日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -118ページ目

詩 「君と星空」


まったく違う世界に君はいた。



家族も。


住む場所も。


働くところも。



そして、君のまわりは愛で溢れていた。



僕は泥の中に首まで浸かって、身動きが取れなかった。



憎しみ。


蔑み。


暴力。



それは、僕をズタズタにして、最後は殺されるに違いなかった。



僕らの接点は、データ化された言葉だった。



遠くにいる、君。



それは近くにいる、あいつよりも暖かで、やさしかった。




今夜は、星が綺麗だった。



きっと、君は星空を眺めているはずだった。


僕も、この星を眺めよう。




僕と君は、同じ星を眺めている。



どんなに離れていても、同じものを眺めている。





なんてことだ。




どんなに近くにいようとも、別のものを見ているアイツなんて……。






日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。


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闇の中で~蠢くもの

焚き火を眺めていた。


時々、棒で突っついたりして世話をする。



闇の中でゆれる炎。


俺は時々、酒をなめた。



焚き火は、いつまで眺めていても、飽きることがなかった。



空を見上げると、大気が澄んでいるせいなのか、恐ろしいくらいの星で埋め尽くされている。



本を読んでやろうという気すら、起きなかった。



娘も、その母親も、すでにテントの中だった。




この場所に来るまでに、散々な目にあった。


俺の娘の母親はずっと不機嫌で、金がない!金がない!と車中で連呼し続けた。



すべてを投げ出し、路肩に車をとめ、降りようとも考えた。


しかし、それは出来なかった。


俺は我慢するしかなかった。



はっとして、焚き火から視線を外し、闇の方を見やる。



突然、闇の中に白いものが現れた。


少しは離れたところから、こちらを見ている。




猫だった。




この闇の中にいるのは、俺と猫だけでお互いに睨み合うというかっこうだった。



「こっちへおいで」



俺は猫に語りかけてみた。


猾介な視線だったが、おれはその猫が嫌いではなかった。



「お前はひとりかい?」



猫の首が微かに、傾げたように見えた。


その直後、猫は音もなく闇の中へ消えてしまった。



猫はこんな夜中に、何をしていたのだろうか?



帰る巣はあるのだろうか?


家族は?


子は?



テントの周りも、焚き火以外は、静寂が辺りを支配している。




明日は朝早く起きて、娘と海を見に行こう。


俺はそんなことを考え、焚き火を離れ、テントへ向かった。





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闇の中で~死んでいったもの

闇。


開け放たれた窓から、微かに青白い光が差し込んでいる。



俺は闇の中で、酒を飲んでいた。


ただ、酔いたかった。


3杯目の水割りを飲む頃には、眼が闇になれ、


カーテンが風で揺れているのがはっきりとわかった。



ひきっぱなしの布団。


脱ぎ捨てられた服の山。


物干しに、つり下げられた洗濯物。



着るものがなくなると、夜中に洗い、部屋の中に干す。


朝、生乾きの服を、そのまま着て会社へ行った。



今夜も、なんとか酔えそうだとおもっていると、車の音が聞こえた。



娘と、その母親が帰宅したのだ。



居間の電気を付け、俺は窓越しに、様子をうかがった。


どうやら、俺に気付いたようで、娘の母親がいつもの決まり文句を口にする。



「とっても、疲れたから!」



家に上がると、俺の娘の母親は、娘に飯を作るようだった。


乱暴に冷蔵庫を開け閉めし、食器棚も同じように音を立てている。


俺は扉越しに、その様子を見つめていた。


俺の視線を感じていることは、明らかだった。


それと知って、俺の娘の母親は、信じられない行動に出た。



皿を2枚取り出すと、それをシンクに叩き付けて割ってしまった。


俺は部屋に戻り、扉を閉めた。


残りの水割りを、一気に飲み干す。


もう一杯飲みたかったが、キッチンへは行けなかった。


仕方なく、ストレートをちびちびとやって、やり過ごそうと考えた。


どうやってか(皿をぶち割ってしまったのに)娘の食事を作ったようだった。


俺の娘の母親が、居間に行っている間に、キッチンへ行きもう一杯、水割りを作った。


しばらくの間、居間の様子をうかがっていた。


娘が寝室へ行く。


それから、足音がこちらへ近づいてきた。


扉の向こう側で、それは止まった。


怒鳴り声で、扉が振動する。



「あれは母が買ってくれた発泡酒よ!あんたの金で買った酒なんて一つもないから!!」



何故、皿が2枚も割られなければならなかったか。


俺はそのとき理解した。



水割りを飲む前に、冷蔵庫の中にあった発泡酒を発見し、飲んでしまったのだった。



水割りを飲み干す。


それでも、酔いは吹っ飛んでしまったままだ。



不意に雨音が聞こえた。



徐々に大きくなってくる。



数分か。


それとも、数十分か。



雨音に耳を傾けた後、俺は布団へ横になった。