ようこそ監獄へ~囚人Aからの手記
2009年×月×日。
俺は目を覚ました。
仕事もバイトも休みだった。
何時間眠ったのか。
多量の睡眠のおかげか、うれしいことに、頭痛が大分やわらいでいた。
居間のほうから、微かな人の気配を感じた。
俺の娘の母親だった。
昨晩も、休み前の晩だと言うのに、モデムの前に陣取り深夜まで一歩たりとも動かなかった。
俺のネットINはかなわなかった。
天井を見つめていると、いろいろな雑用が、頭の中を支配してゆく。
溜まった洗濯物。
散らかった部屋の掃除。
朝飯。
昼飯。
夕飯。
読みたい本。
飲みたい酒。
それから……
布団から這い出し、飯を作り、食った。
顔を洗って歯を磨いた。
洗面所の、囚人用タオルは、もう一月以上掛かったままだった。
もう家には居られなかった。
俺は家を出た。
図書館に向かう。
読み終わった本を返し、また借りた。
ほっとした心持で、図書館で本を読んだ。
そして、すぐに憂鬱になった。
12時間後には、バイトが待っている。
バイト。
仕事。
監獄。
トライアングルを回るだけの生活。
ようこそ監獄へ。
もっとも、監獄の方がマシだろう。
健康的な食事が保障され、読みたい新聞も読める、らしい。(本は読めるのかな?)
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斜陽
またか、と思った。
俺の古い友だち。
偏頭痛がやってきた。
右眼穿の奥が抉られるような痛みだった。
昨晩は、無駄な時間を節約し、なんと!五時間近く寝ることが出来た。
しかし、頭痛は消えなかった。
バイトを終えて、仕事に出掛けた。
駐車場に着いて、俺は車の中で十五分寝た。
それから、何とか仕事をこなしているうちに、昼になった。
抉るような痛みは、何かで右顔面を押さえつけられるような鈍痛にかわっていた。
痛みで仮眠をとる気分にもなれず、俺は本を読む事にした。
バッグの中のハードカバーは、とっくに読み終わっていた。
図書館で借りたやつだ。
ボロバッグの中をもう一度よく見ると、一冊の文庫本が奥に埋まっていた。
太宰治の斜陽だった。
なぜ、こんなものを?
ページをめくると、カバーの端っこに、頬杖をついて、恐ろしく陰鬱な表情の、作者の写真が目に入ってきた。
その顔は、どう見ても、死にたがっていた。
読み始めた。
何ページ位まで、読み進んだのか?
いつのまにやら。
俺はデスクに突っ伏したまま、眠っていた。
目が醒めて時計に目をやると、休み時間は残り五分を切っていた。
立ち上がり、鏡に写る自分の面を見た。
右目が、偏頭痛のせいだろうか、垂れ下がっている。
太宰治に負けず劣らず、俺の面も、陰惨極まりなかった。
それでも……
俺はまだ、死にたがってはいなかった。
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詩 「俺の24時間」 訂正版
労働の為の移動時間(2.5時間)
飯やら、洗濯やら、歯磨きやら、風呂やら、着替えやら、その他無駄な時間(4時間)
睡眠時間(3時間)
俺の唯一出来る事は、「その他無駄な時間」を可能な限り削り、寝る時間にまわす事だった。
そんなある日、俺の娘の母親が、俺に言った。
「毎日一時間くらいなら、将来のための勉強に時間割けるはずよ!パソコンなんてやってる場合じゃないんだから!」
そして俺は、布団に潜り込んだ。


