日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -214ページ目

もう少し

行動が必ずしも幸福をもたらすとは限らないが、行動のないところに幸福はない。



書店で偶然手に取った本。

適当に開き、目に飛び込んできた言葉だった。

妻が忌み嫌う、自己啓発本だった。

俺はこういった本が好きで、以前はよく読んでいた。

今は読まない。

妻に、嘲笑されるのが嫌だったからだ。

「いい歳して、こんなもの読んで。馬鹿じゃないの」

過去にそんなことを言われた。


もう一度、ページをめくる。


すべての逆境には、それと同等か、またはそれ以上の恵みの種子が隠されている。



刹那、頭の中である映像がはっきりと見えた。

俺はひとつ息を吐き、本を閉じた。








後ろめたさ

朝、突然、妻が帰宅した。

それは予想外のことだった。



娘がこちらに来て、ひざの上に座った。


妻は娘の弁当を作っているようだった。




すぐに台所で物音がした。


何か、物を叩きつけるような、いやな音。

そして、なにか文句も言っている。


それだけで、恐怖だった。

何に対しての、恐れなのか。


罵倒されるという恐怖。

多分、そうだ。


ガタガタ言って来たら、怒鳴り返してやる。

昨夜、そう思っていたが、その気持ちもすっかり萎えていた。

それに、この後ろめたさは、いったい何なのか。

妻が食事を作り、俺はないもしないで娘と遊んでいるからなのか。






何かやらなくてはならないことはないのか。


すぐに見つかった。

俺は犬を連れて、散歩に出かけた。


ひと回りして帰宅すると、妻と娘はすでに出掛けていた。

俺は台所で、皿を洗った。

テーブルに置いてあったはずの、叔父からの贈り物。

それがなかった。

妻が、どこかに片付けたのか。


そう思って冷蔵庫の中を見たが、見当たらなかった。

部屋を見渡す。



「ふざけるなよ」


俺はつぶやいていた。


ゴミ箱の横に、それは投げ捨てられていた。


再インストール

ウエブを観覧している途中で、何度もフリーズした。

6年以上も前のパソコンで、ウエブもろくに見ることができない有様だった。

それでも、俺の愛機だった。

一度、ハードディスクをクリアし、再インストールする。

それから、バージョンアップ。

それが何度やっても、入らなかった。

何度かトライして、やっとバージョンアップも完了し、ネットに繋げた。

すぐにフリーズした。

怒りがこみ上げてきて、テーブルに拳を叩き付けた。

そして、こんなことで腹を立てている自分を、嫌悪した。

しばらくして、妻が帰宅した。

玄関にでかい箱を置く。

中古のPCだった。

一瞬、何のために買ったのか考えた。

俺のために買ってくれたのか。

しかし、それは間違いだった。

娘のために買ったらしい。

そして娘は、まだ3歳だった。