疲労困憊コンパニオンガール
それはめまいから始まった。
日中、一度めまいに襲われ、すぐに収まった。
なんのことはなく、一日は過ぎ去ろうとしていた。
ところが、家に向かう途中、ひどい頭痛に襲われた。
右目の横、こめかみから内部をえぐり取られるようだった。
全てのやる気を削ぐ、強烈な痛み。
痛みのせいか、狂おしいほどの食欲も、失せた。
とにかく休もう。
休息が必要だ。
どのみち、食い物らしい食い物は、なにもなかった。
布団にもぐりこんで、まどろんだ。
眠ることが出来ずに、意識がいろいろなところに彷徨った。
過去。
現在。
それなりに楽しいことを想像しようとした。
不意に、妙な言葉が脳裏に過ぎる。
疲労困憊コンパニオンガール。
遠い過去に、どこかで誰かが言っていた。
それが何故今になって?
のんきなものだった。
翌日の出来事など、なにひとつ想像だにできないままに。
次回に続く
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エアー牛丼
俺はいつもカップラーメンや、握り飯一つの昼食だった。
見かねた職場のおばちゃんが、俺にあるものをくれた。
牛丼300円券だった。
俺はうれしくてたまらなかった。
しかし、牛丼券の有効期限は今月いっぱいだった。
そして、財布の中は、空っぽだった。
どんなに安い牛丼でも、300円では食えないのだ。
俺は恥も外聞もなく、即座に、俺の娘の母親にメールを入れた。
~申し訳ないのですが、50円でも100円でもかまいませんから、お金をください。有効期限切れ間近の商品券で、ほんの僅か、お金が足りません~
帰宅するとテーブルの上にコインは無かった。
俺は残り物を冷蔵庫から掘り出し、飯を食った。
そして、泥のように眠った。
早朝5時に、俺の娘の母親が、悪意の固まりとなって俺の部屋へなだれ込んできた。
「いったいいつになったら、バイトを始めるわけ!本当にお金がないんだって!!」
「……」
俺は一瞬遅れて、言葉を発した。
恐怖のせいか、やたらと甲高い声だった。
「しょ、書類が郵送されてくるから、返送し、それから働くことになる、よ」
「またそうやって!いったいいつまでそうやって遊んでるわけ!全てお金は母が出しているのよ!」
「……???」
もう、声は出なかった。
何も言わない俺に愛想をつかして、悪意の固まりは部屋を出て行った。
中途半端な時間にたたき起こされて、俺はきちんと睡眠がとれなかった。
起き出すと、義母と娘がTVを見ていた。
俺は生卵で飯をかき込み、握り飯を一つ握ると、居間へ入った。
「お義母さん。これで○○(俺の娘の名前)と一緒に牛丼でも食べに行ってください。今日で期限切れなんです」
義母が牛丼を喜んで食うとは思えなかったが、俺の娘の母親に券をやるよりは、幾分ましだった。
暗澹たる気分のまま、職場に着いた。
券を、俺に譲ってくれたおばちゃんがいた。
「ねえ、牛丼食べた?」
俺は一瞬口ごもったが、精一杯の笑顔でこう答えた。
「はい!すごく旨かったですよ。やっぱり○○の牛丼は最高ですね。ほんとありがとうございました」
「あら、そう」
「つゆが違いますよね。それに肉もアメリカ産だし。キングオブ牛丼ですわ」
俺は一度も喰ったことがない牛丼を褒めちぎり、賞賛し続けた。
不思議なことに、微かに牛丼の香りがして、俺の鼻腔を刺激した。
エアー牛丼。
俺は幻の牛丼を食っていた。
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詩 「言葉は武器だ」
思考は物質化する?
本当かもしれないけれど。
想念だけで、一億円が一瞬のうちに目の前に現れるはずはないよね。
しかし、失望してはいけない。
僕たちには、思考より、もっと強力な武器があるのだから。
それは言葉だ。
言葉は恐ろしいほどの力を持って、人を傷つけたり、勇気づけたり出来るのだ。
あなたはすばらしいと、愛する人に毎日言い続けたら?
きっとすばらしいパートナーになるだろう。
あんたなんか、生きる価値もないなどと、妻や夫に言い続けたら?
きっと、ズタズタに引き裂かれ、傷つき、痛めつけられ、最後には死んでしまうことだろう。
頭の中で誰かを何年も憎み続けたとしても。
わら人形に何週間、何ヶ月と釘を打ち込んだとしても。
相手に向かって、罵り、喚き、罵倒する言葉には到底かなうものではない。
そう。
言葉は刃物どころではなく、一瞬にして人の精神状態を変えてしまう、とてつもなく強力な兵器なのだ。
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