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Battle Day0-Day262までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)

 

 『BattleDay232-Day246あらすじ』Battle Day232-Day262までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)  ある日、夜中に電話が鳴る。遼吾を待つコオだったが…リンクameblo.jp

 

BattleDay233~ここまでのあらすじ

結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える

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 莉子の、収入がいくらだったのか正確なものはコオは知らない。けれど、ピアノ講師をやっていた時からそうだが、莉子の時間的に楽な働き方(あくまでコオから見ると)からすると、そしてあくまでも一人暮らしは不可能だ、と主張するところから想像するに、決して多くはない。自宅にいて、家賃や光熱費がかからないから余裕があるくらいの額。ちょっと趣味や、旅行に出も行けば、すぐに吹っ飛んでしまうような額だろう。

 コオは、自分の試算が、少なすぎる、とは思わない。逆に多すぎる可能性の方が高い、と考えていた。

 だとすると、莉子から月々の施設の費用の援助を期待するのは無理かもしれない。

 コオは父からの断片的な情報から、そう考え始めていたのだが、

 

 「莉子ちゃんが、家を売って中古のマンションに移りたい、っていうんだよ。」

 

 それは、父が2回目の入院をしたときにも、出た話だ(Day136-Day141-(1) 参照)。あの時、コオは(何くだらないこと言ってるの)くらいに思い、流していた。

 しかし

 

 「うちの住宅地も、うちとおんなじ時期に立った家が、今ぽつぽつ売りに出て、チラシが入ってくるんだよな。ーまぁ、莉子ちゃんがそれみたんだ。で、中古マンションの小さめのやつ買えば、少なくても500万はお小遣いになる、っていうんだよ。けど、中古っていったって、買って終わりじゃないし。」

 「・・・当り前じゃない。管理費とか、修繕積立費とか・・・バカにならない額が月々かかってくるよ・・・住宅取得税だって・・・」

 

 コオはうめいた。父が語る言葉がすべて本当なのかはわからないが、今回は前よりもずっと具体的で、やはりまるきり現実を見ていない。いや、現実を見ていないのは父ではなく莉子だろうが。

 

 「しかも、マンションなんて買ったその日から価値が落ちていくだろ?今の家にいれば、少なくとも家賃はかからないし、土地があるけど。」

 「わかってる・・・チラシの額何て・・・全部が手に入るわけないじゃない・・・」

 

 やはり、莉子の言葉なのか?計算してないところも莉子らしい。確かに戸建ては光熱費などのコストパフォーマンスは悪いだろう。しかし、安定した収入なしに、住宅を購入するのはあまりにもリスクが高すぎる。しかも、父の家は築40年を超える。チラシに乗っている価格は、業者の取り分がのっているし、売って住宅をつぶす手数料、書類手続きの手数料なども入っている可能性が高い。

 500万?もし単純にチラシの価格から、莉子が購入しようとしてる中古マンションの価格を引いてるだけなら・・・そんなもの、ほとんど残らないだろう。もって2年で食いつぶしてしまうだろう。

 莉子は・・・まるで寄生虫だ。内側から食い荒らしている。

 

 コオは寒気がした。

 父の言葉がすべて事実を語っているのかどうかわからない、莉子は自宅にいた利点を生かして、貯金をかなり作った可能性だってゼロではない、と自分に言い聞かせながら、コオは自分の知ってた(と思っていた)妹が、にわかに得体のしれない怪物になったような、そんな気がしていた。