イタリアのボルツァーノで開催された、2023年ブゾーニ国際ピアノコンクールが、終わった(公式サイトはこちら)。
これまで、ネット配信を聴いて(こちらのサイト)、感想を書いてきた。
とりわけ印象深かったピアニストについて、備忘録的に記載しておきたい。
ちなみに、2023年ブゾーニ国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(2022/2023年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選通過者一覧)
22. Anthony RATINOV (birth: 1997, South Bend)
今大会の第2位。
感情的すぎない、クラシカルな演奏スタイルが持ち味。
古典派作品はもちろん、ショパンのソナタ第3番も古雅で爽やか、ショパンコンクールでも良いところまで行けるかも。
01. Vladimir AĆIMOVIĆ (birth: 2002, Niš)
(セミ)
セミファイナルで選出されなかった人から一人選ぶなら彼か。
美しい音と詩情を持つ。
シューマンのノヴェレッテを聴かせることのできるピアニスト。
27. Zitong WANG (birth: 1999, Honhot)
今大会の第6位。
繊細な情感表現に長けている。
音数の少ない、静かで地味な曲であっても、幻想的な演奏で聴き手を惹きつけ、飽きさせない(むしろそういう曲こそ得意とする)。
ソロファイナルで弾いたヤナーチェクの「霧の中で」とモーツァルトのソナタ第4番がとりわけ忘れがたい。
28. Ryota YAMAZAKI (birth: 1998, Kanagawa)
今大会の第3位。
また、私の中での個人的な今大会のMVP。
音がきれい、というピアニストは数多くいるけれど、その多くは瞬間的であって、彼のように弱音・強音問わず全ての音がきれいという人は、そうそういない。
そんな彼には、ときに轟音も必要となるベートーヴェンやプロコフィエフなどは合わない可能性もあるが、ソロファイナルで弾いたモーツァルトやショパンはよく合っている(音楽は決して耳ざわりであってはならない、どこまでも美しくあらねばならないとモーツァルトは言ったし、ショパンはモーツァルトを敬愛していた)。
特に、ショパンのエチュードop.25は特筆すべき美しさと完成度で、これだけ弾ければショパンコンクールでも2次くらいまでは堅そう。
あとは、ソナタ第3番と協奏曲第1番を同じくらいのクオリティで仕上げられれば、ショパンコンクール優勝も決して夢ではない気がする(言うは易く行うは難しだが)。
21. Arsenii MUN (birth: 1999, St. Petersburg)
今大会の優勝者。
力強く威勢のいいピアニスト。
2018年チャイコフスキーコンクールで初めて聴いて感心した彼だが(その記事はこちら)、どちらかというと洗練された演奏が好みである私は、それ以後必ずしも彼の良い聴き手ではなかった。
同じロシアのピアニストなら、例えば彼の2歳ほど後輩のIlya PAPOYANやValentin MALININ(共に2023年チャイコフスキーコンクール入賞者、その記事はこちらなど)に注目してしまっていた。
しかし、今回の彼の優勝は素直に嬉しいし、華のある演奏だったと思う。
13. Antonio Chen GUANG (birth: 1994, Hubei)
今大会の第4位。
明るくて自由な演奏スタイルを持つ。
細部の詰めに難はあれど、ショパンのエチュードop.10など想像以上の出来だった。
09. Yubo DENG (birth: 2002, Guangzhou)
ソロファイナルで選出されなかった人から一人選ぶなら彼か。
洗練された技巧とロマン的な歌を持つスマート系ピアニスト。
このタイプのピアニストはブルース・シャオユー・リウ、ダニエル・シュー、エリック・ルー、トニー・イーケ・ヤン、JJジュン・リ・ブイ、ケヴィン・チェンなど、中国系北米人に多くみられるが、ついに中国本土からも現れるようになってきたか。
ショパン向きのタイプであり、ショパンコンクールでも山﨑亮汰の強力なライバルの一人になりそう(2人とも出場するかどうか全然知らないが)。
14. Ron Maxim HUANG (birth: 2001, Berlin)
今大会の第5位。
溌剌とした活きのいい演奏スタイルを持つ。
ドヴォルザークの五重奏曲など、Zitong WANGのたおやかな同曲演奏とはまた違う良さがあった。
以上のようなピアニストが、印象に残った。
予選のレベルが異様に高かった先日のシドニーコンクール(その記事はこちらなど)に対し、今回のブゾーニコンクールは室内楽ファイナルのレベルがとりわけ高かったように感じた。
そして、今大会では山﨑亮汰の実力を知ることができたのが、私には大きかった。
藤田真央や古海行子と同い年のようで、日本には若き名ピアニストが(十分たくさんいるのに)まだまだいるのだと気づかされる。
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