大抵は月末にコラムを書くのですが、今月は少し早目にします。
というのも、私の住む京都の観光シーズンがやって来ているからです。そして私自身、観光関連の中小事業者様の支援を多く手掛けている関係上、無視できない、ということもあります。
最近は観光にも季節感が消え失せつつあります。
つい数年前までは、2月や8月後半~9月に京都へ来られるお客様は少なかったのです。
しかし、観光客の多様化(特に海外からの方が激増。2月は旧暦の正月にあたるので、今年も2月に東南アジアや台湾・香港・中国の方が多かったように思います)につれ、京都駅周辺や著名寺院などは年中観光にみえた方々でいっぱいになるようになりました。
有難い話ではありますが、そこに住む方々の間には戸惑いもあります。もう静粛は期待のしようもない。そして観光の方々が持ち込まれる、ないしは観光地で消費されたモノがゴミとなってあふれもしています。直接的に観光に携わる方は、それらを「仕方ない」で済ませることができても、大半の観光には携わらない住民の方々は、それに困惑していることもまた事実です。
私は中小企業診断士・経営コンサルタントである以前に、そういう京都市内の観光地近辺に住む(・・・ばかりか、そこに生まれ、育った)住人でもあります。故にこの困惑に対し知らんぷりはできません。
ですが、今日の本題はこれではありません。前置きが長くなり申し訳ありません。
今日お話ししたいのは、観光に関連はしますが、テーマは「宿泊施設」です。
現在、京都の宿泊施設は絶対数が足りないと言われています。特に3月下旬からゴールデンウィーク、10月~11月の間は、京都市内に宿を取るのは至難の業、とまで言われるほどに(せいぜい1泊5~6千円くらいだろう、というような設備しかないビジネスホテルが1泊2万円!とかするのです)。そういうトレンドにありますから、現在雨後の筍のように宿泊施設が新設されています。
しかし、私はそういうトレンドは非常に危険だと思っています。もっとハッキリ言うなら、流行に乗っかって宿泊施設を新設するのはやめたほうが良いとすら思っています。
理由は、現在の流行に合わせた建て方は、そのブームが去った後は、使い途がないからです。そしてその使い途がなくなった時に、その施設の経営者がご自身でうまく転用を考え、従業員の方を露頭に迷わせることなく、金融機関への返済を遅らせることなく、破たんさせずにおけるのかどうか。皆様そうお出来になるなら構いませんが、私は非常に怪しいと思うのです。
このように申し上げると、大抵日本では叩かれます。
「今、うまく行っているのに、何を言うのか!」と(要はKYだと言うのでしょうね)。
しかし、2020年の後に日本へ「今」と同じようにお客様が来てくださる理由なんてあるのでしょうか?
きっと世界の目は次の流行の場所へ向きます。そこに統計的な物差しは出しにくいですが、歴史がそう語って来ていると思います。1990年代のバブルの時期に流行ったものが今では全く流行らないのと同じことです。もしくは高度経済成長期に流行ったモノや事柄が今では通用しないことと同じことです。昔は「家族で温泉旅行」だったかもしれませんが、今は確実に違います。
だとするならば、昨今の宿泊施設不足にどう対処するべきか?
私は「周辺地域の施設様、頑張ってください!」と申し上げたいです。
そこには、既に宿泊施設はあるのです。ただ知名度・稼働率が今一つ、というだけでしょう。
そこで、施設の魅力や強みを過不足なく訴え、京都市内からお客様を引っ張って連れて行けばよいと思います。例えば、京都府の南丹地域・山城地域、滋賀県の大津市・草津市・高島市などです。どこも京都駅から1時間圏内、しかも温泉があり、地域の特産物もある。
「京都プラスα」として工夫すれば、静かで緑も豊かなところばかりです。場所によっては江戸時代の町並みがあるところだってあります。わざわざ京都市内のタダでも混雑しているところ、しかも狭い部屋に泊まることなんてないと思います(もちろんそれを旅行者の方が望まれるなら話は別ですが)。
問題は、どうやってその1時間のギャップを埋め、連れて行く先の地域をアピールするか、でしょう。私自身はアイデアはいっぱいあるのですが、ここでは披露し切れないので、別稿に譲ります。
とにかくやるべきことは、「今あるものに一工夫凝らして、再活用」。
日本にはモノがあふれています。わざわざ新しく作らなくても、活用方法はいくらでもあると思えるのです。あとは、それをどう活かすのか。辺りをキョロキョロ見渡して、他所にないモノ、誰もやってないコト…。
そこに突破口があると思います。
京都市内の老舗ホテル・旅館や便利な場所に立つ安直なホテルやドミトリーに儲けさせてばかりおく手はありません。そういうところへ流れてしまいそうなお客さんを引っ張ることで地域の活性化だってできるのではないでしょうか。
そういうことをやってみたい、と思われる方、ぜひご相談ください。
やり方一つで状況は変えられるはずです。
(…先日、とある旅行コンサルタント様とそういう案件を作りました。本稿で挙げた地域の方ではありませんし、まだ始まったばかりですが今後きっと変わって来ますよ)
