「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
「старецъ」(starets') 「老爺、古老」 『としなふと』
鹿児島県立図書館の原稿コピーをみたら、ごんざは(тошнам)(toshnam)(としなм)とかいてから(м)(m)にかさねて『фто』(fto)(ふと)(人)とかいていた。
(м)(m)は(монъ)(mon')(もん)(者)じゃないかとおもう。
ごんざは「人」をあらわすことばとして、『ふと』(人)と『もん』(者)をつかうけど、『ふと』(人)が600例以上あるのに対して、『もん』(者)はとてもすくない。
「ロシア語」(ラテン文字転写) 「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
「богатырь」(bogatyri) 「勇者」 『つわもん』
「всесилный」(vsesilnyi) 「非常に力を持つ者」 『つわもん』
「исполинъ」(ispolin') 「勇者」 『つわもん』
「болЕзноносецъ」(boleznonosets')「病人」 『やんめもん』
「виселникъ」(viselnik') 「吊られる者」 『つらいぇもん』
「вселукавый」(vselukavyi) 「全く狡猾な者」 『おちゃもん』
「шилникъ」(shilnik') 「ならず者」 『おちゃもん』
「высоковыный」(vyskovy(i)nyi) 「誇り高い(人)」 『ふとなもん』
「дикiй」(dikii) 「野蛮な」 『ふぁらかきもん』
「пронырщикъ」(pronyrshchik') 「狡猾な者」 『おちゃくなもん』
「смердь」(smerdi) 「下民」 『くたねもん』
「тунеядецъ」(tuneyadets') 「怠け者」 『ふゆなもん』
「уродъ」(urod') 「片輪者、異形の者」 『かたをもん』
「юродъ」(yurod') 「愚者、先天的に気の狂った者」『かたをもん』
「чванъ велич:」(chvan' velich) 「高慢者」 『けんきょもん』
「челядь」(chelyadi) 「召使」 『うちのもん』
「Объядало」(ob'yadalo) 「大食してめいわくをかける人」『むでなもん』
これで全部だけど『つわもん』(つわもの)以外はわるい意味ばかりだ。(つわ)は自立性のないことばだから別格とすると、全部わるい意味だ。
これでは、いい意味もわるい意味もない(老人)という意味のことばの訳語につかうわけにはいかない、とおもってごんざはかきかえたんだろう。