日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -10ページ目

朝一番に、つぶやくひとこと

ヤバいことになってきた。

金がないのだ。

失業保険をもらいながら、

職業訓練を受けることが、

どうやら可能となった。


ひたすらその連絡を待っていた訳だが、


支払いが、失業保険給付日の前で、

金を払えなくなる状態にあった。


ひとりきりなので、

自炊し、


風呂も、

三日に一回とか、

四日に一回とか、

週に一回とか。


節約する部分は限られていた。

今やほとんど金を使っていない生活だった。


食料がなくなると買いにいく。


そんな生活だった。



その朝、ぼくは奇妙な夢を見た。

父や母が出てきて、

さらには見知らぬ女性も出てきて、

その女性と、

良い案配になるという、

いわゆる願望充足な夢だった。

どれだけ鬱積してるんだよ、俺。

そう自問せざるにはおえなかった。

ただ、

すこし奇妙なことは、

三度立て続けに、夢の続きを観たということだった。

その女性との関係性が、

徐々に上がってゆく。

お決まりの、

最もクライマックスなところのちょい手前で目覚めるという。

まったっくもう。

なんてこと。


こんなこともあるのかな。


連ドラじゃないんだから。


僕は夢に浮かされた気分を鎮めるために、

朝風呂に入った。


足先が冷えていて、

暖まるまでかなりの時間を要した。

磨りガラス越しの日差しが眩しかった。


僕は、今朝見た夢を反芻する。


何故か、登場人物は違えど、最近見る夢の舞台は同じだった。


子供の頃住んでいた借家。


父と母と僕が、

僅かな期間だが一緒に過ごした場所。


今住んでいる家も、

そんな昔を思い起こさせるような、

古い住宅だったが、

当然ながら、よい想い出なんてなかった。


ぼんやりとしながら湯につかっていると、

壁のタイルに、小さな虫が張り付いていた。

近づいてよく観てみると、

それは、

米粒大のナメクジだった。


洗面器に湯をすくって、ナメクジにかけた。

少しだけ縮んだが、しっかりと張り付いている。

今度は勢いよく湯を浴びせたら、

あっけなくはがれ落ち、排水溝に消えていった。


こんなちいさな虫も、

命にはかわりないのだな。


僕は、ナメクジを洗い流したことに、


少しだけ後悔した。


多分、

下水の中で、

元気にやっていくだろうと、

都合良く考えながら。


僕は風呂から上がり、

服を着替えて、疲れきった顔を鏡で見た。

昔と、

子供の頃と何一つ変わってはいなかった。

特に、

精神的には。


僕は大きく息を吸い、ゆっくり吐き出してから、

言葉を発していた。

思わず出てしまった、というような感じで。



「さあ、生きるか」


その日初めて口から出た言葉だった。



眠れない夜に、音楽を

深夜1時過ぎに目覚めてしまった。

それもそのはずだ。

21時に寝たのだから。


やることがないので、早く寝る。


これが失業者というものだ。


目覚めてしまった後、眠れなかった。


見たい映画もないし、

また、レンタルする金もなかった。


仕方ないので、

iTunesを開き、

バラバラになった音楽ファイルを、

アルバムごとにまとめたり。


そんなことをしながら、

iTunesストアをみながらブラウズしてゆくと、

オウテカ(Autechre)にたどり着いた。

ぼくはかれらのアルバムを所有しているが、

ぼくの持っているものは2000年以降のもので、

彼らの傑作と言われているものを知らなかった。

新作にまつわる日本語でのレビューを読んで、

今さっき知った。

LP5というアルバムだ。




すぐに視聴してみると、


ぼくは驚いた。

最高だった。


今すぐにダウンロードしたいが、

金がなかった。


ぼくは仕方なく、何度も試聴しつづけ、

そして飢餓感を募らせるだけだった。



なんてこった。


Rae /Autechre

¥150
iTunes
※モバイル非対応

Autechre Lp 5/Autechre

¥1,348
Amazon.co.jp

謎のレシピ

財布に二千円。

飯につぎ込むことに決めた。


それは、

チリパウダーを大量に使用するスープで、

ある大衆ステーキ屋で食べられる、

ぼくが大好きなメニューの一つだった。


あれを家で作ったらどんなもんか?


そんなことを考えるのはぼくだけではなかったようで、

ぐぐると、すぐにブログが出てきてレシピも確認できた。

胆は、チリパウダーと酢のようだとなんとなく想像できた。

まず、

近所のスーパーにチリパウダーなるものがなく、

唐辛子の粉末で代用しようかと思ったが、

何件か回った食材屋で、チリパウダーを見つけることが出来た。

ラベルに記された成分表を見て、

ああ、これじゃなくてはだめだ、と思いそいつを買った。

ただの唐辛子の粉末ではなく、数種類のスパイスが混合されていたからだ。

ただし、

小瓶しか売ってなく20g入りなので、

レシピ通に調理するとなると、半分は使ってしまうことになる。

それに高いって、こんなちょっとしか入ってないのに。


なんてこった。

大瓶ないのかよ。


さらに牛肉などを買い込み帰宅した。

たまねぎを刻み、

ニンニクをオリーブオイルで炒め、

そんなことを繰り返し、

後は煮込むだけとなった。

煮込み時間はなんと3時間。


ガス代が。


頭の中をよぎるが、

もはや引き返せなかった。



こんな得体のしれない、

また、体に悪そうなスープにしないで、


鯵の刺身にしておけばよかったかも。