売込先を選定する→アポイントメントを取る→その会社を訪問する→こちらが売りたいものをご説明する→先方から反応がある→それを受けて さらにご説明する→結果が出る、すなわち売れたり売れなかったりする、とまあだいたいこういうプロセスを経るわけですが、この仕事がいいのは最初から最後まで自分一人でできるということ。僕は チームワークがからきしダメで、とりわけ人を使うという方がまったくできないのですが、その分何から何まで一人で好きなようにやらせてもらうということになるとわりと水を得た魚状態になれます。営業車を駆って日がな自由に動ける営業は僕にとってストレスフリーなんですね、これが。
僕の気質からして「一人でできる歩合の仕事」というのが自分のツボでありまして、今の大学の仕事もそうなんですけれども、若い頃の僕にしてみれば、クラブ歌手や1人でできるお店屋さん(屋台など)、個人タクシーの運転手などを強力な職業のオプションとして考えていたものです。その頃は経験不足で仕事に様々な種目があることを知りませんでしたので当時の僕は思いつかなかったのですが、今にして思えば生命保険の営業なども割と前向きに出来る仕事だったのかもしれません。
結果がはっきりと出るのも営業のいいところ。そもそも自分がいいと思って売りたい、買って頂きたいと思っているものが売れる、これは仕事における本能的というか根源的な喜びでありまして、受注に至ったときはストレートな達成感を得ることができます。
もちろんうまくいくことばかりではございませんで、場合によってはこちらの供給と先方の需要がボール5個分くらい離れていてフルスイングで空振りということもあります。当然売れないわけですが、これはこれで何とも言えない滋味があるわけでございまして、ド中年ともなりますとこういうときにかえって仕事のコクを味わえるものなんですね。「空振りをにやりと笑って受け止める」、むしろここに営業の醍醐味があるような気がします。
人と一緒に組織だって働くのは嫌いなのですが、色々な人とあって話をすることはわりと好き。営業活動の場合、もともとこちらが面白そうだと思っている人に会いに行くわけで、これもまた営業の面白さです。
考えてみれば営業という行為は、単に相談や意見交換をしているのでなく、買うか買わないかという判断なり意思決定を相手にせまるものであります。僕の仕事では営業面談の相手はほとんどの場合その会社の経営者ですから、実際に営業してみると会社の状況やその人の価値基準がわりとあらわになるというのも味わい深いところです。

とある丸の内の営業先オフィスからの絶景。皇居と大都会と富士山を一望。
営業車で外回りをしている時のもうひとつのお楽しみとしてはファミリーレストランでの昼食があります。普段自分の仕事場で働いている時はぼくはあまり昼食をとらないのですが、外回りで体を使っているとお腹が空くので、走っている時に目についたファミレスに車を入れてハンバーグ定食(エビフライ付き。食後の飲み物はクリームソーダ)など食べ、お腹いっぱいになってタバコを一服、「さーて、次の営業先に行くか...」という瞬間、ああ実質的な労働しているという満足感があふれてくるものでありまして、実に気分がよろしいですね。
営業、それは日常生活の中にある叙事詩。営業はロマンだ!