コラム第56回 2014年10月31日 「中小企業を潰す気か???」 | GTBコンサルティング 平賀 正志(中小企業診断士)

先月の続きで「自分の失敗談とBCP」について書こうと思っていたのですが、そんなことをブッ飛ばすような出来事が今日ありましたので、話題をそちらに急遽変更して進めたいと思います。


それは、日本銀行による「大規模金融緩和第2弾」です。

これは、日本銀行(以下、日銀)が市中に出回っている国債を買い上げ、貨幣を市中に流す、というものです。買い上げの原資は日銀自身が刷ったお金・・・つまりは対価のないお金ってことです。

対価のないお金が、市中に流れるということは、どういうことか?
それは、皆さんや私の手元にあるお金の価値が相対的に下がる、ということ、つまりはモノの価値とのバランスを取るために物価が上がるということです。それに応じて、日本国内の貨幣価値が下がることのバランス取りのため、外国通貨の価値が上がる・・・円安を引き起こします。


これの何が中小企業(事業者)にとって問題なのか?

企業(事業者)自身サイドの問題として・・・
①仕入れるモノの値段が高くなり、製品やサービス原価維持が物理的に困難になること。
②しかしながら、販売価格は簡単に上げられないこと。
(特に自分より規模の大きい企業に製品を納入している場合、納品価格を上げるというと、契約を打ち切られる可能性がとっても高い。サービス業の場合も、提供価格が上がることで客離れが起こる可能性が同様に非常に高くなる)
③ ①に関連して、販売管理・一般管理のための費用も上がり(水道光熱費や事務消耗品費などなど)、全体として利益を低下させる。

ここでは、②への対応が出来るのなら、まだ何とかなるのです。要は原価が高くなっても、それを販売価格にきちんと反映させることが出来るほどの財・サービスの提供が出来るなら、少々価格が上がっても、買ってくれる人は短期的には減らないでしょう。しかし、それが出来る中小事業者は非常に少ない。

消費者サイドの問題として・・・
①収入が増えない人々は、物価だけが上がるので、生活の質量の両面でレベルを下げることを余儀なくなされる。
(収入が増えない人々とは、給与が上がらない民間企業・事業所の従業員の方々はもちろん、年金生活の方々、学生の方々、そして人事院勧告がないと給与の増えない公的機関の方々もここに含むべきでしょう)
②消費が増えないということは、企業の業績のネタとなる売上につながらないということ。となれば、余計に給与は増えず→生活レベルが下がる、という悪循環に陥る。

ここまで読んでいただいてお分かりだと思いますが、今回の金融大規模緩和はほとんどの人にとって何らプラスにならないのです。しかも販売価格に転嫁できない中小企業はこれまでの円安で電気代や水道代、その他コストが過大になってしんどい目をされてきています。そこへこれです。
折角、皆さんが毎日毎日コスト対策をしても国や日銀のほうでその努力をつぶしてしまう。そういうことが今日起こったのです。


現代は国の境が非常にあいまいになりました。
国内で満足いく価格のモノやサービスが手に入らなかったら、海外から買えば良い。そういう時代です。事実、個人消費者レベルであってもインターネット通販によって全く同じモノを海外からより安く買えたりするのです。しかも我々の周囲にあるもののほとんどは輸入モノですよね。果物も、野菜も、魚も、肉も、大抵の衣料も、100円ショップの品物なんて十中八九輸入品。だとするならば、円安になればなるほど、輸入コストも高くなる。ということは、国内での物価も上がる、海外から輸入するものの値段も高くなる。そう、ダブルパンチです。

そういう時代に、そしてダブルパンチになることが目に見えているのに、国内の一部の大企業の輸出政策のためだけに、金融緩和をするなんてバカげています。それで日銀総裁なんて記者会見でご満悦の表情でペラペラおしゃべりしている。何を考えているのかちっともわかりません。中小企業には死ねとでも言うのでしょうか。


だから円高が良いということには即なりませんが、これだけ輸入に依存している日本は円安になってはいけないのです(個人的には世界の原油を英米メジャーよりも好条件で横取りできるくらいの円高でも良いと思っているくらいですけれどね)。
円安になったら観光客が来るって?最初のうちは来るかもしれません。でも国内に物価高・円安によるコスト高が蔓延すると、海外からの旅行客だって「日本は滞在コストが高いから、旅行先としては向かないな」ということになるのです。


細かい話はさておきですが、今日起こったことは、皆さんの努力を一瞬にしてフイにしてしまうことだったのです。特に、これから年末にかけて燃料費などがかさむ事業をなさっている方、気を付けていただきたいものです。すぐに悪影響が出て来ると思われます。

他にも注意すべき点はあります。またそのお手伝いも致しますので、ぜひお声掛けください。一緒に頑張りましょう。


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