日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -184ページ目

金がないという怒号~CMを観るとお金が貯まる?

日々、妻から侮蔑の言葉を並び立てられる。





こんな給料じゃやっていけない。

金がない。金がない。金がない。





バイトもしているが、たいして稼ぐことは出来ない。

それでも、時間は拘束される。

バイトなどの副業で、稼ぐことには無理があった。

所詮、時間を切り売りしているからだ。

本業があるから、切り売りできる時間も、当然少ないのだ。


ネット副業。


それならば、時間の制約は受けないのではないか?

いろいろと調べてみると、アフィリエイトやポイント課金制のものなど多岐にわたっていた。

しかしながら、到底、生活費の足しになりうるほどの額を稼ぎ出せそうになかった。

それでも、やらないよりはましだった。

少しでも収入は増やしたかった。

そんな中で、おもしろいサービスを見つけた。

ネットでCMを観るとポイントが加算されるというものだ。








アフィリエイトや、その他ポイントサービスは、主に商品決済によってある一定の報酬が得られるようだ。

クリックのみでは、報酬額は微々たるものである。

このCMサイトは最初から「宣伝」に対しての報酬を主体にしている。

TVを全く観ない俺は、ネットでニュースなども読んでいる。

そんな俺にはぴったりのサービスなのかもしれない。

実際に観てみると、アニメで構成されたショートストーリースタイルで広告が展開されていく。

退屈することなく、楽しんで見ることができた。








出来れば、消えてしまいたい。

深夜4時。バイトが終わり風呂に浸かった。


体が温まり、いつの間にか、うとうととし始めたとき妻の足音が聞こえてきた。


ドア越しに、辛辣な言葉が並べ立てられ、俺は衝撃とともにそれを無言で聞いていた。




金がない。


それでも私は、日銭を稼ぎになんかいかない。


私をだまし続けたのはあんただ。


だから、あんたがどうなろうと、かまわない。


私は私のこれからの生活だけを考える。


住宅ローンが払えなくても、私には一切関係ないから。




別れを告げられているのだ。


そう思った。


それならそれで良かった。


納得できないのは、そこまで言いながら、今この瞬間も、俺の費えで生活し、それでも俺を侮辱し続けるところだった。



妻は、俺につばを吐きながら、それでも俺と生活をしている。


それは天に向かって唾を吐くのと一緒だ。




どこをどう改善しようとも、こんな心根の妻と上手くやっていくことなど出来はしないだろう。





妻の考えはこうだった。


しかるべき手段を持ってキャリア構築し、自立する。


それが叶えば、別れる。


自己啓発のため、日銭を稼ぎに行く時間などあるわけがないと言っているのだった。



俺との未来など、最初から想定していないのだ。




もう、ごめんだ。


早く終わりにしたい。





娘が起床し、妻との楽しそうな談笑が聞こえてきた。



肺腑が萎縮し痛む。



憔悴。


諦め。




俺はこのまま、消えてしまいたかった。


こころのない人間と、心のない人形

いきなり戸が開け放たれ、罵声が浴びせられた。


「あなたは、こんな暗い時間に、私に外に出ろというわけ。それでも、男なの」


何のことかわからなかった。


「あんた、入れてきてよね。でないと、勉強できないから」


そこで、やっと意味が飲み込めた。


ファンヒーターに給油しろと言っているのだった。



時計を見ると、午前五時だった。



妻はまだ何か喚き続けていたが、何を言っているのかよく聞き取れなかった。


布団から這い出しても、罵りは続いていた。


玄関へ向かう途中に、ドアを一枚通る。


そのときだけ、妻の言っていることがはっきりと耳に入った。




大きな音を立てるな。娘が起きるだろう、と。




他者に何かをお願いする。



それがたとえ家族であっても、妻の物言いはそれではなかった。


間違っているとは思っても、妻に対して何か言う気にはなれなかった。



心のないものに、何を言っても無駄だからだ。



妻も、俺に心があるなどとは、考えていないだろう。


もしそう思うならば、ここまで言うこともないだろうと思う。




何でも黙って言うことを聞く奴隷。人形。




タンクに給油し、ファンヒーターを起動する。


妻は何も言わずテーブルに着き、口元を歪めている。


俺は妻に視線を向けることもなく、自室に入り布団に潜り込んだ。


足先が冷えて、微かに痛んだ。


妻の姿が脳裏に浮かび、憤怒が沸きあがってくる。


それを何とか外へ押しやった。


ひとつため息をつき、目を閉じた。


明けていても閉じていても、真っ暗だ。



そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。