日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -315ページ目

萎縮

娘と向かいあって、飯を喰った。

飲み物を欲しがる娘に、妻は、食べてからと窘める。
帰宅したときから、家の中は嫌な空気が張り詰めていた。

俺は、いつ降りかかるかわからない、非難の言葉に、身体を萎縮させた。





続きは、後日、更新いたします。

一人の休日

昨日から妻は、実家に帰っていた。

今日の夕方、帰宅する。

昨晩は酒を飲みながら、遅くまで本などを読んでいた。

今日は一人、好きなことをすればいい。

朝、一通のメールで眼が醒めた。

家の中を掃除しろ。

犬小屋を洗え。

やり残した庭の掃除もしろ。

そんな内容だった。

自由な時間など、俺には必要ないと言うことなのか。

どうせ遊んでいるなら、掃除でもしなよ。

妻は、よくそんなことを言う。



布団のあたたかさが、身体を重くした。

なかなか抜け出せず、ぼんやりと天上をみつめた。

外は曇り空のようだ。

雨音は聞こえない。



図書館ヘ行き、本を返却し、帰りに安い飯を喰った。



家へ帰り、ひと通りの仕事をこなした。

何もする気になれず、テレビを眺めていた。

ソーラーカーで日本一周、という企画らしい。

リーダーと呼ばれるその男の瞳。

どこか疲れたような、それでいて優しい光を放っていた。



妻が帰宅し、俺は嫌な気分になった。

眉間に皺をよせている。


娘は泣いていた。

俺が娘をあやしている間、妻は荷物を運び込んでいる。


いきなりだった。

「何で鍋に火を通さないわけ」

「あなたが食べないのは勝手だけど、火を通さないと腐るから」

「ほんと、無駄になるでしょ」



良い夫は、鍋の中身まで心配してなきゃならない訳だ。

いい加減、疲れ果てた。


俺は、家を飛び出した。

車に乗り、ルームミラーに眼をやった。

酷く、暗い眼をした俺が写っていた。

腹に詰め込むだけの飯

「豚丼なんですがいいですか」
メニューを指差した俺に、店員が念を押してくる。
当たり前だと言いたくなった。
牛丼など喰いたくない。
豚が好きなのである。
回りを見渡すと、体格のよい男どもが牛丼をかきこんでいた。
斜め前の、痩せた背の低い男は、カレーライスを食っている。
豚丼が無くなったら、もうここへは来ないだろう。

丼の中を覗き込む。

大盛りの割には、やけに飯が少ないような気がした。