日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -189ページ目

好きな映画のお話~ランボーで泣く

ランボーをご存じだろうか?



筋肉馬鹿が、戦闘を繰り広げるだけのアクション映画と、思ってはいないか。



実はそうではなく、歴とした反戦映画なのである。



特に一作目のFirst Blood は、一人の若者の慷慨を描ききっていると言える。





First Blood  別エンディング ユーチューブより








憤激とともに~正月

どうということはなく、一日が暮れようとしていた。



元日。


買い物と、公園、凧揚げ。



穏やかな一日といって良かった。



しかし、結局のところ、そうはならなかった。




夕食をとっているとき、いきなり妻の苦言が始まった。


俺は大人しく聞いていた。話を聞く義務があると思ったからだ。


話の内容は、執拗だった。


あらゆる事象を持ち出し、俺が人間の屑であるということを、証明しようとしていた。


反論は出来なかった。


妻の言っていることに、齟齬はなかったからだ。



それはそうだろう。生きていること自体、なにかしらの間違いや不手際はあるのだった。



延々と続く話を聞いているうちに、本当に自分は、どうしようもない人間なのだと思えきた。





もう死ぬしかない、かな。





心の中で呟いている自分に、俺は驚いた。



人の心など、簡単に打ち砕くことが出来る。



ハンニバルレクターが、監獄の中で、隣の牢屋の男を、言葉だけで自殺に追い込むという語りが、映画の中であったことを思い出した。




実際にそんなことが出来るのか疑わしかったが、可能であると今は思う。




手首を切る。

もしも、病院に担ぎ込まれて、一命を取りとめたら。

腱が切れて、手は使い物にならなくなるだろう。

それでは、しょうがないではないか。



自殺を試みた。



それによって、妻に衝撃を与える。


それだけが目的で、死ぬ気などはなからないのだということを、知った。



ばかげた考えだった。


おかしな考えはすぐに消え、代わりに、暗い情念が俺を包んだ。







ナイフを取り出した。


思い切り投げつける。



鈍い音とともに、ソファーに突き立った。







それでも、憤激は消えなかった。

悲憤とともに~大晦日

毎年、悲憤とともに年を越している気がする。


結婚してからは、毎年必ず大晦日は、妻が異常なほど不機嫌なのだ。


なぜだろうと、最初の頃は思ったが、近年はどうでもよかった。


しかし、今年は我慢がならなかった。



早朝、買い物があるとたたき起こされ、スーパーに買い物に行った。


帰宅すると、庭の掃除だった。


前日にほぼ終わっていたのだが、妻の認識ではまだ不十分ということなのだろう。


仕方なく、庭木を切ったり、ゴミを掃いたりしていた。


やることが無くなったのと、寒さに耐えかねたので家に入った。


暖をとりたかった。


足が冷えて、感覚もなくなってきたからだ。



すかさず、妻はガラスを拭き始めた。


俺もそれに従った。



すると、怒声だった。


「二人で同じ事をしてもしょうがないでしょ。庭をやってよね」


俺は頭にきて、持っていた掃除用具を床にたたきつけた。


すると、妻は驚いたことに、ファンヒータを蹴り飛ばしたのだった。


外に出て、庭にたたずんでいた。


掃除は終わっている。やることは何もなかった。


体を動かさないでいると、すぐに足が冷えてくる。


どのくらい外でじっとしていたのか。


足先の感覚がなくなり、どうしようもなくて、家に入った。


ファンヒータ。


スイッチを入れても、作動しない。


妻が蹴り飛ばしたせいで、見事に壊れてしまっていた。


スイッチなど、いろいろと弄っていると、妻が現れて、耳を疑うような言葉を吐いた。


「これ見よがしにファンヒーターを直そうとして、嫌がらせなわけ」


一瞬、何を言っているのかわからなかった。


しばらくして、その趣旨を理解し、俺はもう言い返す気力さえ無くした。


ものを壊す。


それについて、謝罪するどころか、何故か俺が悪いのだと言っているのだ。




お前は、心というものがあるのか?





俺は心の中で呟いた。


もう、人として、見ることができなかった。



鬼だって、家族を思いやるきもちはあるはずだ。


憤激で頭が痛くなってきた。







その後も、飯も食わずに掃除だった。


妻娘は簡単な食事はとったが、俺の分の飯は作らなかった。


俺は、朝から何も食っていない。


飯など食うな、と言うことなのだろう。





日が暮れてきた。





やることが無くなったので、俺は包丁を研いだ。


ある情念を込めて。


研ぎあがった包丁に、指を当てる。


微かに引っかかるような、感じになった。


よく研げているな。


気が付くと、口元だけで薄く笑っていた。





いつまでたっても、飯にはならなかった。


いらだちとともに、妻の様子をうかがうと、何かを運んでいるようだった。


手伝おうとすると、何故か罵声だった。


俺は黙っているしかなかった。


大きな物音がした。


今度は、荷物を俺の車にたたきつけたのだ。


「足が滑って、荷物があんたの車にぶつかったから」


車を見ると、大きな傷とくぼみが出来ていた。


車を見て、部屋にはいると、妻が罵声を浴びせてくる。


「あんたは車のほうが大切なのよね」




もうよしてくれ。


もうたくさんだ。






台所にある包丁を手に取った。


刃を指の腹に当てる。


そのまま、思い切り引いてみた。





皮一枚切れただけで、出血はしなかった。