これまでの話、Battle Day0-Day135 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、
登場人物は右サイドに紹介があります、
Day136-あらすじ
父は再び脳出血を起こしており、ICU入院となった。コオは、莉子は当てにならない、と見切りをつけ、病院のケースワーカーと、コオは話をし、自分を連絡先の一つに入れてもらった。
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コオは、週末父に2度ほど会うことができた。父はICUだったので、6人部屋のうち残りの5人はほとんど話ができないような状態の人ばかりで、コオはひどく心配だった。父は処置が早かったおかげで、入院前にコオが感じた口調の異常さもなくなり、少し元気はなかったが、話もできる状態に回復していた。回復には、話をすること。なのに、コオも平日は行くことができない。莉子は…この時点で1度も来ていなかった。
「パパ、すごいね2回も脳出血起こしたのに、麻痺もなければ話もできる。奇跡的だよ。」
「そうか、僕はラッキーなんだな。」
「そうだよ、だからこれを維持できるように、今度は家に帰ってもちゃんとリハビリしないとね!!」
父が前回の入院時と違うのは、ひどく気力をなくしていることだった。前の入院のときは、自分はラッキーなのだ、回復できる、回復しよう、という意欲が感じられたのに、コオとあっても、莉子の心配ばかりを、弱々しく語った。
莉子がもう、自宅を売って中古のマンションを買おうと考えてる。しかし、そんな甘いものではないだろう、自分は莉子が自分がいなくなっても住めるように、壁や屋根も直したのに、莉子は本格的にそれを考えているのだ、と父は言った。
「マンションだって、買って終わりじゃないからね。管理費やなんやら、毎月万単位で出ていくよ。家売ったら税金だって取られるだろうし。」
「ああ、そうなんだ。だから・・・なんとか、それを止めてほしいんだよ・・・」
「パパの家なんだから、大丈夫だよ。それも、ちゃんとまずは回復して、自分で莉子に伝えればいい。だから、しっかりここでリハビリして、まずは体力戻さないと。ご飯も食べてさ。」
コオは、ひたすら父には元気が出るような話だけしようと決めていた。大半は病気と関係ない話をし、自分の仕事の専門の話をした。そして、あの、家族旅行から返った次の日にヒステリーを起こした莉子に実家から追い出された後、コオはボイスレコーダーを購入し父と会うたびに会話を録音していた。
それは莉子と話をすることになったとき、「パパは、こういっていた」と、莉子に証明できる、と思ったからだったが、コオはそれを一度も聞き返すことはなかった。
必要がない以上に、コオはひどく傷ついた気持ちになるのがいやだったからだった。
父は、繰り返し言った。
「莉子ちゃんが心配なんだ。俺が心配なのは莉子ちゃんだけだ。」
私は?私は…何なのだろう?
私がやっていることは父にとって、何なのだろう?
コオの中の小さな子供が、自分を見てくれ、と叫んでいる気がした。
