霞座「ドグラ・マグラ」観劇!(2012.3.3)
私の若手一押しの役者さんである一橋純平くんが出演。題材が夢野久作の奇書「ドグラ・マグラ」ということで、学生劇団がどのように舞台化するのか、果たしてクオリティはどうなのかといろいろわくわくしながらまずは原作を予習。上巻をかなり読み進めたところで、あとは観てのお楽しみ、と読書を一時中断。観劇の日を心から待っていたのでした。
その期待を、遥かに超えて。あの変質狂的な論文や散文の部分がものの見事に消化され、気の狂いそうなほどの堂々巡り感も「演劇として」実に力強く、退廃的な美しさで見事に舞台として昇華されていました。
素敵だったのは、芸術的な演出。脳髄を思わせる青と黒の線がオブジェに床にと散りばめられた美術は勿論、照明も音楽も美しく耽美的で、学生演劇とは思えないほど洗練されたフェティッシュな空間。
そして、演技。これは若林博士を演じた一橋くんが秀逸。男性は、主人公・正木博士・若林博士の3名が登場するのですが、奥行きの深さを感じ、立体的に役を演じることが出来ていたのは彼一人。(他のお二人も確りした実力を持ち、それぞれの狂気を力強く演じてはいたのですが、まだまだ若さの方が前面に出ていてしまって、役に近づくというよりは役を自分自身に引き寄せていた感あり。)
その一橋くんの武器は、纏う空気(オーラ)を操れる力。最初に纏うオーラはただの博士のものではなく、かといってマッドサイエンティストでもなく。しかし徐々にそのオーラを変化させ、狂気を露にしたかと思うと、ラストではそれが錯覚だったのかとハッとさせられるような冷めた空気を纏っている。そして、表情・・・特に目の演技が素晴らしく、また、立ち尽くす後姿からでさえその暗鬱とした表情が見えるかのような全身の演技も凄みを以っていて。
こんな風に一つの芝居の中で別ステージの精神を演じられる役者さんはなかなかいません。彼の演技力の高さには最初に観た舞台(BOX101「生者不信」)で感じて以来注目してきましたが、今回その才能の底知れない可能性をまざまざと見せつけられました。これから彼がどのように役者として成長し、どのようなお芝居を見せてくれるのかとても楽しみです。
もう一人。安田友加ちゃん。可愛らしさと素直な芝居で既に小劇場の人気者になりつつありますが、この舞台では這いずり回るような狂気を見せてくれて、女優として引き出しの一つを垣間見た思いです。去年のシアターグリーン学生演劇祭では最優秀俳優賞を獲得し、これまた将来が楽しみな役者さんの一人。
そして、霞座という劇団。自分達の信じる演劇を真摯に創り上げる姿勢と、醸し出すそのフェティッシュ感は結構私好み。一橋くんが所属したこともあり、注目していきたい劇団の一つになりました。それにしても学生のレベル、本当に高いなぁ・・・。
(観た日:2012.3.3)
「ビューティフル・サンデイ」観劇!(2012.3.2)
瀬奈じゅん、葛山信吾、桐山照史(関西ジャニーズJr.)の三人芝居。大きな舞台で三人舞台ということで、どんな雰囲気になるか楽しみでした。
基本、会話劇。そして歌と音楽が少々。これだったら小劇場でもリメイクできそうだな、と思う反面、三人で2時間持たせられる役者さんはなかなかいないなとも思ったり。
物語の舞台はマンション。ある晴れた日の日曜日。ゲイカップルの部屋に迷い込んだ、三十路の女性。その三人の、心の交流の物語。
ゲイカップルの若い方はエイズに犯されていて。もう一人の男は実はノンケで、二人には身体の関係はない。しかし地元の九州に家を建てたら母親と三人で暮らそうという計画を立てている。その気持ちを素直に受け止められず、別れを切り出し結婚を勧める若い方。不倫の恋を失って苦しんでいた女の思いもそこに絡まり、三人は徐々に心を溶かしていく・・・。
観ていて、心がとても温まりました。物語としては、既視感があったり、ゲイの描き方にちょっと疑問があったりもしましたが。三人がとても温かで魅力的に演出されていて、途中本気で笑いを堪えていたりして。大きな舞台でも隅々まで伝わる空気に、言われもない温もりを感じました。
途中。大粒の涙がボロボロとこぼれて止まらなくて。正直、体調がかなり悪かったこともあるのですが(熱が39度ありました(爆))特に女性の心境がダイレクトに伝わってきて、でも心が痛いわけでもなく、染み入るようにとめどなく泣いてしまいました。・・・いえ、不倫してたのではありません(苦笑) でも恋愛で細かく揺れる女性の心にはやはり感情移入を激しくしてしまいますね。
その末の、ふわっと心が温まる感覚。そんな感覚を観ていて感じて、ああ、観て良かったな、と思ったのでした。
(観た日:2012.3.2)
さいたまネクストシアター「蒼白の少年少女によるハムレット」観劇♪(2012.2.25)
さいたまネクストシアター「蒼白の少年少女によるハムレット」 観てきました@さいたま藝術劇場。
蜷川幸雄さん演出によるハムレット上演はこれで7度目だそうで、その歴代ハムレットに名前を連ねたのが、私の中で3本の指に入る役者さんである川口覚くん。蜷川シェイクスピア「じゃじゃ馬馴らし」やさいたまゴールドシアター「ルート99」での客演を観るにあたり、彼は蜷川さんの信頼を一手に背負う次世代のホープであることは間違いなく、ファンとして嬉しい限りです。 (参考までに、歴代蜷川ハムレット:平幹二郎→渡辺謙→真田広之→市村正親→藤原竜也→マイケル・マロニー。)
演目は、シェイクスピアの悲劇『ハムレット』。 大ホールの舞台上に設置された、客席が3面から囲む舞台。 開幕と同時に観客に見せられるものは、透明な床から見える奈落での楽屋風景。 これから芝居を打つ役者達のアップの姿を見せ、「これは若い役者達の物語でもありますよ」と表明。
この奈落と大きなシャンデリア以外、セットはありません。 しかし黒と赤を基調にした衣装は荘厳で、重厚さを纏った役者さん達が舞台を縦横無尽に駆け回る姿が幻想的で美しく。中でも、奈落で繰り広げられる芝居・・・ それは、亡き王の恨みの声であったり、オフィーリアの狂気であったり。劇中劇であったり、葬式であったり、と様々なシチュエーションでその場が使われるのですが、狭い空間なのに無限の広がりを感じさせ、「そこに行きたい」との憧憬まで感じさせられます。
その舞台上で「ハムレット」且つ「ハムレットを演じる役者」として生きていた川口くんの実力の確かさと美しさは、上演時間(4時間近く)を絶え間なく愛しいものにしてくれました。
語るべきはやはり、その川口くんの演技の素晴らしさ。しっかりした台詞回しの中に感情表現の確かさを感じて、その声にも仕草にも一瞬たりとも隙を感じません。観ていてゾクゾクしっぱなしです。
4時間もの長い公演時間の間、父である先王が亡くなり、父の弟が母と結婚して王位を継いだ頃のハムレットの虚無感から始まり、父の霊の恨みを知ってからの葛藤、苦悩、狂気。それらを徐々に増幅させ、ハムレットとして役者として進化してく様をまざまざと見せられて。
時の流れのリアルさに観ているこちらの心臓も切なく高鳴り続けて感情移入が頂点に達するその時、ハムレットが可憐なオフィーリアを「尼寺へ行け!」と罵倒して罵倒して観客の涙腺も爆発させられる辺りでの、まさかのこまどり姉妹の登場(笑) 着物でマイクを持って演歌を歌う姉妹の圧倒的な存在感に打ちひしがれてヒクヒクとのたうち回るハムレットとオフィーリアからは、「見せ場なのに・・・見せ場なのにーーー!!」という心の叫びが聞こえました(笑)
9割方、正統派の古典の舞台なのですけれど、蜷川さんの演出意図・・・あくまでも、若い無名の役者達による上演というコンセプトが、若者達の熱演の最中に悪戯心を以ってひょこっと顔を出す、厳粛さ溢れる古典の醍醐味の中にも遊び心満載の楽しい演劇でした。
なんというか・・・舞台でペ○○ケースを観たのは初めてですw 全裸より面白いww 先王の霊が地中を這い回るシーンでも、「あんなに早く動けるんだ。移動してみよう」と、ハムレット自身ではなく、ハムレットを演じている役者さん自身が台詞を言ったり。息苦しいほど苦渋に満ちた舞台でしたので、そういう遊び心に助けられた思いもするのです。
あれから月日が経ち、心の中に残るのは、やはり川口くんの演技の圧倒的な素晴らしさ。
私が川口くんを初めて観たのは、2008年8月のアロッタファジャイナ「ルドンの黙示」。イズワル王子を演じた川口くんの独特の清涼感が強く心に残って、この清涼感は彼の武器になると確信し、私の中で3本の指に入る役者さんとして注目してきました。 (「真田風雲録」を見逃したのは一生の不覚です。。)
そして今、その清涼感はそのままに、演技力が凄まじい勢いで伸びていて。今回のハムレット役は名実共に彼の代表作となり、これからの大活躍を容易に予想させるのです。
(観た日:2012.2.25)