雪月花 -2ページ目

第八話「夢に導くイメージ」


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村につくと不思議な生き物たちがいました。


生き物なのかどうかさえわからないものもいました。



夢雪「変な生き物ばっかりだねぇ。」


ラメル「個性的だろ。」


月希「かなり・・・。」




ラメルが言うには、二足歩行の生き物の方が少ないらしいです。


バランスをとるのが難しく、『歩く』のが面倒なのだとか。




ラメル「わたしは歩くのが好きなのだけど、そうでないものの方が多いかもしれないね。」


夢雪「歩かなくてどうやって進むの?」


ラメル「這ったり飛んだりだね。地面が好きなものは這って、空が好きなものは飛んで。そのあたりは好みかな。」


夢雪「好みで決められるの?」


ラメル「決められないのかい?」


月希「いろいろ無理があるんじゃ・・・。」


ラメル「無理と思うものにはできないよ。とにかくそうしたい、と思ってやったものだけができるようになってるね。」


月希「そういうものなのかなぁ。」


ラメル「そういうものだよ。」




想いは姿さえも変える。


なりたい姿をイメージし続けることが大切だとラメルは言います。




ラメル「イメージを抱き続けることができないものは失敗することが多いね。」


夢雪「イメージですべてが決まるの?」


ラメル「いや、すべてというわけじゃない。努力や能力が必要になることもあるからね。ただ、イメージは道しるべのようなものだから、イメージを失うと迷ってしまうんだよ。」


月希「迷うと進む方向がわからなくなって失敗する、ということかな。」


ラメル「そういうこと。」




どんなふうになりたいのか。


夢雪と月希は今まであまり考えたことがありませんでした。


今まで、ただ迷走していただけだったのかもしれない。


そんなイメージが二人の中にわきおこりました。



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第七話「道は流れ星のごとく」


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ラメルたちと決別した隣国の者たち。


しかし、ラメルはその者たちに文句は言いません。




ラメル「どういう道を選ぼうがその者の自由だ。」


月希「でも、ラメルたちはその道がいいとは思わないんでしょ?」


ラメル「わたしたちの考えが正しいとは限らないだろ。まあ、そもそも正しいかどうかなんていい加減なもので、状況によって変わるからね。もう何年かしたらあの連中の方が『正しい』とされるようになるかもしれないよ。」


夢雪「正しくないのが正しくなるの?」


ラメル「正しいかどうかは何を基準にするかによるからね。基準が変わっていけば何が正しいかも変わっていくものだよ。」




『正しい』とは普遍的なものではなく移ろいゆくもの。


ラメルの言葉は月希と夢雪にとっては衝撃的でした。




月希「じゃあ、正しい行いっていうのは?」


ラメル「その時点・状況で正しいと思われている行いということになるね。」


夢雪「なんかわからなくなってきたわ。」


ラメル「ははは。あんまり深く考えなくていいよ。」




ラメルの桃色がかった白い手が国境を指差しました。




ラメル「あの連中は『所有』の道を選んだ。我々は『共有』の道を選んだ。大切なのはどの道が正しいかではなく、自分がどの道を選ぶのかということだよ。」


夢雪「どういうこと?」


ラメル「どの道も完全な正解ではありえない。だからどの道を選んでもいいのだよ。大切なのはそうやって決断することなんだ。」


夢雪「でも、どうやって選べばいいの?」


ラメル「その道の先にあるものが何なのか、一番気になる道を選べばいい。」


夢雪「なんか探検みたいね。」


月希「まあ、道選びなんて結局そういうものなのかもしれないね。」


夢雪「う~ん、でもなんか不安じゃない? この道でいいのかな~、って。」


ラメル「そういうときは、この道をよくしてやるって思えばいいのだよ。」


夢雪「道をよくするの?」


ラメル「そう。正解の道を選ぼうとするより、選んだ道を正解にする方が楽しいだろ。」




ラメルはこう言います。


道は自分でつくっていくもの。


流れ星が描く軌跡のように、自分の歩んだ跡が道となる。


大切なのは、決断すること。


進むということ。




ラメル「あの連中は我々とは違う軌跡を描くようになった。ただ、それだけのことだよ・・・。」




間もなく、空クジラはラメルたちの村の近くに着陸しました。


『共有』の道を選んだ者たちの村、ペルツィはすぐそこでした。




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第六話「壁が隔てるもの」


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空クジラに乗ってしばらく飛んでいくと、村が見えてきました。


川が近くある、小さな村です。




ラメル「あれがわたしたちの村だよ。」


夢雪「小さい村なのねぇ。」


ラメル「普通に生活するには十分な大きさだよ。」


月希「あの川の向こうにある壁のようなものは何?」


ラメル「隣の国の連中が建てたもので、『国境』というものだそうだ。」


月希「随分しっかりした国境なんですね。」


ラメル「まるであの連中の心の壁のようだよ・・・。」




もともとこの世界には国境というものはありませんでした。


どこからどこまでが自分達の領土という考えは無かったのです。


土地は自然からの借り物。


みんなで使えばいいというのがこの世界での当たり前でした。




ラメル「何年か前に来た来訪者が『所有』にこだわる者だったのだよ。」


夢雪「それって当たり前じゃないの?」


ラメル「我々は基本的に個人の所有にはあまりこだわらない。みんなで使う『共有』が基本だ。」


月希「土地も?」


ラメル「そうだ。しかし、来訪者はすべてを自分のものにしたがって、いろんな決まりごとを広めていった。」




そのとき『権利』という言葉が初めてこの世界で使われるようになりました。


共有の世界において『権利』などというものは必要なかったのです。




ラメル「権利などというものがなくても平和に暮らせていたのだ。逆に、権利が主張や所有を助長して争いが発生し始めたよ。」


夢雪「それであんな国境ができたの?」


ラメル「そう。あの連中はあそこまでが自分達の領土だと言い始めた。」


夢雪「あなたたちは国境は作らないの?」


ラメル「そんなのいらないよ。みんなの土地であると同時に誰のものでもないのだから。」


月希「もし侵略されたら?」


ラメル「自分達の生活に害が及ぼされるようなら戦わなければならないだろうね。まあ、そうならないことを願うよ。」


月希「守るために国境をつくったりとかはしないの?」


ラメル「あんなものは余計に争いを生むし、何より心が狭くなる。君は壁に囲まれて生活してて楽しいかい?」


月希「う~ん、閉塞感はあるかも・・・。」


ラメル「あの壁は土地を分断させるだけでなく、住む者の心も閉鎖的にさせてしまうものだよ。」




『共有』から『所有』に切り替えたことによって、その者たちは心のつながりを忘れていってしまったとラメルは言います。


村につくまでの間、ラメルはかつて川の向こう側の者たちと遊んだ日々を語ってくれました。


懐かしいような悲しいような、その口調からはラメルの気持ちが伝わってくるようでした。



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第五話「空クジラに乗って」


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ラメルの村までは遠いのでクジラに乗っていくそうです。




月希「クジラに乗るの?」


ラメル「そうさ。」


夢雪「背中に乗るの?」


ラメル「そんなの危ないじゃないか。中に乗るんだよ。」


夢雪「クジラの・・・中?」


ラメル「まあ、ついておいで。」




三人は崖までやってきました。




ラメル「ここが停留所だよ。」


夢雪「ただの崖じゃないの?」


ラメル「もうすぐくるよ。」




そういい終わらないうちに空から大きなクジラが飛んできました。


クジラはラメルたちの前でとまると、「ドア」を開けました。




月希「これが・・・クジラ・・」


夢雪「ドアがあるわ。」


ラメル「さあ乗って乗って。」




中にはバスのようにつり革も椅子もありました。


ただ、地面や壁は弾力性のある厚い皮膚のような感じです。


この乗り物も、この世界での「当たり前」の一つです。



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第四話「味は好み」


雪月花4


兎の名前は「ラメル」というそうだ。


ラメルは月希と夢雪を自分たちの村に案内してくれるという。



ラメル「たいしたもてなしはできないけど、お茶くらいは出すよ。」


夢雪「あら、そういうのはわたしたちの世界と同じなのね。」


ラメル「いや、以前に来た来訪者にそういう文化があると教えてもらったのだよ。」




来訪者がもたらす外部の文化を少しずつ吸収していっているらしい。




ラメル「まあ、わたしはお茶というものはあまり好きになれないがね。」


月希「どうしてですか?」


ラメル「ん~、なんか匂いが好きじゃないんだ。」


夢雪「おいしいのに。」


ラメル「おいしいと思うかどうかは人それぞれ。嗜好品とはそういうものだよ。」




嗜好品の話になって、ラメルは珍味やヴィンテージ品についても話し始めました。




ラメル「希少価値のために高価なのはわかる。だが、高いからといって必ずしもおいしいとは限らない。」


夢雪「高いのにおいしくないの?」


ラメル「いや、正確には『自分にとっておいしいと感じるとは限らない』ということだ。」


夢雪「う~ん、そうなのかなぁ。」


月希「そういうのを口にしたことないからわからないけど。」


ラメル「結局は好みの問題だからね。それなのに・・・。」




ラメルはちょっと残念そうな顔をしました。




ラメル「『高い=おいしい』と思い込んでいるもの達がいて、自分では本当はおいしいと思ってないのに『おいしいはず』と無理矢理自分に言い聞かせようとするものもいるのだ。」


夢雪「どうして?」


ラメル「おいしいはずのものをおいしいと思えないと、自分の味覚が悪いんじゃないかと不安になるんだよ。」


月希「そうか。おいしいと思えたら大丈夫ってことなんだ。」


夢雪「変なの。」


ラメル「それも来訪者がもたらした文化の一つでね。『味がわかる人』という文化らしい。」


月希「グルメっていうことなのかな。」


夢雪「不味いと思ってもおいしいと言うの?」


ラメル「どうやらそういうものらしい。」




ラメルは近くの木になっていた青い果物を指さしました。。




ラメル「わたしはあの果物が大好きなのだが、ほとんどのもの達はゲテモノだという。」


月希「ゲテモノかぁ。」


ラメル「だが、わたしはおいしいと思うし、それでいいと思ってる。」


夢雪「おいしいと思えるのが一番だよね。」


ラメル「そういうことだ。」




食すということ。おいしいと思えること。


そういう気取らない自然な姿もいいものです。




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