映画感想 テーマは、女性・老人・子ども・ジェンダー・セクシャリティー・マイノリティー・働くこと・・・etc
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リトルダンサー

これは、13歳の少年が父親の反対にも関わらず、バレーダンサーを目指していく物語。

男の子はボクシングを習うのが当たり前だと考えられている炭鉱町で、ビリーもボクシングに通わされるが、興味を持てない。そんな時、バレーの練習を見て興味を持ち、父親に内緒でバレーの練習に通い始めるが、父親にばれてしまう。そして、父親から、そんなものは男のすることではないと言われる。


この映画は、男性の視点からジェンダーを描いている。看護学校でこの映画を見せた時、男子学生からの反響が結構あった。

自分も看護師を目指したときに「男なのになんで?」という風に言われたのだという。まだまだ看護師は女性の職業という偏見が強いのだ。この映画は、そんな彼らをたぶん励ましたのだと思う。


セクシャリティーについても考えさせられる場面があるし、主人公ビリーのダンスも出色だ。

妻の貌


広島在住の映像作家、川本昭人さんが半世紀にわたって撮影してきた妻と家族の記録。長男誕生をきっかけに8ミリフィルムを回し始め、原爆症に苦しみながらも子育てや義母の介護を続けた妻・キヨ子さんの日常を中心に、家族の50年に及ぶ歴史を見つめていく。


これは、アマチュアが撮ったフィルムなんだけど、記憶に残るものだった。内容は、原爆症の妻の日常を撮ったもの。といっても、原爆の悲惨さを声高に主張するのではなくて、それはずっと後景に退いていて、描かれるのは子どもの誕生から成長、結婚、孫の誕生・・などのまさしくホームビデオ。


妻は原爆症によるしんどさ、疲れやすさを訴えながらも義母(夫の母)の介護を一生懸命する。そんな妻に対して夫ができるのは月1回の定期健診に妻を車で病院に送っていくことだけ。


映像は、義母の介護をしながら家事をしたり、おはぎを作ったりする妻の日常が淡々と映し出されるのだが、一度だけ妻が夫に対して感情を吐露する場面がある。

妻は、「あんたは、私を撮ってそれを仕事にしているだけだ」と非難する。そして、義母が亡くなって夫が、これで妻も重荷から解放されたと思う夫に対して妻は言う。

「あんたは何もわかってない。おばあちゃんは私の生きがいだった」と。


そこからは、夫が考えているような嫁姑関係や介護の負担ではなく、義母の介護が妻にとって生きがいとなっていた現実が見える。

妻にとっては、夫よりも義母との関係のほうに、はるかに強い絆があったのだ。

そこに見えるのは、夫婦の意識の底深い断絶だが、この映画がすごいのはそのことを忠実にそして淡々と夫が映しているということなのだ。


マルタのやさしい刺繍

これは、 今年一押しの映画です。主人公は80歳のおばあさん。夫を亡くし、落ち込んでいた彼女だが、若いときにしていた仕事を思い出したことから、元気を取り戻し、周りにも影響を与えていく。

 その仕事とは、ランジェリーに刺繍するこ

と。セクシーで美しいランジェリー作りと老女はミスマッチ?でも、いいじゃないですか。

 これは、スイスの映画だけど、女性の老人への対し方は日本と似ている。この年代の人たちは、若いときは父親に従い、結婚後は夫に従って、自分のしたいことを押し殺してきた。そして、年をとったら、今度は息子の言うとおりにしないといけないのか?

主人公の女性は決して自己主張の強い女性ではない。息子の反対にいったんはランジェリー作りの仕事をあきらめるが、ある出来事から、奮起する。

冗談じゃない。私は私のやりたいようにする。80歳すぎてもね。という声が聞こえてきそうです(いつも、女性のじゃまをするのは中年男性なのです)。

 何歳になっても、自分のやりたいことをする彼女に拍手喝采です。