ごんざの辞書のかきかえ169「くつぃ」 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

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1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

「ロシア語」(ラテン文字転写)     「村山七郎訳」  『ごんざ訳』

 

A「воздерживаю」(vozderzhivayu)   「節制する」   『くつする』

B「воздерживаюся」(vozderzhivayusya)「自制する」   『くつしゅ』

C「премудрость」(premudrosti)    「非常に賢いこと」『くつでぃくなこ

 

 鹿児島県立図書館の原稿コピーをみたら、3つともごんざははじめに(кцы)(ktsy)(くつぃ)とかいてから(ы)(y)にかさねて(у)(u)をかいていた。

 

 ごんざの形容詞(くつ–)(きつい)は連体形では『кцы』(ktsy)(くつぃ)と『кцука』(ktsuka)(くつか)の両方の形があるけど、連用形は『кцу』(ktsu)(くつ)しかつかえないから、かきかえたんだろう。