妻への手紙 -7ページ目

ね。Jリーガー。 どうしてカレーにお味噌汁なの?

こんにちは。 -僕は、そんな間の抜けた挨拶をしたと思う。
すると、冴木雪乃は目だけで微笑んだ。

“真夏の横断歩道で会った時と同じだ”

僕がそんなことを心の中で呟いていると、雪乃でない、もう一人の子が言った。

「あ。上杉君でしょう? 私、知ってる」
「どうも。けど、知ってるって、どうして…?」

「だって、高橋君からいつも聞いているもん。未来のJリーガーだって。
 それに、高橋君に聞かなくても、ガッコの中で有名だよ」

そんな事を、マキと名乗ったその子が言った。

「そうなんだ」
マキの言葉に反応したのは、僕ではなく、雪乃だった。

「『そうなんだ』って、雪乃。あんた、ついこの間、その話したばっかじゃん」
「あ。うそ。あんまり聞いてなかったかも ごめん、マキ」

“素直なんだな”

僕は、雪乃に対し、そんな印象を持った。

僕が見ていたせいか、雪乃と目が合った。
すると、雪乃が口を開いた。

「ね。Jリーガー。
 どうでもいいけど、どうしてカレーにお味噌汁なの?」

これが、雪乃が僕に話しかけた最初の言葉だった。
この先、何億語と言葉を交わすことになる、僕と雪乃の。


僕は、その質問に答えながら、
カレーの横の味噌汁に興味を持った雪乃を
とても新鮮に感じていた。

「…ふぅん。辛いカレーにはお味噌汁が合うんだ。今度やってみよっかな」
雪乃は、そんなことを言いながら、とてもかわいらしい笑顔を見せてくれた。


僕は、雪乃に恋をした高橋の気持ちが分かるような気がしていた。