GTBコンサルティング 平賀 正志(中小企業診断士) -7ページ目
新年度が始まって、1か月が過ぎようとしています。慌ただしく時間が過ぎ去った方が大半だったのではないでしょうか。この時季、ある種仕方のないことだと思います。

そして、世間はゴールデンウイークで浮かれているのかもしれませんが、私のような一人自営業者にはほとんど関係がなく、仮にどなたかと面談の予定が無くとも、仕事は次から次へとやって来て、ゆっくりは出来なさそうです。

さて、今回のタイトルにあります「仮想敵」、なかなか物騒な言葉です。
東西冷戦時代、そしてその崩壊後の世界で大国がその防衛ないしは軍事戦略として設定していた対抗軸となる国々のことなのですが、これはビジネスの世界でも必要な考え方と思っております。実際に、明確な言葉にはされていませんが、大企業の経営方針にはこの「仮想敵」が明らかに設定されているな、と思わされるものが結構あります。

要は、「我々は、A社の顧客を奪い取りに行くぞ」ということですね。

ですが、この「仮想敵」というもの、中小企業の方々、とりわけ小規模事業者の方にこそ考えていただきたいことなのです。

何故か・・・規模が小さくなればなるほど、一般的には広告宣伝にお金も時間も手数も掛けにくいです。知名度も限られていることでしょう。
だとすると、やみくもに広報活動を行うのではなく、もっと直接的にあなたの会社やお店の対象となるお客様に働きかける必要が生じます。そしてそのお客様は、既にモノやサービスをどこかから手に入れてらっしゃることでしょう。

その上で、あなたの会社やお店も、売上を伸ばさないといけないとしたら、どうしますか?
お客様をどこかから連れてこないといけない、そしてそのお客様は既にいる方とは別の方でなくてはならない(=そうでなくては、売上アップにはなりませんから)、つまり今その方々を顧客としている他の会社や店から奪い取ってこなくてはなりません。
(ほら、大企業だけの話ではないでしょ!)

その「他の会社やお店」が、皆様にとっての「仮想敵」なのです。

そして、この「仮想敵」が誰なのか、これを正確に見極める必要があります。
と言いますのは、これを間違うと、あなたの会社やお店が普段相手になさっているお客様とは違う種類のお客様に目を付けてしまうことになるからです。

例えば、あなたの会社は30代の既婚女性が主なお客様なのに、「仮想敵」の会社(仮にB社とします)のお客様は20代の独身女性を普段は主なお客様になさっている。当然、提供するモノもサービスも違うはずで、重なることは一般的には考えにくいです。
ということは、あなたの会社やお店にて、B社のお客様を相手にしたとしても、それは売上を伸ばしたい分野にはあてはまらないわけです。
そうであるのに、仮に強行してしまうと、提供するモノやサービスがミスマッチを起こすか、その分野の違う人々を相手にするために、仕入を増やしたり、別のものも用意しなくてはならなくなったりします。それだけで済むなら良いのですが、そのために在庫が膨らんで資金繰りが苦しくなったり、今抱えているお客様へのサービスが疎かになるようであると、もうこれは本末転倒です。

で、話を戻しまして、的確に「仮想敵」を設定できるとどんな良いことがあるのか。
まず、その「仮想敵」の会社やお店の提供しているモノやサービスへの研究がしやすくなります。つまり自分達と相手を比較しやすくなります。比較してみて、劣っているところがあれば、それをどう補えば良いのか見つけやすくなります。比較してみて、優れているところがあれば、そこは相手にマネさせないように、さらに磨いていく。

そういう「具体的に何をすれば良いのか」という対策が取れるのです。
それを持たないと、世間全体の大きな傾向や大きな波を素手で相手に戦うことになります。それはさすがに小規模事業者様には厳しいはずです。景気が悪くなれば(このところ日本はずっと景気が悪いと言っても言い過ぎではないないでしょうけれど)、大きな波に飲まれてしまい・・・あとはどうなるかは明白ですね。

これを読んで下さる皆様にはそういう状況に陥っていただきたくはありません。
この「仮想敵」の設定も、当方でお手伝いできることの一つです。ぜひ一緒に考えて、日々何をしていくのかを具体的に、明瞭にしませんか?
遠慮なくお声かけください。




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大抵は月末にコラムを書くのですが、今月は少し早目にします。
というのも、私の住む京都の観光シーズンがやって来ているからです。そして私自身、観光関連の中小事業者様の支援を多く手掛けている関係上、無視できない、ということもあります。

最近は観光にも季節感が消え失せつつあります。
つい数年前までは、2月や8月後半~9月に京都へ来られるお客様は少なかったのです。
しかし、観光客の多様化(特に海外からの方が激増。2月は旧暦の正月にあたるので、今年も2月に東南アジアや台湾・香港・中国の方が多かったように思います)につれ、京都駅周辺や著名寺院などは年中観光にみえた方々でいっぱいになるようになりました。

有難い話ではありますが、そこに住む方々の間には戸惑いもあります。もう静粛は期待のしようもない。そして観光の方々が持ち込まれる、ないしは観光地で消費されたモノがゴミとなってあふれもしています。直接的に観光に携わる方は、それらを「仕方ない」で済ませることができても、大半の観光には携わらない住民の方々は、それに困惑していることもまた事実です。
私は中小企業診断士・経営コンサルタントである以前に、そういう京都市内の観光地近辺に住む(・・・ばかりか、そこに生まれ、育った)住人でもあります。故にこの困惑に対し知らんぷりはできません。


ですが、今日の本題はこれではありません。前置きが長くなり申し訳ありません。
今日お話ししたいのは、観光に関連はしますが、テーマは「宿泊施設」です。

現在、京都の宿泊施設は絶対数が足りないと言われています。特に3月下旬からゴールデンウィーク、10月~11月の間は、京都市内に宿を取るのは至難の業、とまで言われるほどに(せいぜい1泊5~6千円くらいだろう、というような設備しかないビジネスホテルが1泊2万円!とかするのです)。そういうトレンドにありますから、現在雨後の筍のように宿泊施設が新設されています。

しかし、私はそういうトレンドは非常に危険だと思っています。もっとハッキリ言うなら、流行に乗っかって宿泊施設を新設するのはやめたほうが良いとすら思っています。
理由は、現在の流行に合わせた建て方は、そのブームが去った後は、使い途がないからです。そしてその使い途がなくなった時に、その施設の経営者がご自身でうまく転用を考え、従業員の方を露頭に迷わせることなく、金融機関への返済を遅らせることなく、破たんさせずにおけるのかどうか。皆様そうお出来になるなら構いませんが、私は非常に怪しいと思うのです。

このように申し上げると、大抵日本では叩かれます。
「今、うまく行っているのに、何を言うのか!」と(要はKYだと言うのでしょうね)。
しかし、2020年の後に日本へ「今」と同じようにお客様が来てくださる理由なんてあるのでしょうか?
きっと世界の目は次の流行の場所へ向きます。そこに統計的な物差しは出しにくいですが、歴史がそう語って来ていると思います。1990年代のバブルの時期に流行ったものが今では全く流行らないのと同じことです。もしくは高度経済成長期に流行ったモノや事柄が今では通用しないことと同じことです。昔は「家族で温泉旅行」だったかもしれませんが、今は確実に違います。


だとするならば、昨今の宿泊施設不足にどう対処するべきか?
私は「周辺地域の施設様、頑張ってください!」と申し上げたいです。

そこには、既に宿泊施設はあるのです。ただ知名度・稼働率が今一つ、というだけでしょう。
そこで、施設の魅力や強みを過不足なく訴え、京都市内からお客様を引っ張って連れて行けばよいと思います。例えば、京都府の南丹地域・山城地域、滋賀県の大津市・草津市・高島市などです。どこも京都駅から1時間圏内、しかも温泉があり、地域の特産物もある。
「京都プラスα」として工夫すれば、静かで緑も豊かなところばかりです。場所によっては江戸時代の町並みがあるところだってあります。わざわざ京都市内のタダでも混雑しているところ、しかも狭い部屋に泊まることなんてないと思います(もちろんそれを旅行者の方が望まれるなら話は別ですが)。
問題は、どうやってその1時間のギャップを埋め、連れて行く先の地域をアピールするか、でしょう。私自身はアイデアはいっぱいあるのですが、ここでは披露し切れないので、別稿に譲ります。


とにかくやるべきことは、「今あるものに一工夫凝らして、再活用」。
日本にはモノがあふれています。わざわざ新しく作らなくても、活用方法はいくらでもあると思えるのです。あとは、それをどう活かすのか。辺りをキョロキョロ見渡して、他所にないモノ、誰もやってないコト…。

そこに突破口があると思います。
京都市内の老舗ホテル・旅館や便利な場所に立つ安直なホテルやドミトリーに儲けさせてばかりおく手はありません。そういうところへ流れてしまいそうなお客さんを引っ張ることで地域の活性化だってできるのではないでしょうか。

そういうことをやってみたい、と思われる方、ぜひご相談ください。
やり方一つで状況は変えられるはずです。

(…先日、とある旅行コンサルタント様とそういう案件を作りました。本稿で挙げた地域の方ではありませんし、まだ始まったばかりですが今後きっと変わって来ますよ)


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今年も、既に2ヵ月が過ぎ去ろうとしています。
個人事業の方は確定申告で、会社組織の方は(多くの方が)年度末が近付いて、何かと落ち着かない状況だろうと思います。



当方がよく支援を依頼されることに「売上回復」とか「事業の見直し」という内容があります。
どちらも非常に重いテーマです。ECサイトの構築とか商品パッケージなどという各論・個別論ではなくて、組織全体を揺るがすことになるような方向性を考える内容ですので。

(・・・但し、お断りしておきますと、私は「重い」テーマを考えるほうが診断士としては適切であろうと思っており、それを優先していますし、またそれこそが私自身が診断士を志した理由の一つでもありますから、そういうご依頼をいただくことこそ冥利につきます)



しかし、そういう支援の場で思うのは、事業者の方々の側で、マスメディアとか行政、ないしは金融機関が発する情報に惑わされ過ぎなのではないだろか?ということです。

景気回復(ないしはその基調)なんてのは、東京のような経済がもともと活発な地域での話であって、私の住む京都ですと、観光客で賑わうような地域でもなければ、テレビで映るような人々が引っ切り無しに行き交う姿など皆無とまでは言いませんが、お目にかかるのは稀です。回復なんてしているのか?と思っているところです。

ですから、とりわけ事業の地理的範囲が狭い事業者様ほど、マーケティングや事業方向性・今後の商品構成などを考えるに当たっては、どちらかというと、

「マクロ的な事柄(国全体の流行であるとか、国際的なトレンドであるとか)よりも、その事業の置かれている身近な要件を可能な限り正確に捉える」

ほうが大切だと私は考えます。


身近な要件とは、自分達の売っているモノや提供するサービスを

・どのくらいの範囲に住む方々が
・何歳くらいの方々が
・どんな暮らし向きの方々が
・どの時季に(季節、月初・月中・月末、朝なのか夜なのか、週末なのか、など)


必要となさっているのか、というようなことです。
(上の4点も一例です。もっと細かに考えてみましょう)

要は、東京の銀座で人々が何を思っているのかよりも(もちろん、それを知ることは大切ですが)、それこそ近所のスーパーの特売日に朝早くから並んでいる地域の皆さんが何を思ってらっしゃるのか、そちらをわかる範囲で良いので、正確につかむほうが大切だ、ということです。

その方が、その事業者の方々のビジネス圏で、まず取っ掛かりとして何をすべきなのかが、見えてくる・見えやすいです。
(そういう意図で、私自身も時折、その特売の列に自分もエコバッグを持って並びます。それを繰り返していると、大手の新聞やテレビ放送からでは見えないものが見えて来るのです)


その情報で以てして、会社・事業所として

「これから先、どうしていこうか」
「今の商品構成は、変えるべきなのか、今のままでいいのか」
「どんな人物を採用したらいいのか」
「役員・従業員はどんな能力開発をするのが良いのか」

というようなことを考えていただくほうが、より現実に即していると思われます。


何とぞ、中小企業・事業者の皆様には、巷にあふれるマクロ情報に惑わされずに、ご自身の目で確かめられたことを中心に方向性を考えていただきたいと願っております。そこへ何らかのエッセンスを私が加え、よりよい明日へ一緒に向かっていければと思います。ぜひお声かけください。

梅の花は咲き誇っていますが、まだしばらくは寒暖の差が非常に大きい日々が続きます。ご自愛くださることもお忘れになりませんように。

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