電車の中で見かけた出来事。
たくさんの人が降りる駅。
「手袋、忘れていませんか?」
少し、焦った声。
座席に手袋が忘れられているのを見つけたようだ。
しかし、落とし主の姿はもうなかったようす。
手袋を持った女性も、その駅で降りる予定だったようで、どうしようと焦ったようすで、手にした手袋を車内に置いて、降りて行った。
冬の寒い日。
手袋を忘れた人は、外に出たときに気が付くだろう。
私はなにもできなかった人。
少し離れたところで、その様子が目にはいった人。
たとえば、もし私が大きな声をだすことができたなら。
「手袋を落としていませんか?」
そこにいる人たち全員が振り返るような大きな声をだすことができたなら。
落とし主の人も振り返って、気が付いたかもしれない。
でも、そんなことはできなかった。
どうして?大きな声をだすことが恥ずかしいから?
とっさの行動ができないから?
行動に、正解も不正解もないのだろうけれど。
もしかしたら、落とした人に届いたかもしれない。
もし、届いたら、自分も今こうやってもやもやとしていないし、気づいた人も、落とした人も、ハッピーになれたかも。
自分の恥ずかしいなんて気持ちは、自分だけのちっぽけなものなのになあ。
忘れられた手袋はどうなったかな?
落とした人はどうなったかな。
その場にいただけの自分が、ぼんやりと気にしている。ただそれだけの日記でした。