※この記事は過去記事の再構成です
諸君、ご壮健かな。
さて、以前少しとりあげてみたシリーズ。「ガンダムの人物が、実社会にいたら 」
意外と好きな読者がいるらしく、たまには書いてみるのもありかと思い、今日は筆を取った。
今回の考える人物。
ニナ・パープルトン。
彼女は「機動戦士ガンダム」シリーズの中で。
3大悪女などと言われて、たたかれているが。
無理をしても、弁護する余地はないだろうか?
まず、その人生を振りかえってみよう。
彼女は、アナハイムエレクトロニクスというモビルスーツを作る会社の社員。新型のガンダムを開発し、それを地球連邦軍に納品しながらテストに立ち会う。
そこで知り合ったパイロットのコウ・ウラキと恋に落ちた。そしてかつてシャア・アズナブルなどが在籍し、しかしすでに滅んだジオン公国のの残党、デラーズ・フリートとともに戦う。
ここまでなら、ほほえましいつり橋の恋と言えるかもしれない。
しかし彼女は、かつてデラーズ・フリートのカリスマパイロット、アナベル・ガトーと恋人同士だった。
そして戦場で再会してしまい、コウとガトーの間で揺れ動いた彼女は、あろうことかガトーを選んでしまう。
そして、ジオン残党に保護されるものの、ガトーが戦死するとコウのもとに走り、ニッコリと出迎えるのだ。
この両軍・両雄を行ったり来たりし、コウを翻弄し苦しめる彼女の事を人は言う。
「ガンダム3大悪女」と。
しかし、はたして彼女は悪人だろうか?
考えてみよう。私は思う。
ニナは「いい人」。
ガトーに対しても仲良く、いい人。
コウに対しても仲良く、いい人。
ニナからしてみると。
「私は仲良くしたいだけ、それはおかしい?」
正しい。きわめて正論だ。しかし、ガトーとコウからするとどうか。
ガトーはコウを含めた、地球連邦軍を皆殺しにしようとしている。そしてガトーから見ると、コウは自分の命を奪いに来る討伐者。
二人からしたら、自分の仲良しが、無数に傷つけてくる相手とも仲良し。
そこに不快感がある。
八方美人な人は、この残酷さに気がつかない。そして、いつも言う「何が悪いの?」と。
そして、他者はニナはいい人だという。二人もニナはいい人だと思う。敵と通じても責められない。
この恐るべき不完全燃焼。
さあ、どうだろう?
ニナ・パープルトンは悪いのか。それとも悪くないのか。
よくわからなくなってくる。
不幸な偶然が重なっただけであり、そこには悪意がないような気もする。
考えようによっては、昔の恋人ガトーと恋人コウの間の泥仕合の中。それぞれの面目を保ったということでは、素晴らしい人のような気もする。
ある意味、彼女は翻弄された被害者。
でも加害者。
と、ぐるぐる思考を回して結論。
もし実社会に、ニナ・パープルトンがいたら。
親友、ましてや恋人などとんでもない、必要最低限の会話にとどまりたい。いつの間にかこちらが悪者となる優等生。
いい子である彼女と心を通じ合わせた瞬間が、不作為のいさかいの始まりのような気がするのだ。
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