日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -145ページ目

休日の朝

※用語説明・・・山南零(俺)の妻=悪意の塊=俺の娘の母親




休日だった。


しかし、ゆっくりと寝ていることは許されなかった。




早朝に、鍋やフライパン、食器棚の扉が閉まる音で、俺は目を覚ました。


ひどく乱暴に扱っていることが、音でわかった。


わざと、物音を立てているらしかった。



俺はもう寝ることは出来なかった。



そのまま布団で、じっとしていた。


いつ「悪意の塊」が部屋に押し入ってくるのか、恐怖で顔がゆがんだ。



相変わらず、左肘からの痛みが腕全体に広がっていた。


時々、背中にも違和感を感じた。




起き上がって、窓の外を眺めていた。



窓から手を伸ばせばすぐ隣の家だった。


かろうじて光が差し込んでいるだけで、景色など見えるはずもなかった。



外は晴れている。


ただ、それがわかっただけだった。



腕の痛みが和らぐと、俺は布団から抜け出した。



キッチンでおかずを探したが、思ったとおり、何もなかった。




幸いなことに、飯が炊けていた。



俺はフライパンを暖め、卵をひとつ割りいれると、手早くかき混ぜた。


牛乳を加え、さらにかき混ぜて、火を止めた。


そのまま、フライパンにケチャップをふりかけ、立ったまま、キッチンで朝飯を済ませた。



「悪意の塊」の気配は、居間から伝わってきた。



怒鳴り散らされる気配もなかった。



フライパンと茶碗を洗って、洗面所へ向かった。


88円の歯磨き粉を、何とか搾り出し、歯を磨いた。



窓が開け放たれている。


風が心地よかった。



窓の外で、赤いものが揺れていた。



小さな薔薇だった。



もう一度キッチンへ戻って、握り飯を一個握った。


ペットボトルに水道の水を入れて、俺は家を出た。




金は一銭も持っていなかった。


行く所はひとつしかなかった。






ハンドルを握っているときに、先日読んだ短編が、急に脳裏によみがえってきた。




~女性はあらたなカモが手近に来ないうちは、現在のカモからは遠ざかることはめったにない~


出典~チャールズ・ブコウスキー著 ホットウォーターミュージックより




次回 休日の午後へ続く




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俺の一日~昼飯、そして夕飯

家を出るとスーパーへ向かった。


すでに金は無く、カップラーメンすら買えなかった。



それでも、腹は減った。



仕方なく、カードで買うことにした。



いつものように、88円のカップラーメンを選んだ。


俺はかごに、そいつを放り込むとレジへ向かった。



朝っぱらから、レジは行列だった。



少しでも早く会計をすまそうと、おばちゃんたちは首を亀のように伸ばし、隙あらば早そうな列へと移動した。


俺はどうでもよかった。


全てのおばちゃんは、うかない顔だった。


特に、俺の後ろのおばちゃんはひどかった。


狂気じみた視線で、レジを見回している。



やたらと俺に近かった。



早くしろと言うことなのだろう。


明らかに、不快な半径に進入していた。


俺が視線を向けると、おばちゃんは遠くへ視線を逸らし、目を合わすことはなかった。


そして、さらに接近した。


会計を済ませ、スーパーを後にするとき初めて、もの悲しげなBGMに気がついた。


その曲は、俺をひどく感傷的な気分にさせた。


なんだか泣きたくなってきた。


The Snowman  Walking In The Air.






午前の仕事を終えて、昼飯を食って、また午後になって仕事を続けた。



やたらと体がだるかった。


肘の痛みが、肩まで広がっているような気がした。


何故だろう?


俺はただ、早く仕事が終わることだけを考えていた。





帰宅時間になった。



少しばかりの安堵。


俺は車に乗って、帰路についた。



その時間が唯一、誰にもじゃまされることのない時間だった。



しかし、灯りのついている自宅が目にはいると、そのままどこかへ消えたくなった。



なんとか思いとどまり、玄関を開けた。




キッチンに飯は無かった。




代わりに、カップラーメンが一つ、無造作に置かれていた。




俺はそのまま、自室へ入り、布団へ潜り込んだ。







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二日目の焼き魚

キッチンに焼き魚が二つ置いてあった。


一つは食いかけで、娘の残したものらしく、もう一つは誰のものかわからなかった。


その日、俺は焼きめしを作って食った。



翌日も、魚は置きっぱなしだった。



俺は喰うことにした。


箸をつけると、裏側が黒焦げだった。


気にせずに喰った。



俺の娘の母親に、会社から頼まれた書類に署名を頼むと、お決まりの罵声だった。


幼稚園の引き落としが出来ない。


いつになったら、バイトをするのか。


私がどれだけ大変な思いをして講座に通っているのかあんたはわかっているのか。


普通の男は、朝から晩まで働いている、それが当たり前…



そこまでおとなしく聞いていたが、俺はたまらず、書類を残したまま踵を返した。



深夜、夢を観ていた。


夢の中で腹痛のため便所に駆け込んだ。


そこで目が覚めた。



目が覚めても、ひどい腹痛だった。



唸りながら便所で用を足した。




腕が痛み、腹も痛い。



眠れなかった。



朝、「悪意の固まり」が部屋の入り口に立っていた。



「今日中にお金、振り込んでおいてよね!」



悪意の固まりは家を出て、講座に向かった。







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