タオル | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

タオル

「そこで寝るんだったら、片付けくらいすればいいじゃない」

今朝もまた、妻の罵声で目が醒めた。

娘の遊んだ積木が二つ、部屋の隅にころがっていた。

妻が言っているのは、多分その事だろうと思った。

妻子は寝室で、俺はソファーの上で寝ている。

ここは、普段は娘の遊び場なのである。

積み重ねられた皿を洗い、洗濯物を取り込む。

出来る事。思いつくことはすべてやっている。

それでも、部屋の隅に積木が転がっていれば、徹底的に罵られるのだった。

転居の理由の一つに、近所に住む親類の存在があった。

それを、妻が最大の問題だとがなりたてていたころ、はたして俺は今より抜かりなく、家事をこなしていただろうか。

少なくとも、妻のあの言葉を聞いてから、俺はどこか冷めてしまった。

人生最大の失敗。

そこまで言われても、微笑みながら、どうして皿などを洗っていなければならないのか。

どんなに努力したところでおそらくは、無駄だろう。

妻の意を汲み、行動したところで、妻の要求に際限はないからだ。

積木を片付け、トイレを掃除する。

皿を洗い、犬小屋を掃除する。

しばらくじっとしていた。

何もすることがなくなった。

部屋の隅に目をやった。

パソコンがゴミのように佇んでいた。



やることはないはずだ。

考えていて、俺ははっとした。

タオル。

タオルかけの右の方に、皺になって片寄っていた。

俺はそれを、中央に戻し、整えた。