」と呼ばれるようになりました。また、このチーズはカマンベールの原型だともいわれています。


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ブリーチーズ(ブリー・ド・モー)

その後、ブリーチーズは様々な国で作られるようになりました。特に、フランス産やオーストラリア産で、ミルクにクリーム分を加えた脂肪分の高いクリーミーでマイルドな味わいのものが人気だそうです。


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オーストラリア産ブリーチーズ

一方、フランスには、現在でも伝統的な手法で作られているブリーチーズがあります。それらは、ブリー・ド・モーとブリー・ド・ムランの2種類で、いずれも風味豊かで個性的な味わいだそうです。


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ブリー・ド・ムラン

ところで、簡易食堂に通っていたルノワールのお気に入りは、ブリーチーズだけではありませんでした。彼はなんと、その店で奥さんまで手に入れたのです。


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ピエール=オーギュスト・ルノワール「舟遊びの昼食」1880-1年

その店の常連客だったお針子のアリーヌ・シャリゴは、ルノワールの初期の作品に何度も登場しています。彼はたくさん食べるアリーヌを見るのはとても楽しかったと語っています。


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「舟遊びの昼食」に描かれた、アリーヌ・シャリゴ(後のルノワール夫人)