ロシア語の「е」(e)という文字は、アクセントがある場合には「е」(e)と発音されるけれど、アクセントがない場合には(i)のように発音される。
それが「и」(i)という文字の発音とまったくおなじなのかどうかはわからないけど、すくなくとも私にはまったくおなじにきこえる。
ごんざにもまったくおなじにきこえたはずだ。
そうすると、ロシア語のつぎの2つの接辞はごんざにも私にもまったくおなじにきこえる。
岩波ロシア語辞典
「пре...(接頭辞)Ⅰ(動詞に付して)1'変る'の意。2'極度、過度'の意。3'超過''通過''分割'の意。Ⅱ(形容詞・副詞に付して)4'著しく、この上なく'の意。」
「при...(接頭辞)Ⅰ(動詞に付して)1'到達、到着'の意。2'動作の完全な達成'の意。3'接近、接触'の意。4'結合、接合'の意。5'上から押しつける動作'の意。以下略」
「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
「препинатель」(prepinateli) 「妨害者」 『まずるふと』
「претекаю」(pretekayu) 「走りとおす」 『ふぁしりとと』
「пресущiи」(presushchii) 「太古から存在するところの」『ふぉんのまいぇ』
「пресыхаю」(presykhayu) 「乾きすぎる」 『ちっとふぃる』
「претворяю」(pretvoryayu) 「変形する」 『つくる』
「претворенiе」(pretvorenie) 「変形」 『つくること』
鹿児島県立図書館にあるコピーをみると、この6語については「при」(pri)とかいてから「и」(i)にかさねて「е」(e)がかいてある。
「притираю」(pritirayu) 「擦り切る」『ふぃっきる』
この語については「пре」(pre)とつづるべきところを「при」(pri)とつづっている。
日本版にも訂正前と訂正後がしめされている。
「претителныи」(pretitelnyi) 「禁止的」 『さしぇんと』
これは原稿の476ページの先頭のみだし語だけど、このページから「пре」(pre)ではじまるみだし語がおわるまでの2ページ半、みだし語の2文字目「р」(r)と3文字目「е」(e)と4文字目のつながりが不自然にみえる。
もしかすると、「пре」(pre)の「е」(e)の位置をブランクにしておいて、つづりが「е」(e)か「и」(i)か確認して、あとから「е」(e)をかきこんだのではないか。
ボグダーノフ師匠が原稿をかいたのだとしたら、こういうことはしないんじゃないかな。