「何事も、一歩手前から

 

準備をすることが大切です。」

 

この言葉は、

 

これまで私が長く教えをいただいている

 

昭和9年生まれの

 

3人のうちの一人から伺った感慨です。

 

 

年明けに満90歳になるその男性は、

 

ずいぶんと前から杖を持ち歩いており、

 

その姿を私も何度も見ています。

 

杖が必要な状態なのだと

 

周囲も単に思っていただけでしょうが、

 

その男性は「ほんとは杖は不要なんです。」

 

とおっしゃる。

 

「杖が必要な身体になってから

 

初めて杖を持っても、自分を支えるものとして

 

杖をしっかりと使うことはできないんです。」と。

 

『いざ』というときの、

 

その『いざ』事が起こる前から準備をする、

 

まさに転ばぬ先の杖なのです。

 

 

詳しく尋ねたところ、

 

この学びの源は太極拳であり、

 

準備、基本の動きから

 

段階的に強度や難易度を上げていく、

 

呼吸法をはじめ

 

その一連の稽古がご自分の根っことなり

 

いまの支えとなっているとのこと。

 

 

而して、

 

私たちが学ぶ伝統の稽古においても

 

先人たちから継承されてきた体系があります。

 

内に締める小さな動きからスタートし、

 

徐々に身体の軸から距離を広げて

 

全体に大きく、かつ、引き締める動きとする。

 

視覚的には外側に向かって強く見えますが

 

その本質は、

 

より内側に向かって強靭なものとなるのです。

 

 

このロジック、思考は、

 

物理的な身体の法則にとどまるものではなく、

 

本質として人そのもの、

 

自己同一性と訳されるアイデンティティの確立と

 

同じ意味、意義を持ちます。

 

 

すなわち、

 

自分を徹底して内に深める取り組みが

 

相対的ではなく、

 

絶対的な己というものを形成し、

 

他者や世の中の諸々とは明確に異なる

 

一個の己というものを見出し、

 

形づくって際立たせていきます。

 

 

この自己の確立こそが

 

他者や世の中と、

 

自分という者との関係を深め、

 

より大きな広がりを持たせることにつながる。

 

ここに伝統の本質があるのです。

 

 

先日、神田錬成館に

 

オーストラリアのセオ師範はじめ7人の来訪があり、

 

山本師範の指揮の元で私たちも

 

多くのことを考え、学ぶことができました。

 

みなの前で山本師範が日本語で指揮を執り、

 

英語で解説を加える。

 

その一挙手一投足、言葉一つひとつに

 

全神経を集中させて応える。

 

いっときも手を抜かず、

 

気を緩めずに決して逃げない。

 

この厳しく刺激的で緊張感のある時間も、

 

帰路につく頃には

 

絶対的な経験と充実の時として

 

心身に刻まれていることを実感します。

 

稽古はこの積み重ねです。

 

 

この秋は、

 

市民まつりでの模範演武や

 

審査会、空手道体験教室の運営など、

 

みながよく頑張ったと思います。

 

成ったことはもちろん、

 

成らなかったことも含めて

 

すべては確かな糧となります。

 

継続こそが力であり、

 

努力は必ず実を結ぶのです。

 

 

 

      市民まつり 山本師範 大西師範を迎えて

 

 

     神田錬成館 山本師範 セオ師範とともに

 

 

       神田錬成館 11月6日 全員で

 

 

当会と縁をいただいている

 

「ひめゆり学徒」の与那覇百子さんが

 

11月8日に96歳で他界されました。

 

昨日は道場で

 

与那覇師範から指導をいただいたのち、

 

みなで黙とうを捧げました。

 

慎んでお悔やみ申し上げます。

 

そして、

 

心より、御礼を申し上げます。

 

 

5つ、再掲します。

 

百子さんの「紙一重」という一言から思い起こす

 

揺るがぬものを築く

 

ヨガ(源流)

 

自分の形(かた)をつくる

 

生涯にわたり、生涯ののちも