GTBコンサルティング 平賀 正志(中小企業診断士) -9ページ目

先月の続きで「自分の失敗談とBCP」について書こうと思っていたのですが、そんなことをブッ飛ばすような出来事が今日ありましたので、話題をそちらに急遽変更して進めたいと思います。


それは、日本銀行による「大規模金融緩和第2弾」です。

これは、日本銀行(以下、日銀)が市中に出回っている国債を買い上げ、貨幣を市中に流す、というものです。買い上げの原資は日銀自身が刷ったお金・・・つまりは対価のないお金ってことです。

対価のないお金が、市中に流れるということは、どういうことか?
それは、皆さんや私の手元にあるお金の価値が相対的に下がる、ということ、つまりはモノの価値とのバランスを取るために物価が上がるということです。それに応じて、日本国内の貨幣価値が下がることのバランス取りのため、外国通貨の価値が上がる・・・円安を引き起こします。


これの何が中小企業(事業者)にとって問題なのか?

企業(事業者)自身サイドの問題として・・・
①仕入れるモノの値段が高くなり、製品やサービス原価維持が物理的に困難になること。
②しかしながら、販売価格は簡単に上げられないこと。
(特に自分より規模の大きい企業に製品を納入している場合、納品価格を上げるというと、契約を打ち切られる可能性がとっても高い。サービス業の場合も、提供価格が上がることで客離れが起こる可能性が同様に非常に高くなる)
③ ①に関連して、販売管理・一般管理のための費用も上がり(水道光熱費や事務消耗品費などなど)、全体として利益を低下させる。

ここでは、②への対応が出来るのなら、まだ何とかなるのです。要は原価が高くなっても、それを販売価格にきちんと反映させることが出来るほどの財・サービスの提供が出来るなら、少々価格が上がっても、買ってくれる人は短期的には減らないでしょう。しかし、それが出来る中小事業者は非常に少ない。

消費者サイドの問題として・・・
①収入が増えない人々は、物価だけが上がるので、生活の質量の両面でレベルを下げることを余儀なくなされる。
(収入が増えない人々とは、給与が上がらない民間企業・事業所の従業員の方々はもちろん、年金生活の方々、学生の方々、そして人事院勧告がないと給与の増えない公的機関の方々もここに含むべきでしょう)
②消費が増えないということは、企業の業績のネタとなる売上につながらないということ。となれば、余計に給与は増えず→生活レベルが下がる、という悪循環に陥る。

ここまで読んでいただいてお分かりだと思いますが、今回の金融大規模緩和はほとんどの人にとって何らプラスにならないのです。しかも販売価格に転嫁できない中小企業はこれまでの円安で電気代や水道代、その他コストが過大になってしんどい目をされてきています。そこへこれです。
折角、皆さんが毎日毎日コスト対策をしても国や日銀のほうでその努力をつぶしてしまう。そういうことが今日起こったのです。


現代は国の境が非常にあいまいになりました。
国内で満足いく価格のモノやサービスが手に入らなかったら、海外から買えば良い。そういう時代です。事実、個人消費者レベルであってもインターネット通販によって全く同じモノを海外からより安く買えたりするのです。しかも我々の周囲にあるもののほとんどは輸入モノですよね。果物も、野菜も、魚も、肉も、大抵の衣料も、100円ショップの品物なんて十中八九輸入品。だとするならば、円安になればなるほど、輸入コストも高くなる。ということは、国内での物価も上がる、海外から輸入するものの値段も高くなる。そう、ダブルパンチです。

そういう時代に、そしてダブルパンチになることが目に見えているのに、国内の一部の大企業の輸出政策のためだけに、金融緩和をするなんてバカげています。それで日銀総裁なんて記者会見でご満悦の表情でペラペラおしゃべりしている。何を考えているのかちっともわかりません。中小企業には死ねとでも言うのでしょうか。


だから円高が良いということには即なりませんが、これだけ輸入に依存している日本は円安になってはいけないのです(個人的には世界の原油を英米メジャーよりも好条件で横取りできるくらいの円高でも良いと思っているくらいですけれどね)。
円安になったら観光客が来るって?最初のうちは来るかもしれません。でも国内に物価高・円安によるコスト高が蔓延すると、海外からの旅行客だって「日本は滞在コストが高いから、旅行先としては向かないな」ということになるのです。


細かい話はさておきですが、今日起こったことは、皆さんの努力を一瞬にしてフイにしてしまうことだったのです。特に、これから年末にかけて燃料費などがかさむ事業をなさっている方、気を付けていただきたいものです。すぐに悪影響が出て来ると思われます。

他にも注意すべき点はあります。またそのお手伝いも致しますので、ぜひお声掛けください。一緒に頑張りましょう。


ペタしてね

今年は夏の終わりが早かったな、と思ったら、しつこくジメーっとした日が続いておりますね。

今日で上半期が終わったという事業者様も多いと思います。
ちっとも景気回復の実感がなく、消費者の視点では日常生活における購買活動への締め付け感が半端ない感じで、心身ともに重たくなってしまう昨今ですが、頑張って乗り切っていきたいものです。


さて、今月の本コラムは、私の失敗談を取り上げます。
そしてそこから、経営上の重要ポイントを見い出してみたいと思います。

その失敗ですが、一つは世間的にも話題のニュースに私自身が巻き込まれたもの、もう一つは単なるアンフォースド・エラー(Unforced Error、要はうっかりミス)です。
長くなりそうなので、コラムを2回に分けて書きます。
まずその1は・・・

<失敗談その1>
これを書いております、9月30日午前にYahooメールが完全停止するという事態が起こりました(現在も継続停止中)。きっとこれをお読みの方々の中でもYahooメールをお使いの方もいらっしゃると思います。
私もYahooメールのユーザーであり、仕事関連のメールを全てそこへ集中させて使っていたものですから、メールアカウントが使えなくて、仕事が止まってしまっております。それによる苦情も来ました。仕事の依頼だったのですが、「メールが跳ね返ってしまうぞ!」とお叱りも受けました(たまたまそのご依頼者の方は私の電話番号をご存じでしたから、電話をいただいて事なきを得たのですが)。

ここから何を読み取るか・・・ですが、
もちろんメールが停止し、それが長引いていることそのものは、Yahoo株式会社の大失態であります。
しかし、便利さにかまけて、緊急事態回避措置を講じていない私自身にも問題があります。つまり、

「1ヵ所にメールを集中させていて、他のメールアカウントにてデータコピーを取っていない」

ところに問題があるのです。だから、依存状態に問題が起きてしまうと、もうお手上げ。
では、相手側(今回はYahoo株式会社)がミスを犯しても自分が大丈夫でいられるように何ができるのか、を考えておかなければなりません。例を挙げてみましょう。

1、(先にも書きましたが)他のメールアカウントにデータコピーを持てるような仕掛けを作る。
例えば、メールを送信する際に、必ずCCやBCCで自分の使っている別のメールアドレスを指定し、そこに常にコピーが送られるようにしておく。受信メールの場合は、受け取ったらすぐにFW機能を使ってその別アドレスにコピーを転送する。

2、送受信したメールは全部プリントアウトしておく。
あまり経済的なやり方ではありませんし、時間も手間も場所も取るのですが、確実性は高いでしょう。

3、メールでのやり取り自体を止めてしまう。
これもEメールの便利さをわざわざ回避してしまうことになるのですが、そもそも今回のような問題に遭遇するこは全くありません。但し、別の問題が発生しますが・・・。

こういう1~3のような対応策を練って、講じておくこと。
今回は単にEメールの使用というごくごく業務の一部分に相当することだったのですが、これを経営全般にまで広げたものが、BCP(Business Continuity Planning=事業継続計画)というものです。
少し前に(特に東日本大震災直後)よく聞かれた言葉です。

緊急事態というものは、得てして予測が難しいのですが、難しいことは百も承知で(そういうものだと認めた上で)何らかの予防策や対応策を準備しておくのが、このBCPというものです。
BCP自体の全般的なことは、インターネット上に山というほど文献が出ていますので、ここでは述べません。しかし、こういうメールアドレスなどという些細なこと一つとっても、不測の事態が起こればアタフタするのが人間というものです。

そうならないために、常に代替策を持っておくことが重要なのですが、そういうことを皆様にお知らせするのが仕事である私自身が今回は全く何もできていなかったという、痛い経験でした。


これをお読みいただいている皆様には、まずEメール環境やインターネット利用環境が仮に滞ったらどうする?というのをまずお考えいただきたく思います。
もちろん、そのアイデアや実践策構築のためのお手伝いもさせていただきますので、お声かけください。


次回は続編を書きます。私の大好きな自転車にまつわることです。
お楽しみに(!?)。

では、季節の変わり目、まずはくれぐれもご自愛くださいますように。



ペタしてね



よく雨の降る8月でした。
私の住む京都市でも相当降りまして、雨水の下水道への排水が追い付かずに道路上へ溢れ出てしまっている箇所が大変たくさんありました。

毎年々々「記録的豪雨」と言われています。だとしたら、来年は今年よりも更にひどくなると思っておいて良いのかもしれません。ならば、何をすべきか今から考えて「予防策」を考えておきたいものです。被害を受けた後に「援助物資が欲しい、ボランティアの人に来てもらって手伝ってほしい」などと言う前に。



さて、本題はその話ではありません。

「都会と地方の格差」が論じられて相当長い年月が経っています。
しかし、一向にそれが縮まる気配はない。

どうしてだかわかりますか?

これを多くの方が理解できるようになれば、中小企業政策も、中小企業・事業者の方々への支援もガラッと変わると私は思っております。


で、どうしてかと言いますと、それは我々が「経済成長したい」と考えているからです。

「ん?それの何がおかしいの?」と思われた方、かつ都会ではなく地方にお住まいであったならば、非常に危険です。
どうしてだかわからないばかりか、その地方はますます縮小してしまうでしょう。

「経済成長したい」と願うとして、では、どうすれば成長できるのか、ということを真面目に考えなくてはなりません。では、どうすればいいのか。
近道は、

人口が増えること、かつ若い人口が増えること

だと思います。

当たり前じゃないか?とおっしゃるかもしれませんが、今の日本、かつ本当に人口が増えないといけない「地方」と呼ばれる地域は、大真面目にこれが出来ない限りにおいては、経済成長などできるはずがありません。

人口が減っている、かつ若い人口が減っている

となると、市場が小さくなるばかりなのです。
そんな中、どれだけ景気刺激策を行っても何も変わりません。
少数の勝ち組と大多数の負け組を作るのみです。企業・事業者でも同じことです。
だって小さくなる市場を奪い合うわけです。となると、

→体力・知力のある少数の企業が頭一歩リード
→その企業が体力・知力のない企業群のシェアを奪って成長
→成長して更に体力・知力の付いた企業が、更にそれ以外の企業群を窮地へ追いやる
(以降その繰り返し)

という状況に陥ります。となると、一部の体力・知力のある企業がたくさんのその他企業をつぶしていくのです。

つぶれた企業の従業員の方はどうなさるでしょうか?
仕事を探します。しかしその地域には仕事がありません。
都会へ移住します。イコール、人口は減ります。
しかも若い家族になればなるほど移住を試みます。どうしてか?
若い家族はお金が要るのです。先々も長いし、子供の教育費負担も重くのしかかるのです。

だったら、教育でも有名大学のある地域へ引っ越そうと思うのが普通の人間の感覚です。とりあえずはその子供さんたちも有名大学を卒業すれば、良い就職にありつける可能性は高いと一般的には思われていますしね。

しかし都会は都会で面倒なことがいっぱいあります。隣近所の付き合いもあるかないか、あって顔を突き合わせば揉め事。それでも、いろんな面で機会は多い。医療も充実している。若いお母さんなら出産だって安心でしょう。ならばそちらへ、と普通考えるはずです。

というような流れで、景気刺激策をやればやるほど、実は東京をはじめとする大都市が収奪するように経済は作用するのだと思います。
統計には基づいていませんが(そんな都合の悪い統計を霞が関や永田町が作るはずもありません)これが自然の摂理というやつです。



「じゃあ、どうしたらいいんだよ」ということですが、非常に難しい。
聖人にでもならないといけないくらい、困難を極めるものと思います。
しかし、答えはあると私は考えています。

それは「経済成長したいと思わないこと」です。

日本という国は、余程いい加減なことをしない限りにおいては、十分にセーフティーネットがあり、今日明日食べるご飯に事欠くわけではありません。そのくらい社会インフラは整っていますし、行政機構も機能しています。
一般論としてはそのはずです。
(もちろんエクストリームケースとしてそうでないことがあることは認めます、しかし全体からみればその比率は微々たるものです)

であれば、便利さばかりを追求すること、数量の多さ、他人との比較ばかりを追求することを一旦脇に追いやって、テレビから流れて来る派手な生活から切り離れて、地方それぞれに実際住んでみないと手に入らないコト・モノを大切にして生活をすれば良いのです。
時間に追われて、高速に移動しなくては、なんて考え方も切り離したほうがいいでしょう。

もし多くの方々が便利さ、数量の多さ、他人との比較ばかりから心理的に開放されれば、わざわざ窮屈な都市部に住む必要がなくなるわけです。
そうなった時、どこに住むのでしょうか?
大抵は、生まれ育った、ないしは血縁親族のいる地方を選択するはずです。
(私のようにその「地方」を最初から全く持たない都市民もいますけれど)

そういう選択を多くの人達がすることになれば、地方は人口が戻ってきます。
人口が戻れば、市場が再び大きくなり出します。それに対するビジネスも必要になる。
ビジネスが動きだせば、雇用が生まれます。
雇用が生まれれば、収入を得る人が出て来るので消費が活性化される。
活性化されれば・・・

もう後はお分かりでしょう。再び成長するはずです。


これは私の意見というより、自然に論理的に考えれば、そういうふうに作用するはずです。
実体経済がない(=人がいない)のに、成長などするはずがない。

そして人を増やそうとするなら、人間がお金に執着していたのではダメなのです。それはやせ細った市場をみんなで仲良く分け合って更に細分化する、という意味ではなく、お金がリードする「便利さ、数量の多さ、他人との比較」というモノサシから離れる、ということです。
それなくしては人口の増加はあり得ない。

それでもまだ、殺伐としはていても、便利で刺激のある生活が欲しい方は東京をはじめとする大都市へ行けばいいのです。我々には住居選択の自由がありますから、それは各自の選択で良いと思うのです。

よって、中小企業・事業者の経営者の方は、もちろん売上を増加させる必要はありますが、まずは、

「入るをはかって、出ずるを制す」
(西郷隆盛の有名な言葉ですね)

を行って体力・知力を付け、自分の組織の雇用を守り、従業員の皆さんに安心して暮らしてもらいつつも、「便利さ、数量の多さ、他人との比較」ばかりを追いかけないように経営者ご自身が品行を良くして社内の模範とっていただきたいです。それが、人口を再度増加させていく(=経済成長の一要因)ことへの第一歩となっていきます。



長くなりました。
「空想論じゃないのか」と言われれば、そうかもしれません。
しかし、こういう考えに基づいて、地域の中小企業様の支援をさせていただいております。住む人が増えないと、その地域での売上は増えません。

こういうことを一緒に考えながら、経営を見直したい、頑張ってみようと思われる方、ぜひお手伝いさせていただきたいものです。


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