読書な日々、日々。 -8ページ目

空、雲、陸(短編小説)

嫉妬に狂うの。
空を見てたら、無性に。
私は陸の子だから。
あんなに高くて綺麗で。




嫉妬するんだ。
陸を見てたら、とにかく。
俺は空の子だから。
あんなに花を咲かせて。




嫉妬をしてしまいます。
空にも陸にも。
僕は雲の子ですから。
消える事がなくて。




三者三用の悩みがあるのです。
陸の子は空に憧れ、空の子は陸に憧れ、雲の子は空と陸に憧れるのです。

私は海。
空にも、陸にも接します。
私は雲が羨ましい。
色々な場所に行けるから…




良い所がそれぞれに存在するのです。
誰もソレに気付かないだけ。
人も、同じコト…


END

愛し君に(短編小説)

愛し君に。






すまない、約束は守れない。
悲しいが戦場から送る手紙はこれが最後になるだろう。
隣国との関係は悪化し、同盟国の衰退も極まっている。できれば、逃げてほしい。世界一の大国なら受け入れてくれるのではないだろうか。
君が死んでしまうのは悲しい。




また無意識に手紙を書いていたようだ。君は当の昔に、僕を捨てて敵国に嫁いだというのに。
だが分かってほしい。我が国の事を。




愛し君に。
僕が捧げた時世の手紙。


END

夕立(短編小説)

空が暗くなった。
一斉に雲が押し寄せてくる。まるで波のように、一気にだ。
南国のスコールも、こんな様子で降るんだろうか。



僕は教室の窓から外を見ていた。
茹だるような暑さの学校。テスト期間中の午後は、人の気配が薄い。その分、少しだけ涼しくなるような気がする。…というか、確実に薄ら寒さを感じる。

「なんかいるのかな、ココ。」

人の気配は無い。ポツンと僕だけが空間に居るはず。
テスト期間なのに僕が教室に残っている理由、それは真っ正面で寝ている阿保面のせい。
阿保面は、寮の同室のヤツで…僕の鍵を持って行った。ちなみに自分の鍵は、自室の中に忘れたらしい。
そして、僕の鍵までなくした阿保だ。というわけで、僕と阿保は部屋の鍵が開くのを待っているという状況。
合い鍵も作ってもらっているから、更に時間がかかる。


「おい、阿保。よく暑い中寝られるな…」

嫌がらせの為に少し揺すってみるが、ピクリとも動かない。コイツは眠りが深いのだ。
外からは、涼しい風が入ってくる。エアコンすら放課後は切られてしまう。
風に混じって、遠くで鳴る雷の音が聞こえる。雨が降るかもしれないな。


「………帰りたい……」


夏休みにはなって欲しくない。僕には帰る家が無いから。皆がいない寮は切ないくらいに孤独だ。
あの懐かしくて、優しい故郷すら、もう存在しないのだ。



「ん~~~あめのにおい…?」

あ、阿保が起きた。

「起きたか?」
「ん~~寝てる~」
「起きてるじゃないか。雨のニオイって?」


阿保は、目を擦りながら、ぼんやりと空に目を向けた。
「夕立、降るよ。」

寝起きの声にしては、やけにハッキリしている。夕立が降るって…こんなに晴れてるのに?

「雲の流れが早い。確実に雨が降る。早く帰ろう。」
「鍵は…!?」
「ん?俺が持ってるよ。」


……………………持ってる?




僕は取りあえず、鍵を取り上げて(僕の鍵だった!!)、阿保を一発殴って、帰る支度をした。
阿保から傘を取り上げるのも忘れなかった。




後から帰ってきた阿保は、ビッショリ濡れていた。



……夕立降った、な。



END