日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -144ページ目

くそったれ!バイト探し 3.0 Salvation 後編

くそったれ!バイト探し 3.0 Salvation 前編 よりの続き



面接官は、例の如く、経歴など気にもしていなかった。


履歴書にざっと目を通して、現在の仕事について2,3質問をしてきただけだ。



俺が応募した時間帯は早朝で、その時間帯のみ、ダブルワークの人材を採用するという。



昼間働いて、深夜アルバイトをする。



それは過酷で、無理だというのが、採用側の考えらしかった。



早朝の時間帯は、深夜より短かった。



いろいろ話を進めているうちに、雇用側と俺とのニーズは合っていた。


面接官は最後に、俺にこういった。


「山南さんには、是非お願いしたいと思います」


俺はほっとした。


しかし、喜びはなかった。


この先、4,5時間の睡眠以外は、飯を食っているか働いているかの生活が待っているのだった。


それでも、バイトを始めて、収入が増えれば、小遣いがもらえるかもしれない。



そして、酒が買える。



希望はそれだけだった。




俺の後は、ジグソウだった。


ジグソウは深夜の時間帯らしい。


この仕事一本やりなので、ジグソウの方も問題は無いようだった。


ただ、ジグソウに対しては、面接官はお願いしたいとは言わなかった。




面接を終えると、適性試験だった。


用紙が1枚配られた。


裏側が問題らしい。


試験が始まるまで、見るなと言うことなのだろう。



面接官がテーブルの上にある映像機器のスイッチを入れた。


すぐに、目の前にあるテレビに、適性試験の手順が流れ始めた。


俺とジグソウは、まるで時代遅れの映像を真剣に、そしてやる気を見せつつ眺めていた。



試験の説明を聞きながら俺は嫌な予感がした。



簡単な足し算だった。



それだけなのか?



小学生でも出来る、一桁の足し算だった。


そして、用紙をひっくり返すと、俺とジグソウは唖然とした。


数字が用紙一杯に、列をなしていた。


ジグソウは動揺したのか、面接官に方法など、細かいことをいくつか質問した。



俺は即座に、この適性試験の趣旨を理解した。


単純な作業を、どれだけ正確に、根気よくこなせるか、調べるのだ。


つまりは、この用紙に列をなす数字分だけ、足し算をし続けなくてはならないのだろう。



しばらくすると、テレビ画面がスタートといった。


俺とジグソウは足し算を始めた。


一行の3分の1くらいまで、計算をこなしたところで、止め、とテレビが言った。


次の行だった。


テレビはスタートと言い、止めといった。


僅かに、2行目の方が、短かった。


俺とジグソウは、それを30分間、やり続けた。



殆ど拷問だった。



試験が終わると、ジグソウは肩を落としていた。


「俺、試験だめだったなあ」


「俺もですよ」


俺たちは、部屋を後にした。



外に出ると、ジグソウは俺に、車はどこに止めたんですかと、聞いてきた。


俺はここだと答えるとジグソウは、この先のパチンコ屋に止めたのだと言った。


ジグソウが何か言いたげな表情で、俺の方を見ていた。


肩を落としているジグソウに、俺はなんて言っていいかわからなかった。



そして、背中を向きかけたジグソウに俺は話しかけた。


ジグソウは、俺の方へ振り返った。


「時間帯は違うけれど、もし採用されたら、きっとまた逢うんじゃないでしょうか。ここで。その時はよろしくお願いします」



ジグソウは微笑み、別れの言葉とともにぺこりと頭を下げた。




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くそったれ!バイト探し 3.0 Salvation 前編

今度の面接は、食肉加工のアルバイトだった。


面接を受けるため、建物に乗り込もうとしたとき、いきなり声をかけられた。



「○○のアルバイトの面接に来たんですが、どこからはいるんでしょう?」



おっさんだった。



悲壮な表情。


希望をなくした瞳。



明らかに痛めつけられ、身も心もぼろぼろといった感じだった。


俺はそのおっさんに何故かむかついていた。


おっさんの中に、自分を見てしまったのだろうか?


俺は少し残酷な気分になっていた。



「俺も初めて来たので、知らないですよ」



そう言いながら、俺はまっすぐに建物の入り口へ向かった。


おっさんは俺の後を追い、結局は一緒に建物に入った。


俺は自分の言動を恥じていた。


こちらから話しかけ、おっさんに、俺もバイトの面接だと言った。




部屋に案内されて、おっさんと隣同士に座った。


面接を受ける者は、俺とおっさんだけのようだった。


そして、またすこし話した。



おっさんは今失業中で、職探しが難航しているという。


年齢のせいだと、本人は言っていた。


正規雇用は難しいので、バイトで食いつないでいるらしかった。



「なんか、いいバイトないですかね」



これから面接だというのに、おっさんは弱気だった。



俺はある会社の名前を、おっさんに教えた。


フルタイムで働けるおっさんにはぴったりのアルバイトだと思えたからだ。


それに、おっさんが気にしていた年齢のハンデもそれほど無いはずだった。


おっさんは、その横文字の社名を聞き取れなかったらしく、一度聞き直し、それから復唱した。


もう一度、きちんと教えてやろうと思っているとき、面接官が現れた。




部屋の壁は、白いタイルで覆われていて、まるで映画「ソウ」の監禁部屋だった。



そう言えば……。



となりのおっさんはどことなく「ジグソウ」に似ていた。




俺は食肉加工の仕事を、少し想像してみた。




血だらけのビニール製のエプロンを掛けた俺。


バカでかい牛刀を握り、吊された豚や牛をぶった切る。



反対側のラインでは、俺の2倍以上の早さで肉をぶった切り、2倍血で汚れたエプロンを掛けている男がいた。


男は肉をさばき終えると、ラードや牛脂や血で汚れた刃先を口元へ持ってきて、ぺろりとなめた。


口元が不気味にゆがんでいる。


微笑んでいるのだ。



そいつは、ジグソウだった。





面接官は俺たちを見比べ、俺から面接を開始した。


ジグソウは黙って俺を見つめていた。




次回~くそったれ!バイト探し 3.0 Salvation 後編へ




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休日の午後

一文無しを優しく迎え入れてくれるところは、他になかった。


図書館。


平日はとても空いていた。


それでも、人はそれなりにいた。


老人。


主婦。


学生。



そして。



ひどく浮かない顔をし、あきらめきった男がいれば、そいつはほぼ間違いなく失業者だった。



俺も、周りから観ればそう見えるに違いない。



書棚を物色していたら、疲れ切った男が椅子にもたれかかって俺を見ていた。


失業者に違いなかった。


俺を、同じ仲間だと決めつけているのだろうか。


いきなり手が伸びてきて、俺の目の前の本を抜き取った。


俺は唖然として、男を見た。


男は本を開き、読み始めた。


俺は書棚に目を戻した。


すると男は、俺を押しのけるようにして、今度は本を書棚に戻した。


俺が睨むと、男はどこかへ消えた。




一度映像資料を観覧し(映画)時間をつぶした。



それから、休憩室のような場所で、持参した握り飯を食った。



いつも、一日中空腹だった。



それは仕事を持った(俺は一応は働いてはいる)人間の、その状況ではなかった。



肉が食いたかった。


刺身が食いたかった。


酒が飲みたかった。



そして。



何でもいいから、三食きっちりと、腹一杯飯が食いたかった。



俺は一日中、本を読んで、疲れたら休むことを繰り返した。



隣の席に、またおかしなやつがやってきた。



何かを読みながら、椅子に座ったまま、足を上げたり降ろしたりしている。


決まった回数を終えると、フーッと唸った。


俺は読書に集中できなかった。


視界の端に、足を上下する男の姿が見え、動きが終わるとフーッだった。


男の方を盗み見ると、男の脇に大きめの手帳が広がっていた。


ビジネスマンが使うダイヤリーで、5月の予定は何も入っていなかった。


それなのに、何故か欄外の一番上に「カオス」とだけ書かれていた。



俺はそいつよりも大きなため息をついた。




夜。



暗くなってから自宅へ戻った。


家の灯りを見ると、俺は中にはいることが出来なかった。


時々、俺の娘の母親と、娘の話し声が聞こえた。


俺はガレージの車の中で、家の灯りが消えるのを待つことにした。



疲労。


体がとんでもなくだるかった。



気がつくと眠ってしまい、目覚めたときには灯りは消えていた。



空腹は、限度を超えると、空腹ですら無くなる。




腹は減っていなかった。



キッチンには飯があった。



それほど喰いたくはなかったが、食い始めるとガツガツと平らげてしまった。




酒はなかった。



そして。




眠れなかった。





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