金がないという怒号~CMを観るとお金が貯まる?
こんな給料じゃやっていけない。
金がない。金がない。金がない。
バイトもしているが、たいして稼ぐことは出来ない。
それでも、時間は拘束される。
バイトなどの副業で、稼ぐことには無理があった。
所詮、時間を切り売りしているからだ。
本業があるから、切り売りできる時間も、当然少ないのだ。
ネット副業。
それならば、時間の制約は受けないのではないか?
いろいろと調べてみると、アフィリエイトやポイント課金制のものなど多岐にわたっていた。
しかしながら、到底、生活費の足しになりうるほどの額を稼ぎ出せそうになかった。
それでも、やらないよりはましだった。
少しでも収入は増やしたかった。
そんな中で、おもしろいサービスを見つけた。
ネットでCMを観るとポイントが加算されるというものだ。

アフィリエイトや、その他ポイントサービスは、主に商品決済によってある一定の報酬が得られるようだ。
クリックのみでは、報酬額は微々たるものである。
このCMサイトは最初から「宣伝」に対しての報酬を主体にしている。
TVを全く観ない俺は、ネットでニュースなども読んでいる。
そんな俺にはぴったりのサービスなのかもしれない。
実際に観てみると、アニメで構成されたショートストーリースタイルで広告が展開されていく。
退屈することなく、楽しんで見ることができた。

出来れば、消えてしまいたい。
深夜4時。バイトが終わり風呂に浸かった。
体が温まり、いつの間にか、うとうととし始めたとき妻の足音が聞こえてきた。
ドア越しに、辛辣な言葉が並べ立てられ、俺は衝撃とともにそれを無言で聞いていた。
金がない。
それでも私は、日銭を稼ぎになんかいかない。
私をだまし続けたのはあんただ。
だから、あんたがどうなろうと、かまわない。
私は私のこれからの生活だけを考える。
住宅ローンが払えなくても、私には一切関係ないから。
別れを告げられているのだ。
そう思った。
それならそれで良かった。
納得できないのは、そこまで言いながら、今この瞬間も、俺の費えで生活し、それでも俺を侮辱し続けるところだった。
妻は、俺につばを吐きながら、それでも俺と生活をしている。
それは天に向かって唾を吐くのと一緒だ。
どこをどう改善しようとも、こんな心根の妻と上手くやっていくことなど出来はしないだろう。
妻の考えはこうだった。
しかるべき手段を持ってキャリア構築し、自立する。
それが叶えば、別れる。
自己啓発のため、日銭を稼ぎに行く時間などあるわけがないと言っているのだった。
俺との未来など、最初から想定していないのだ。
もう、ごめんだ。
早く終わりにしたい。
娘が起床し、妻との楽しそうな談笑が聞こえてきた。
肺腑が萎縮し痛む。
憔悴。
諦め。
俺はこのまま、消えてしまいたかった。
こころのない人間と、心のない人形
いきなり戸が開け放たれ、罵声が浴びせられた。
「あなたは、こんな暗い時間に、私に外に出ろというわけ。それでも、男なの」
何のことかわからなかった。
「あんた、入れてきてよね。でないと、勉強できないから」
そこで、やっと意味が飲み込めた。
ファンヒーターに給油しろと言っているのだった。
時計を見ると、午前五時だった。
妻はまだ何か喚き続けていたが、何を言っているのかよく聞き取れなかった。
布団から這い出しても、罵りは続いていた。
玄関へ向かう途中に、ドアを一枚通る。
そのときだけ、妻の言っていることがはっきりと耳に入った。
大きな音を立てるな。娘が起きるだろう、と。
他者に何かをお願いする。
それがたとえ家族であっても、妻の物言いはそれではなかった。
間違っているとは思っても、妻に対して何か言う気にはなれなかった。
心のないものに、何を言っても無駄だからだ。
妻も、俺に心があるなどとは、考えていないだろう。
もしそう思うならば、ここまで言うこともないだろうと思う。
何でも黙って言うことを聞く奴隷。人形。
タンクに給油し、ファンヒーターを起動する。
妻は何も言わずテーブルに着き、口元を歪めている。
俺は妻に視線を向けることもなく、自室に入り布団に潜り込んだ。
足先が冷えて、微かに痛んだ。
妻の姿が脳裏に浮かび、憤怒が沸きあがってくる。
それを何とか外へ押しやった。
ひとつため息をつき、目を閉じた。
明けていても閉じていても、真っ暗だ。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。