希望か絶望か
物音で目が醒めた。
妻の気配。
ひどく疲れていて、なかなか起き上がれない。
それでもなんとか起き上がり、妻と顔を合わすことなく家を出た。
老犬との散歩。
逃げている。
そう思いながらも、家を出ずにはいられなかった。
朝から、どん底に落とされるのは、もううんざりなのだった。
すべてに対して、無気力な状態だった。
何もする気が、起きない。
そして、ふとしたときに、あの言葉が頭の中にこだまする。
人生最大の失敗。
何でこんな人と、結婚したのか。
親類、友人、すべてがあなたを笑っている。
胸の奥が収縮するようで、軽い吐き気がした。
考え付く限りの、侮蔑の言葉はすべて浴びせられているだろうと思った。
唯一、いわれていない言葉は、死ね、だった。
だた、言葉が違うだけで、それは死ねといわれているのに等しい。
すぐに、歩くのが億劫になった。
公園のベンチに腰を下ろした。
老犬はせわしなく動き回り、紐を強く引っ張る。
しばらくすると、あきらめて、土の上に座った。
時計を見た。
まだ妻は、家にいるだろうか。
考えたのはそれだった。
あと十分。
そうすれば、妻は出かけるだろう。
希望もない。
そして、絶望もない。
俺は、老犬を見つめながら、なんとなく思った。
立ち上がり、公園を後にする。
先に歩き出し老犬が立ち止まり、振り向いて、刹那、俺を見つめた。
眉根を寄せた、どこか悲しい眼差しに、俺はなぜだか苛立った。
タオル
「そこで寝るんだったら、片付けくらいすればいいじゃない」
今朝もまた、妻の罵声で目が醒めた。
娘の遊んだ積木が二つ、部屋の隅にころがっていた。
妻が言っているのは、多分その事だろうと思った。
妻子は寝室で、俺はソファーの上で寝ている。
ここは、普段は娘の遊び場なのである。
積み重ねられた皿を洗い、洗濯物を取り込む。
出来る事。思いつくことはすべてやっている。
それでも、部屋の隅に積木が転がっていれば、徹底的に罵られるのだった。
転居の理由の一つに、近所に住む親類の存在があった。
それを、妻が最大の問題だとがなりたてていたころ、はたして俺は今より抜かりなく、家事をこなしていただろうか。
少なくとも、妻のあの言葉を聞いてから、俺はどこか冷めてしまった。
人生最大の失敗。
そこまで言われても、微笑みながら、どうして皿などを洗っていなければならないのか。
どんなに努力したところでおそらくは、無駄だろう。
妻の意を汲み、行動したところで、妻の要求に際限はないからだ。
積木を片付け、トイレを掃除する。
皿を洗い、犬小屋を掃除する。
しばらくじっとしていた。
何もすることがなくなった。
部屋の隅に目をやった。
パソコンがゴミのように佇んでいた。
やることはないはずだ。
考えていて、俺ははっとした。
タオル。
タオルかけの右の方に、皺になって片寄っていた。
俺はそれを、中央に戻し、整えた。
今朝もまた、妻の罵声で目が醒めた。
娘の遊んだ積木が二つ、部屋の隅にころがっていた。
妻が言っているのは、多分その事だろうと思った。
妻子は寝室で、俺はソファーの上で寝ている。
ここは、普段は娘の遊び場なのである。
積み重ねられた皿を洗い、洗濯物を取り込む。
出来る事。思いつくことはすべてやっている。
それでも、部屋の隅に積木が転がっていれば、徹底的に罵られるのだった。
転居の理由の一つに、近所に住む親類の存在があった。
それを、妻が最大の問題だとがなりたてていたころ、はたして俺は今より抜かりなく、家事をこなしていただろうか。
少なくとも、妻のあの言葉を聞いてから、俺はどこか冷めてしまった。
人生最大の失敗。
そこまで言われても、微笑みながら、どうして皿などを洗っていなければならないのか。
どんなに努力したところでおそらくは、無駄だろう。
妻の意を汲み、行動したところで、妻の要求に際限はないからだ。
積木を片付け、トイレを掃除する。
皿を洗い、犬小屋を掃除する。
しばらくじっとしていた。
何もすることがなくなった。
部屋の隅に目をやった。
パソコンがゴミのように佇んでいた。
やることはないはずだ。
考えていて、俺ははっとした。
タオル。
タオルかけの右の方に、皺になって片寄っていた。
俺はそれを、中央に戻し、整えた。
パソコン
いままで、こんなに毎日イライラしたことは、なかった。
いままで付き合った人とは、毎日たのしくて仕方がなかった。
パソコンとかゲームばかりして、そんなこと許されると思っているのか。
そのような事を、妻は喚いた。
妻の言い様は執拗で、胸の奥の方がざわめき、かすかな吐き気さえおぼえた。
ゲームもパソコンもやっていなかった。
そんな暇もないし、転居したこの家に、俺の部屋もなかった。
それでも、妻はかならずそう俺を罵った。
夜中眠れないことが多かった。
妻はそんな俺の気配を察し、勝手に遊んでいると思い込んでいるらしい。
反論はしなかった。
何を言っても、言い訳はするなと、激しく罵られるだけなのだった。
使うことなく床に置かれたパソコンを床から引き剥がした。
外に投げ捨てたくなったが、また床に置いた。
ウエブ以外に使うことのできないパソコン。
仕事に関わるソフトすら、動かなかった。
5年以上前のパソコンなのだ。
一度、3万円前後のパソコンを買いたいと、妻に言ったことがあった。
三万円でも今のパソコンである。
向学の為の、ソフトくらいは動く。
それでも、妻に却下された。
パソコンを二台も持っていてどうするの。
あんたの友達は、二台もっている訳。
そういう妻は、最新型のノートパソコンを使っていた。
二人で使う。
買う時だけそう言い、結局は妻がひとりで使っている。
娘の写真を取り込みたいから貸してくれ。
それでも、妻はいろいろと理由を付けて俺にパソコンを触れさせなかった。
いままで付き合った人とは、毎日たのしくて仕方がなかった。
パソコンとかゲームばかりして、そんなこと許されると思っているのか。
そのような事を、妻は喚いた。
妻の言い様は執拗で、胸の奥の方がざわめき、かすかな吐き気さえおぼえた。
ゲームもパソコンもやっていなかった。
そんな暇もないし、転居したこの家に、俺の部屋もなかった。
それでも、妻はかならずそう俺を罵った。
夜中眠れないことが多かった。
妻はそんな俺の気配を察し、勝手に遊んでいると思い込んでいるらしい。
反論はしなかった。
何を言っても、言い訳はするなと、激しく罵られるだけなのだった。
使うことなく床に置かれたパソコンを床から引き剥がした。
外に投げ捨てたくなったが、また床に置いた。
ウエブ以外に使うことのできないパソコン。
仕事に関わるソフトすら、動かなかった。
5年以上前のパソコンなのだ。
一度、3万円前後のパソコンを買いたいと、妻に言ったことがあった。
三万円でも今のパソコンである。
向学の為の、ソフトくらいは動く。
それでも、妻に却下された。
パソコンを二台も持っていてどうするの。
あんたの友達は、二台もっている訳。
そういう妻は、最新型のノートパソコンを使っていた。
二人で使う。
買う時だけそう言い、結局は妻がひとりで使っている。
娘の写真を取り込みたいから貸してくれ。
それでも、妻はいろいろと理由を付けて俺にパソコンを触れさせなかった。