こんにちは。
前回で行政事件訴訟法も許諾を得た分の過去問は終了しました。
どうするか
う~ん と言うことで確認して見たところ判例が少しあるようなのでそれを見てみましょう。
今日の問題は文が長いです。
本試験で見た場合、読むのを躊躇いそうですね。
今日の過去問は、平成28年度問9の問題を○×式でやりたいと思います。
行政裁量に関する最高裁判所の判例について検討してみましょう。制度については、判決当時のものです。まぁ、これは当たり前ですね。(笑)
それでは、早速。
問題
裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り、違法と判断すべきものである。
正解は?
○
この問題は、裁判所が懲戒権者のした懲戒処分の適否を審査する場合の判断についてです。
問題では、「懲戒権者と同一の立場に立って」判断し、その結果と処分とを比較してその軽重を論ずべきものではないと言っていますが。。。
まぁ、そうでしょうね、一般的に第三者がそう言った判断をしなければならないときは、「通常はどうなの」、「一般的にはどうなの」ってなるんじゃないでしょうか。
つまり、「社会観念上」どうなのってことですね。
昭和47(行ツ)52 行政処分無効確認等、附帯 昭和52年12月20日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所
したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。
おぉ~ぅ、ほぼほぼ問題どおりです。
懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分
↓
社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り
↓
違法
問題
原子炉施設の安全性に関する処分行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた処分行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設がその具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤・欠落があり、行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、処分行政庁の判断に不合理な点があるものとして、その判断に基づく原子炉設置許可処分は違法となると解すべきである。
正解は?
○
こ、この問題は。。。
記憶がありますね。
行政書士試験 平成22年度問43 行政事件訴訟法の問題 でやりましたよね。
多肢選択式でしたが、記憶に残っているところだと思います。
ポイントになる言葉は、「調査審議」や「不合理な点」でしたね。
依拠=あるものに基づくこと。よりどころとすること。
この問題に関しては過去記事参照と言うことで。。。
問題
個人タクシー事業の免許に当たり、多数の申請人のうちから少数特定の者を具体的個別的事実関係に基づき選択してその免許申請の許否を決しようとするときには、道路運送法の規定の趣旨に沿う具体的審査基準を設定してこれを公正かつ合理的に適用すべきであり、この基準の内容が高度の認定を要するものである等の場合は、基準の適用上必要とされる事項について聴聞その他適切な方法により申請人に対しその主張と証拠提出の機会を与えるべきであって、これに反する審査手続により免許申請を却下したときは、公正な手続によって免許申請の許否につき判定を受けるべき申請人の法的利益を侵害したものとして、当該却下処分は違法となる。
正解は?
○
多数の申請人のうちから少数特定の者=6630件の個人タクシー事業の免許申請を受理(個人タクシー増車数を983輛を決める)
行政書士試験よりちょっと高いですが、「職業選択の自由」があるって考えるとどうなんでしょうかね。。。
問題で言っていることは、
1.具体的審査基準を設定してこれを公正かつ合理的に適用する。
2.この基準の内容が高度の認定を要するものである等の場合は、基準適用上必要とされる事項について聴聞その他適切な方法により申請人に対しその主張と証拠提出の機会を与える。
これらに反する審査手続により免許申請を却下した場合、申請人の「法的利益」を侵害したものとして、却下処分は違法となる。
つまり、「公正な手続にはなっていないよ。」と言うことですね。
昭和40(行ツ)101 行政処分取消請求 昭和46年10月28日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
おもうに、道路運送法においては、個人タクシー事業の免許申請の許否を決する手続について、同法一二二条の二の聴聞の規定のほか、とくに、審査、判定の手続、方法等に関する明文規定は存しない。
しかし、同法による個人タクシー事業の免許の許否は個人の職業選択の自由にかかわりを有するものであり、このことと同法六条および前記一二二条の二の規定等とを併せ考えれば、本件におけるように、多数の者のうちから少数特定の者を、具体的個別的事実関係に基づき選択して免許の許否を決しようとする行政庁としては、事実の認定につき行政庁の独断を疑うことが客観的にもつともと認められるような不公正な手続をとつてはならないものと解せられる。
すなわち、右六条は抽象的な免許基準を定めているにすぎないのであるから、内部的にせよ、さらに、その趣旨を具体化した審査基準を設定し、これを公正かつ合理的に適用すべく、とくに、右基準の内容が微妙、高度の認定を要するようなものである等の場合には、右基準を適用するうえで必要とされる事項について、申請人に対し、その主張と証拠の提出の機会を与えなければならないというべきである。
免許の申請人はこのような公正な手続によつて免許の許否につき判定を受くべき法的利益を有するものと解すべく、これに反する審査手続によつて免許の申請の却下処分がされたときは、右利益を侵害するものとして、右処分の違法事由となるものというべきである。
問題に書かれた内容どおりですね。
問題
学生が信仰上の理由によりした剣道実技の履修拒否について、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく原級留置処分をし、さらに、退学処分をした公立高等専門学校の校長の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものであり、原級留置処分と退学処分は裁量権の範囲を越える違法なものとなる。
正解は?
○
この問題で書かれていることは、
信仰上の理由によりした剣道実技の履修を拒否したこと。
「信仰上の理由」としたのに、正当な理由のない履修拒否と区別がされなかったこと。
代替措置が不可能という訳でもないのに、代替措置について何ら検討されなかったこと。
そして、なされた処分は、原級留置処分、さらに、退学処分へと発展した訳です。
確かにこの内容からは、「考慮すべき事項を考慮しておらず、」ってのは解りますね。
う~ん。
平成7(行ツ)74 進級拒否処分取消、退学命令処分等取消 平成8年3月8日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所
信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく、体育科目を不認定とした担当教員らの評価を受けて、原級留置処分をし、さらに、不認定の主たる理由及び全体成績について勘案することなく、二年続けて原級留置となったため進級等規程及び退学内規に従って学則にいう「学力劣等で成業の見込みがないと認められる者」に当たるとし、退学処分をしたという上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。
多少抜けているところもありますが、これもほぼ問題文通りです。
問題
外国人が在留期間中に日本で行った政治活動のなかに、わが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれていたとしても、それらは憲法の保障が及ぶ政治活動であり、このような活動の内容を慎重に吟味することなく、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断した法務大臣の判断は、考慮すべき事項を考慮しておらず、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものであり、裁量権の範囲を越える違法なものとなる。
正解は?
×
外国人が在留期間中に日本で行った政治活動
その中に、わが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれている。
それでも、それらは憲法の保障が及ぶ政治活動なのか
昭和50(行ツ)120 在留期間更新不許可処分取消 昭和53年10月4日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
政治活動について見ておきましょう。
憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。
これを見る限りでは、条件付きで「その保障が及ぶ」と言うことになりますね。
と言うことは、条件云々が無い状態で、「それらは憲法の保障が及ぶ政治活動であり、」としていますので、この時点で×ですね。
そして、問題の後半部分の判例です。
上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。
しかしながら、上告人の右活動のなかには、わが国の出入国管理政策に対する非難行動、あるいはアメリカ合衆国の極東政策ひいては日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に対する抗議行動のようにわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含まれており、被上告人が、当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとつて好ましいものではないと評価し、また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に合理性を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたことをうかがわせるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分を違法であると判断することはできないものといわなければならない。
内容的に、「日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれていた。」つまり、おそれがある訳ですから「将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者」と認めることもできる。
結果
在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断。
被上告人のその判断につき、「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた」ことをうかがわせるに足りる事情の存在が確定されていない。
本件においては、被上告人の処分を違法であると判断することはできない。
政治活動、裁量権の問題、ともに判例とは逆に書かれた問題ですね。
今日も最後まで有難うございました。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。
非常に嬉しい。。。
来たよって方はこちらをポチッと。