脚本家/小説家・太田愛のブログ -5ページ目

KADOKAWAのWEBマガジン・カドブンに、今月31日発売の新刊『未明の砦』について、武田砂鉄さんが書いてくださったレビューが掲載されています。

人間の力を信じ抜く小説——太田愛・新刊『未明の砦』レビュー

 

武田さんには、本の帯にもとても力強い言葉をいただきましたが、このレビューでも、毅然と読み手に迫る鋼のような文章を書いてくださいました。拝読して私も励まされ、鼓舞されました。武田さん、どうもありがとうございました。

 

お読みになる前にひと言だけ。武田さんのレビューでは、中ほどの段落でストーリーの骨格の一部が明らかになっています。「予備知識ゼロ、真っ白の状態で物語を楽しみたい!」という方はもうしばらくお待ちいただいて拙著を読まれた後で、ぜひお読みください。

 

 

『未明の砦』もくじ

 

   第一章 事件
   第二章 発端の夏
   第三章 追う者たち
   第四章 Are you ready to kill?
   第五章 反旗
   第六章 力なき者たちの力
   終 章 標的

 

 

 

7月31日刊行の新作『未明の砦』のカバーができあがりました。

カバーの写真は、写真家・山内悠さんの写真集『夜明け』(赤々舎)のなかの一枚で、私が選んだものです。装丁は『彼らは世界にはなればなれに立っている』に続いて、國枝達也さんが担当してくださって、前回と同じく素晴らしい本に仕上げてくださいました。帯には、武田砂鉄さんから力強い言葉をいただきました。

『未明の砦』もくじ

 

   第一章 事件
   第二章 発端の夏
   第三章 追う者たち
   第四章 Are you ready to kill?
   第五章 反旗
   第六章 力なき者たちの力
   終 章 標的

 

1ヶ月後には書店に並びます。ネット書店での予約も始まっています。お楽しみに。

 

 

 

お待たせいたしました。

 

2021年4月「陸奥新報」をスタートに11紙に掲載していた『未明の砦』。もうすぐすべての新聞で連載が完結し、7月に単行本となって書店に並びます。

 

発売予定日は7月31日(月)。

アマゾンなどのネット書店の予約も、すでに始まっています。

 

『未明の砦』は、こんな物語です。

 

共謀罪、始動。標的とされた四人の若者は、公安とグローバル企業を相手に闘うことを選ぶ――

瑞々しくも切実な希望と成長の社会派青春群像劇。

 

■街角にクリスマスソングの流れる日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。動いたのは警視庁組織犯罪対策部。標的は、大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い非正規工員・矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平。四人は完璧な監視下にあり、身柄確保は確実と思われた。ところが突如発生した火災の混乱に乗じて四人は逃亡する。誰かが彼らに警察の動きを伝えたのだ。所轄の刑事・薮下は、この逮捕劇には裏があると読んで独自に捜査を開始。一方、散り散りに逃亡した四人は、ひとつの場所を目指していた。千葉県の笛ヶ浜にある〈夏の家〉だ。そこで過ごした夏期休暇こそが、すべての発端だった――。

 

■自分の生きる社会はもちろん、自分の人生も自分で思うようにはできない。見知らぬ多くの人々の行為や思惑が作用し合って現実が動いていく。だからこそ、それぞれが最善を尽くすほかないのだ。共謀罪始動の真相を追う薮下。この国をもはや沈みゆく船と考え、超法規的な手段で一変させようと試みるキャリア官僚。心を病んだ小学生時代の友人を見舞っては、噛み合わない会話を続ける日夏康章。怒りと欲望、信頼と打算、野心と矜持。それぞれの思いが交錯する。

逃亡のさなか、四人が決意した最後の実力行使の手段とは――。

連載を始めた21年4月はコロナ禍第4波の真っ只中。さかんに外出自粛が呼びかけられ、はりつめた空気が社会全体を覆っていたのを覚えています。当時、連載スタートにあたって、「作者のことば」として次の一文を各紙に寄せました。

 

「格差と分断の広がる社会の中で、無力感のままに状況に身を任せることを拒み、自らの尊厳を取り戻そうとする人々を描きたい」

 

まもなくです。

ぜひお手にとってみてください。

 

ネット書店のページはこちらです。

Amazon→https://onl.la/RjH3YXp

honto→https://honto.jp/netstore/pd-book_32567718.html

楽天ブックス→https://onl.la/8Zf2qCH

 

 

KADOKAWAの内容紹介ページはこちらです→

 

*書影など、新しいお知らせは、このブログやホームページに掲載いたします。

新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

 

昨年夏、小説『未明の砦』の新聞連載が、最初の掲載紙、陸奥新報で完結いたしました。また、10月には光文社文庫のアンソロジー『Jミステリー2022 FALLに、久しぶりの短編ミステリ『鯉』を寄稿いたしました。

        

今年は、『未明の砦』の書籍化と新作の長編小説に着手する予定です。ほかにも、いくつかの企画が進んでいます。詳細が決まり次第、随時、HP、ブログにてお知らせいたします。

また、鑓水たち三人組のシリーズは昨年も多くの反響を頂きました。読書好きの方々や書店員の皆さんが広めて下さったおかげです。心から感謝です。シリーズとは趣が異なりますが、ダークファンタジーがお好きな方は、山中賞受賞作『彼らは世界にはなればなれに立っている』も是非お手に取ってみてください。

 

本年が皆様にとって幸多き年になりますようお祈り申し上げます。

                                                                     2023年元日

 

 

 

 

新作のお知らせです。

書き下ろしの短編ミステリを寄稿した「Jミステリ2022 FALL」(光文社文庫)、本日(10月12日)発売です。

 

タイトルは『鯉』。

 

横浜の一角に屋敷をかまえる、ある古い素封家の家族に起きた事件を描くオーソドックスなミステリです。旧家を舞台としたミステリというと、横溝作品のようなおどろおどろしい雰囲気を想像される方もいらっしゃるかと思いますが、本作はある女性の遠い記憶に秘められた謎をめぐる物語です。ひさしぶりに少女や女性を中心に描いた作品になりました。

ぜひお手にとってみてください。(Amazonでは→こちらから)

 

 

新作のお知らせです。

10月12日に光文社より刊行予定の『Jミステリー2022 FALL』に書き下ろし短編ミステリーを寄稿しました。同書は、4月に刊行された『Jミステリー SPRING』に続く文庫書き下ろしのミステリーアンソロジーの第2弾で、今回も6名の作家の新作が掲載されます。執筆者は、光文社文庫のTwitterアカウントで、昨日8月29日より毎日カウントダウン形式でひとりずつ発表中です。光文社文庫のTwitterは→こちら

 

目下、編集作業が進行中ですが、Amazonなどのネット書店では、すでに予約も始まっています。Amazonは→こちら

秋の夜長、ミステリー好きの方は、ぜひご予約くださいませ。

 

 

『幻夏』に続いて、『犯罪者』上下巻もアマゾンでオーディオブックになりました。6月3日発売です。ナレーターは声優の青木崇さん。鑓水たちのシリーズ第1作を、ぜひ「聴いて」みてください。

Amazonのページは上巻は→こちら、下巻は→こちらです

 

また、6月8日に徳間文庫から発売される山田正紀氏の『囮捜査官北見志穂4 芝公園連続放火』に、解説を書いています。読み始めればページを捲る手が止まらなくなるノンストップストーリーでありながら、同時に、戦後日本の病巣を鮮やかに描いてみせる傑作ミステリです。せひお手にとってみてください。→Amazonではこちら

 

さて、新聞連載の『未明の砦』執筆もラストスパートに入り、手元の原稿の残り話数もひとケタになりました。主要キャラクターの何人かについてはすでに最後の登場シーンを書き終えました。それぞれの登場人物にふさわしい退場になるよう紙数の中であれこれ考えながら、一場面一場面、筆を進めています。最後まで楽しんで読んでいただければ嬉しいです。

 

近況のお知らせです。

現在、新聞5紙で連載中の小説『未明の砦』、第394話より遂に最終章となる第4章に入ります。最初に連載が始まった「陸奥新報」では今月中旬になります。

 

『未明の砦』は、現代日本で起こったひとつの事件を中心に、非正規労働者の若者たちから所轄の警察官、エリート警察官僚、トップメーカーの企業人までさまざまな人物によって繰り広げられる群像劇です。

物語の幕開けはクリスマスシーズンの吉祥寺駅前。華やかに街が賑わう休日の午後、突然、四人の非正規労働者の若者たちが共謀罪の容疑者として追われる場面から始まります。2017年の国会で強行採決によって成立した「共謀罪」は、組織的に犯罪が計画されていると当局が見なせばそれだけで逮捕が可能となる法律で、その危うさから「現代の治安維持法」とも呼ばれています。なぜ若い四人がそんな罪状で、警察に追われる身となったのか。小説では、彼らが初めて共に過ごした真夏の房総半島の海辺で起きた出来事にさかのぼり、彼らを取り巻く多種多様な人物を描きながら、四人の若者たちの物語を追いかけていきます。

 

連載開始から一年余り。彼らのことを書ける紙数も残りわずかです。最終章で果たして彼らはどこに行き着くのか。どうぞお楽しみに。

 

右京さんと亘さん、そして豪華なゲストの皆様の顔合わせで、お正月らしい、華やかなSPとなりました。脚本が撮影現場でかわっていくことはよるあることで、今回も楽しいアドリブ満載でした。

ただ、それとは全く別に一点だけ脚本家の立場から申し上げておきたいことがございます。

右京さんと亘さんが、鉄道会社の子会社であるデイリーハピネス本社で、プラカードを掲げた人々に取り囲まれるというシーンは脚本では存在しませんでした。

あの場面は、デイリーハピネス本社の男性平社員二名が、駅売店の店員さんたちが裁判に訴えた経緯を、思いを込めて語るシーンでした。現実にもよくあることですが、デイリーハピネスは親会社の鉄道会社の天下り先で、幹部職員は役員として五十代で入社し、三、四年で再び退職金を得て辞めていく。その一方で、ワンオペで水分を取るのもひかえて働き、それでもいつも笑顔で「いってらっしゃい」と言ってくれる駅売店のおばさんたちは、非正規社員というだけで、正社員と同じ仕事をしても基本給は低いまま、退職金もゼロ。しかも店員の大半が非正規社員という状況の中、子会社の平社員達も、裁判に踏み切った店舗のおばさんたちに肩入れし、大いに応援しているという場面でした。

同一労働をする被雇用者の間に不合理なほどの待遇の格差があってはならないという法律が出来ても、会社に勤めながら声を上げるのは大変に勇気がいることです。また、一日中働いてくたくたな上に裁判となると、さらに大きな時間と労力を割かれます。ですが、自分たちと次の世代の非正規雇用者のために、なんとか、か細いながらも声をあげようとしている人々がおり、それを支えようとしている人々がいます。そのような現実を数々のルポルタージュを読み、当事者の方々のお話を伺いながら執筆しましたので、訴訟を起こした当事者である非正規の店舗のおばさんたちが、あのようにいきり立ったヒステリックな人々として描かれるとは思ってもいませんでした。同時に、今、苦しい立場で闘っておられる方々を傷つけたのではないかと思うと、とても申し訳なく思います。どのような場においても、社会の中で声を上げていく人々に冷笑や揶揄の目が向けられないようにと願います。

 

 

 

 

 

新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

 

さて、今日夜9時からは、脚本を担当した「相棒20」元日スペシャル『二人』が放映されます。今回のお話は、凶悪な犯罪が芯を貫いているミステリでもあり、サブタイトルどおり、さまざまな組み合わせの“ふたり”をめぐる物語です。また、初めて亘さんのお姉さんが登場し、遠い過去も少しだけ描かれています。さらに、事件解決に向けて右京さん、亘さん、捜査一課の皆さん、青木さんらが、刑事部長室に結集するという稀に観る場面もございます。

右京さん、亘さんをはじめとした盤石のレギュラーキャストのみなさんと、豪華なゲストの方々による相棒ワールドをお楽しみください。

なお、プラカードを持った人たちは、脚本では登場しません。

 

一方、小説の方では、現在、「陸奥新報」など5紙に連載中の『未明の砦』がこれから佳境に入っていきます。若者4人を中心とした、久しぶりの大がかりな群像劇。〆切に追われながらも、楽しく執筆しています。また、おかげさまで昨年『犯罪者』『幻夏』『天上の葦』の鑓水たちのシリーズが累計50万部を超えました。いろいろな場所で推してくださった皆さま、応援してくださった書店員の皆さま、口コミで広げて下さった読者の皆さま、どうもありがとうございます。

昨年からさまざまな方面よりお声をかけていただき、ありがたく、ありがたく、嬉しい悲鳴をあげています。時機が来ましたら、当ブログやホームページにてお知らせいたします。こちらもご期待ください。

 

本年が皆様にとって幸多き年になりますようお祈り申し上げます。

2022年元日