第六話「壁が隔てるもの」
空クジラに乗ってしばらく飛んでいくと、村が見えてきました。
川が近くある、小さな村です。
ラメル「あれがわたしたちの村だよ。」
夢雪「小さい村なのねぇ。」
ラメル「普通に生活するには十分な大きさだよ。」
月希「あの川の向こうにある壁のようなものは何?」
ラメル「隣の国の連中が建てたもので、『国境』というものだそうだ。」
月希「随分しっかりした国境なんですね。」
ラメル「まるであの連中の心の壁のようだよ・・・。」
もともとこの世界には国境というものはありませんでした。
どこからどこまでが自分達の領土という考えは無かったのです。
土地は自然からの借り物。
みんなで使えばいいというのがこの世界での当たり前でした。
ラメル「何年か前に来た来訪者が『所有』にこだわる者だったのだよ。」
夢雪「それって当たり前じゃないの?」
ラメル「我々は基本的に個人の所有にはあまりこだわらない。みんなで使う『共有』が基本だ。」
月希「土地も?」
ラメル「そうだ。しかし、来訪者はすべてを自分のものにしたがって、いろんな決まりごとを広めていった。」
そのとき『権利』という言葉が初めてこの世界で使われるようになりました。
共有の世界において『権利』などというものは必要なかったのです。
ラメル「権利などというものがなくても平和に暮らせていたのだ。逆に、権利が主張や所有を助長して争いが発生し始めたよ。」
夢雪「それであんな国境ができたの?」
ラメル「そう。あの連中はあそこまでが自分達の領土だと言い始めた。」
夢雪「あなたたちは国境は作らないの?」
ラメル「そんなのいらないよ。みんなの土地であると同時に誰のものでもないのだから。」
月希「もし侵略されたら?」
ラメル「自分達の生活に害が及ぼされるようなら戦わなければならないだろうね。まあ、そうならないことを願うよ。」
月希「守るために国境をつくったりとかはしないの?」
ラメル「あんなものは余計に争いを生むし、何より心が狭くなる。君は壁に囲まれて生活してて楽しいかい?」
月希「う~ん、閉塞感はあるかも・・・。」
ラメル「あの壁は土地を分断させるだけでなく、住む者の心も閉鎖的にさせてしまうものだよ。」
『共有』から『所有』に切り替えたことによって、その者たちは心のつながりを忘れていってしまったとラメルは言います。
村につくまでの間、ラメルはかつて川の向こう側の者たちと遊んだ日々を語ってくれました。
懐かしいような悲しいような、その口調からはラメルの気持ちが伝わってくるようでした。
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