GOD DRAG
私は、初めて覚せい剤使用してこれまでに味わったことの無い快楽を知ってしまいました。
ビデオ試写室を出た後もその高揚感は続き、帰宅したあとも自慰行為をしました。
性欲以外の欲望は一切消えました。
食べ物も飲み物も口にしたくありませんでした。
いや、食欲と言う概念が消えていたというのが正解かもしれません。
食事を摂るということ自体が私の中から欠落していました。
睡眠も同じく。
目が冴えどれだけ起きていても平気でした。
その時の私にとって覚醒剤はもはや神の薬と言っても過言ではありませんでした。
切れ目
しかし神の薬の効果は長くは続きませんでした。
2日間ほぼ飲まず食わずで睡眠もとらず過ごしているとまずはまずは睡魔が急に襲いだしました。
力尽きるようにその場で眠りに落ちましたが、10分もしないうちに目が覚めまた眠れなくなりました。
身体は倦怠感に襲われて眠りたいはずなのに目が冴えわったていました。
食事も無理やり取ろうとすると顎が固まってしまい口が大きく開きませんでした。
同じ体勢を何時間も続けたせいで全身が硬直状態に陥っていました。
体重を測るとものの2,3日で3キロも減っていました。
たった一度の摂取だったはずなのに身体への負担は計り知れませんでした。
3日目になると身体の底から疲労感が襲いました。
そしてようやく充電が切れて泥のように眠りこけました。
元気の前借り
覚醒剤の効能はよくこう例えられることがありますが身をもってそれを味わいました。
目が覚めても瞼と脳みそが機能せずすぐにまた眠ってしまう。無理やり起きていても正常に思考が働かない。
食欲も回復しましたが圧倒的なカロリー不足状態で、それを埋めるためにスナック菓子やジャンクフードのようなとにかく体に負担がかかるほどカロリーが高いものを自然と選んで摂取しました。
そして、覚醒剤を摂取したことによって不足していた睡眠と栄養を取り戻して元の状態に戻るとまた覚醒剤を摂取したいという欲望が復活したのです。
正直に言って、切れ目と言われる離脱症状があることは知識として知っていたけど実際に味わってみるとこれくらいなものなら耐えられるし、それ以上の快楽が味わえるなら気になりませんでした。
しかし、現実的に私がまた覚醒剤を使うためには一緒に使用した友人が使う時に誘いを待つしか方法は無く、その友人にまた覚醒剤を使いたいと頼むことは私にはできませんでした。
それは覚醒剤中毒者だと思われたくなかったし、私自身が覚剤中毒者になりたくないといった気持ちがまだあったからです。
それからは、月に2回ほどその友人の誘いを待ち、声をかけられた時だけ覚醒剤を使用す所謂たまポン(たまに使用すること)生活になりました。
しかしそんな生活は長くは続きませんでした,,,
単独行動
数ヶ月後、私は自分ひとりで覚醒剤を買いに行くことになりました。
友人が仕事の都合で買いに行くことができず、私に売人の連絡先を教えてくれたのです。
私は自分の携帯電話からイラン人の密売人に連絡をとった後、ひとり車に乗り待ち合わせ場所に向かいました。
当時の待ち合わせ場所はとある飲食店の付近、〇〇の1番と言われたら裏の駐車場、2番と言われたら少し離れたパチンコ屋の駐車場が受け渡し場所でした。
イラン人密売人はとても日本語が達者で、そしてとても陽気で話しやすい人物でした。
仲良くなるのに時間はかかりませんでした。
その時、購入した覚せい剤の入ったパケと注射器以外に、おまけとして2回使用できるほどの覚醒剤の入ったパケと注射器を一本私にくれたのです。
それを正直に友人に伝えてシェアするといった発想はありませんでした。
自分一人でくすめてこっそり使ってやる。
きっとそれは必然だったのだと思います。
その後、私はさらなる深みに落ちていきました。
もう後に引くことはできませんでした。
覚せい剤の沼に足を踏み入れ、私は自分の意志で底の見えない沼の中に嵌まっていったのです。
(続く)