ごんざの辞書のかきかえ172「いする」 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

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1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

「ロシア語」(ラテン文字転写)       「村山七郎訳」『ごんざ訳』村山七郎注

 

「колыхаю,колышю」(kolykhayu, kolyshyu)「ゆさぶる」 『ゆする』

 

 鹿児島県立図書館の原稿コピーをみたら、ごんざははじめに(iсуръ)(isur')(いする)とかいてから、(i)にかさねて(ю)(yu)(ゆ)をかいていた。

 

 ごんざの辞書に(いする)ということばはでてこない。

 でも『いっする』ということばはでてくることを前にかいた

 

「высыпаю,что」(vysypayu, chto)「撒いて出す」  『いっする』 うち捨つる?

「изсыпаю」(izsypayu)     「撒いて出す」  『いっする』 うち捨つる?

「разсыпаю」(razsypayu)    「撒き散らす」  『いっする』 うち捨つる?

「разсыпаныи」(razsypanyi)  「撒き散らしたる」『いっしぇた

「ОТлитыи」(otlityi)       「注ぎ出したる」 『いっしぇた』うち捨てた

 

 『いっする』と(いする)と『ゆする』は(ゆする)という意味のおなじ動詞の変形3兄弟ではないか、とおもう。

 

岩波ロシア語辞典 「сыпать 1(粉状・粒状のものを)ぱらぱらと入れる、ふりかける;(木の葉などを)散らす、ばらまく。2(粉状・粒状のものを)投げつける、まき散らす。3(細かな雨・雪が)降る;(涙・汗が)ぽろぽろと流れ落ちる。4(ふんだんに)ばらまく、浴びせかける。」