日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -224ページ目

限界

車に乗って家を出た。

もう我慢出来なかった。

あいつは異常だ。

頭の中で、俺は何度も呟いた。

・・・・・・




家に帰ったら、犬の散歩だった。

俺は逃げるように家を出、ひとしきり近所を回って家に戻った。



家の中には、俺の居場所はどこにもなかった。

何とも言えない嫌な空気。

息苦しい。

時々、物を乱暴に叩きつけるような音がする。


その度、俺は下に向けた顔を上に向けた。

食事の用意にしては、騒がしい。

俺に対する当て付けなのだろう。

それでも、逃げられない。

妻から見えない所にいると、文句だった。

なに遊んでるのよ。

寝室で布団をひいていても、そうなじられた。

だから、雨戸を全部閉め終わると、居間でじっとしている以外になかった。

家の中の仕事は、何もない。

何もしないでじっとしているのは辛かった。

それでも、本などを読もうものなら徹底的になじられる。


しばらくすると、妻が不意に俺の前に現れた。

「こっちは朝から晩まで忙しくしているのに、なんでそんなところでボケっとしてるの。やることはいくらでもあるでしょ。ホント、頭にくるんだから」

何をすればいいと言うのだ。

そう思っていたら、さらに妻は怒鳴り続けた。

「よくそれで、人の作ったものを平気で食べられるわね」

飯すら、喰う資格もないと言うのか。

そう思ったら、もう我慢が出来なかった。









スーパーの駐車場。

家を出たが、どこかへ行くあてもなかった。

財布には、小銭しかない。

真っ先に仕事が気になった。


どうすればいい?

考えても、家に戻る以外、何も思い浮かばなかった。

苛立ち

「もう、本当に苛々する」

妻は朝から怒鳴っていた。

家の中が荷物で一杯で、片付けがはかどっていない。

それを俺の責任にすり替える。

俺が片付けをしていると、妻がまた怒鳴る。

「そんなことをする前に、これやってよ」

家具の修理だった。

俺は作業を中断して、家具の修理にとりかかった。

中断した作業は、前日に妻がやれと言った仕事なのだった。


苛々の原因を、全て他人のせいにしたがる。

こんなことでは、苛々が募るだけではないのか。

全ての事象が、自分のコントール下にあると、思いこんでいるのか。


妻の言いようは、異常なほどだった。

人との係わり合いのなかで、相手が一方的に悪いなどと言うことは、そうはないはずだ。

妻にそのことをわからしめる方法はないものか。

直接言ったところで、わかるはずもないだろう。

俺は途方に暮れながら、どのようにして妻にその事をわからしめるか、考えていた。

徒労

「こんな貧乏な暮らしで。結婚なんてしなきゃよかった。ホント最悪」


朝起きて、最初に妻が発した言葉がそれだった。

やはり、別れた方がいい、な。娘のためにも。



徒労。

すべては、無駄な時間だったのか。

もう、何かをやろうという気すら起きなかった。