2024年8月25日はマクロスプラス30周年の記念日……AnimeNYCの特別上映でも大盛り上がりでした
マクロスプラスと言えば……
2011年11月29日のバンダイチャンネル『氷川竜介のチャンネル探訪』にこんな記事がある……
「第42回 マクロスの歴史を転換させた『マクロスプラス』と『マクロス7』」という記事の一節……
https://info.b-ch.com/article/293108867.html
「この時期からマクロスサーガの方向性はさらに拡がり、物語の舞台も地球と太陽系を離れて、銀河播種計画(宇宙移民)を前提に大きく拡がっていきます。この2作品は、まさに歴史の転換点なのです。」
日本でマクロス作品にサーガ(saga・古ノルド語北欧神話叙事詩)の名前を使ったのはこの記事が最初かもしれない……良く知らないけど……
ガンダムSEEDの原題が『ガンダム・サーガ』だったように、マクロスシリーズについても『マクロス・サーガ』と呼んでいるバンダイは、おそらくサーガと言う言葉がお気に入りなのかも
マクロスサーガという言葉は米国版マクロスこと『Robotech』三部作の第一部をハーモニーゴールド社が“The Macross Saga”と名付けたのが初出だと思うけど、欧州神話に詳しい人、特に欧州神話ネイティブの西欧人なら初代マクロスの内容が北欧神話・ギリシャ神話をモチーフにした内容であることはすぐ気付くはず……
宗教学や神話学は欧米ではリベラルアーツの一分野でもあるので、一般教養としては日本よりもはるかに重視されているし……
初代マクロスのメカやキャラクター等の各種ネーミング……
さらにはヴァルキリーに襲い掛かる巨人女神群、エース女神の単独侵入からのマクミリ結婚休戦に至る展開は、北欧神話のアース・ヴァン戦争の魔女グルヴェイグのアースガルド単独侵入や女神フレイヤの嫁入り休戦物語を彷彿とさせる内容だと思う……
実際、インターネット開放以前の欧米のPC通信ではRobotechファンによる神話との対比などの考察が熱心に語られていたらしい……
一方、1980年代の日本人には北欧神話はあまり知られていなかったらしく、可変戦闘機バルキリーの名前由来も米国の試作爆撃機XB-70だったらしいけど、その試作機のネーミング由来が北欧神話の戦乙女だと知っていた人は多くなかった模様……
その頃はまだ日本語の一般向け書籍も数少なく、西欧神話を知っているのは専門家や趣味人ぐらい……
まぁ、今でもアース・ヴァン戦争の物語を知っている人は日本では少数派かも知れない……どちらかと言うとゲームから興味を持った人が多いかな……
でも実は……1970~80年代の漫画・アニメ等の創作畑界隈では一大神話ブームが巻き起こっていたらしい……
永井豪・石ノ森章太郎・松本零士・宮崎駿等の伝説級の巨匠たちが世界の古代神話に大注目して、それらをモチーフにした作品を次々と生み出し始めた時期……
この記事を読んでから、70~80年代アニメとか漫画もいくつか視聴してみたけど、確かにマジンガーシリーズやデビルマン、サイボーグ009、銀河鉄道999、ジブリ作品は神話に由来したネーミングや設定、物語性を感じるね……漫画版デビルマンなんかマクロス7と同じ神話がベースでしょ
先輩マクヲタ方のお薦めで鑑賞した1980年代前半のSF終末論の傑作イデオン、マクロスはじめ超時空作品群、『赫奕たる異端』しか見たことが無いけどボトムズなんかもその系譜に連なる作品かもしれない………
おそらくサーガ大好きなバンダイの中にもその流れに乗った人がいたはず……
昨年6月に告知された新作マクロスでは制作会社がサテライトからバンダイナムコグループ傘下のサンライズ(バンダイナムコフィルムワークス)に変わるけど、サーガ大好き?なバンダイ系だから一層サーガ路線が強化されることを神話好きとしては期待してたりする……
氷川竜介先生が言うところの「この時期からマクロスサーガの方向性はさらに拡がり」と同じかどうかは分からないけど……
マクロスプラスでハッキリと見えた神話的方向性……
それはマクロスサーガが「不老不死の果実」「音の果実」と「不老不死の果実を管理する妖精」の叙事詩であることが明確になったことかも
私が初めて見たマクロスは従姉妹宅で見た『劇場版マクロスF サヨナラノツバサ』🪽
そのあとDVDやBlu-rayでF⇒Δ⇒ゼロ⇒プラス⇒7⇒初代・FB2012⇒IIを見て、初めてのRT鑑賞が劇場での『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の順番……
FΔのテーマでもあった「賢者の石」「エリクシア」「黄金の林檎」等の不老不死アイテムを巡る物語であることに既に気付いている状態で、プラス・7・初代を見たことになるので、すんなりと初期作品群も不老不死の物語だと気付いたけど……
もしも仮に初代から放送順に見ていたとしたら……初代では気付かなったかもしれない
前述のマクミリの北欧神話要素以外にも……
一条輝・早瀬未沙・リンミンメイ等のネーミングや生年月日等から、イザナギ・イザナミ国生み神話や黄泉下り、退魔桃オオカムヅミが重要な役割を果たす黄泉比良坂の戦いなどの日本神話……
さらには中華飯店娘娘のネーミングから、不老不死の蟠桃を西方の神山・崑崙山の園で栽培する最上位神仙女・西王母(正宮娘娘)やその娘達(瑤姫・玄女)が関係してくることはすぐに気付いたと思う……
神話学上でも日本神話オオカムヅミと中国神話の西王母の桃は常に比較対象になっているので、「不老不死の桃」に思い至るのは難しくない……🍑
でも初代マクロスの時点では、マクロスシリーズが全世界の“不老不死の果実・音の果実”を比較神話学的に繋いだ壮大な“妖精”の叙述詩になることは全く予想できなかったと思う……
それがハッキリしたのがマクロスプラス……
ヒロインのミュン・ファン・ローンが歌で人工知能シャロン・アップルを育てる歌姫であったこと……🍎
……歌で魔法の林檎を育てる……
……有名なのは……
不老不死の黄金林檎を霊歌で育てる
ギリシャ神話
ヘスペリデス妖精姉妹
『ヘスペリデスの園』(1870年頃)
Edward Burne-Jones作
しかもシャロン・アップルはバーチャロイド・シンガー
これはアイルランド神話に伝わる“音の果実”伝説
アイルランド神話
神音の黄金林檎
黄金林檎が“音の果実”であるとするなら……
古代中国の祭儀に使われた金属製の“鈴”が……
西王母の不老不死の桃の神力を音で表現したもの……
という学説も絡んでくる可能性もある
……しかも……
リン・ミンメイ様の中華表記は“鈴明美”だったりする
さらにその黄金林檎神話を……
聖書における楽園伝説
“シャロンの園”や“エデンの園”
……と組み合わせることで……
「原罪の林檎・禁断の林檎・知恵の実」
……の神話と重ねようとしていることも……
比較的容易に連想できる……
さらにミュンのオリジナル曲VOICESのタイトルは“お告げ・預言”
……と言う意味だけど、その歌詞中の一節……
“金色のりんごがまたひとつ落ちる”
これは「黄金の林檎」に該当するものが複数存在し、そのうちの幾つかが過去に落果していて、さらにまたひとつ落果することを予言した歌詞……
ギリシャ神話のヘスペリデス妖精は一番メジャーな3人説から4人・7人・11人説なんかがあるんだけど、少なくとも3人の“黄金林檎の歌妖精”に相当するキャラクターが出現すること……
既に誰かはマクロスプラス時代以前に何らかの理由で失われていること……
そしてマクロスプラス以降の展開で新たに誰かが失われること……
なんかを暗喩してるのかも🍎
絶対LIVE!!!!!!!でフレイアが風に召されることの予言・お告げかも知れない
あとミュンがヘスペリデス妖精姉妹と関係が深い……
もしくは妖精のひとりであることを暗示しているのがミュンのミドルネーム……
ファン(Fang)=毒蛇の牙”
上のヘスペリデス妖精絵画の林檎の木の幹に注目して欲しい……
一匹の大きなヘビ
黄金林檎を守る守護蛇ラードーン
つまり“初代+FB2012+プラス”が揃ったことで……
以下の神話が繋がり始めたことになる……
中国神話の不老不死の蟠桃(娘娘桃)
中国神話の蟠桃を支配する西王母とその娘達
日本神話の退魔桃オオカムヅミ
ギリシャ神話の不老不死の黄金林檎
ギリシャ神話の歌妖精ヘスペリデス姉妹
ギリシャ神話の黄金林檎守護蛇ラードーン
聖書神話の原罪の林檎
アイルランド神話の音の黄金林檎
マクロスプラスは、マクロスシリーズが……
「不老不死の果実」「音の果実」と
「妖精・仙女・女神」のサーガ(神話叙事詩)
であることを決定づけた作品ということになるかも
そしてこの方向性は……
7・ゼロ・F・Δとシリーズを重ねるごとに加速する……
マクロスプラスに関しては他にも神話・神秘主義ネタも山盛り
ヘスペリデス妖精と冥蛇姫ゴルゴーン三姉妹の同源説
天国・楽園と冥界
聖書神話楽園シャロンの花(救世主~後の星の子~)の伏線
ギリシャ神話三途の川番神カロンと勇者の冥界下り物語
生命現象論における機械論・生気論と錬金術の対比
などなど~一杯あるけど……
いくつかは過去記事にも書いたので興味のある方はどうぞ