雑話141「暑さ凌ぎにどうぞ!」
お盆休みも終わりましたが、相変わらず残暑が厳しくて大変ですね。そこで、今週は見るだけで涼しく(?)感じていただけるような作品をご紹介いたします。
ヘラルト・ダーフィット「シザムネスの皮剥ぎ」1498年
この目を疑うような場面を描いた作品は、15世紀から16世紀に渡ってフランドル地方で活躍したヘラルド・ダーフィットの「シザムネスの皮剥ぎ」です。
この作品、かつてはベルギーの代表的な観光都市であるブルージュの市庁舎に飾られていたそうですが、こんなグロテスクな絵を公共の建造物に飾るなど日本ではちょっと考えにくいですね。
ブルージュの市庁舎
この絵は、古代ギリシャの歴史家であるヘロドトスの「歴史」を起源とする逸話を基にして描かれています。
話の概要は、ペルシャの王カンビュセスが、賄賂を受け取り不正を働いた執政官シザムネスの皮を生きたまま剥ぎ取り、その皮を張った椅子に、シザムネスの跡を継いだ彼の息子を座らせたという残酷なものです。
「シザムネスの皮剥ぎ」の中央部
ここではペルシャ王らが見守る中、処刑執行人たちが手際よく皮を剥いでいます。シザムネスは歯を食いしばり、目には恐怖と痛みの色が表れています。
シザムネスの身体中から剥がされた皮は、この絵の右上に描かれた玉座に布のように掛けられています。
「シザムネスの皮剥ぎ」の左上部
これは、彼の跡を継いでこの椅子にすわる息子のオタネスに対して、公平な裁きをするようにというリマインダーなのです。
実はこの絵は2対の内の1点で、もう片方にはシザムネスを逮捕する場面が描かれています。
ヘラルト・ダーフット「シザムネスの逮捕」1498年
ペルシャ王らがシザムネスを逮捕している左上には、シザムネスが男から賄賂として金袋を受け取っている場面が小さく描かれています。
「シザムネスの逮捕」の左上部
この絵はもちろん、単に残虐な場面を見せる目的で描かれたのではありません。ここでは、不正に対する厳格な裁きの規範を示すと同時に、背信への戒めを表しているのです。
こうした違法行為に対して、適法かつ厳粛な処罰が執行されたことを伝える世俗主題を描いた作品は「正義図」と呼ばれ、ヨーロッパでは市庁舎や法廷といった執政・司法の場に置かれていたようです。





