ハンブルク交響楽団
【日時】
2023年7月17日(月祝) 開演 14:00
【会場】
京都コンサートホール 大ホール
【演奏】
指揮:シルヴァン・カンブルラン
ピアノ:マルティン・ガルシア・ガルシア *
管弦楽:ハンブルク交響楽団
【プログラム】
ベートーヴェン:「エグモント」 作品84 より 序曲
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21 *
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92
※アンコール(ソリスト) *
リスト:巡礼の年 第3年 より 第4曲 「エステ荘の噴水」
ショパン:ワルツ 第4番 ヘ長調 作品34-3
※アンコール(オーケストラ)
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短調 作品72-2
ハンブルク響の京都公演を聴きに行った。
指揮は、1948年フランス生まれ、このオーケストラの首席指揮者を務める巨匠、シルヴァン・カンブルラン。
好きな指揮者であり、これまでも何度か彼の実演を聴いてきたが、ハンブルク響を振るのを聴くのは私には今回が初めて。
ソリストは、1996年スペイン生まれ、2021年ショパンコンクール第3位のピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシア。
ピアノはファツィオリ。
最初のプログラムは、ベートーヴェンの「エグモント」序曲。
この曲で私の好きな録音は
●フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル 1933年セッション盤(CD/YouTube)
●トスカニーニ指揮 NBC響 1939年11月18日放送ライヴ盤(CD)
●フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル 1947年5月27日ベルリンライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1969年1月3-6日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1985年12月2,4日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●アバド指揮 ウィーン・フィル 1987年2月ウィーンライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
あたりである。
今回のカンブルラン&ハンブルク響の演奏は、これらの名盤のずっしり感とは対照的な爽やかさだったが、それはそれで良かった。
ハンブルク響は、洗練度としてはいつも聴いている大フィルに敵わない印象で、大フィルのようなオーケストラを日常的に聴ける贅沢さを改めてかみしめたのではあったが、それでも音色としてはやっぱりヨーロッパの味があって、これぞ来日公演の醍醐味と感じた。
次のプログラムは、ショパンのピアノ協奏曲第2番。
この曲で私の好きな録音は
●ポリーニ(Pf) 井上道義指揮 シュトゥットガルト放送響 1973年頃ライヴ盤(CD)
●小林愛実(Pf) プリマ・ヴィスタ弦楽四重奏団 2011年1月13日ショパンコンクール in Asiaライヴ盤(CD) ※弦楽四重奏伴奏版
あたりである。
また、実演では2019年の山本貴志のものが最高の名演で(その記事はこちら)、この3つが私にとってこの曲の特別な演奏。
それに次いでは、
●内匠慧(Pf) 岩村力指揮 東京シティ・フィル 2011年8月21日ピティナ特級ライヴ(動画)
●牛田智大(Pf) プリマ・ヴィスタ弦楽四重奏団 2012年1月13日ショパンコンクール in Asiaライヴ盤(Apple Music/CD) ※弦楽四重奏伴奏版
●チョ・ソンジン(Pf) ノセダ指揮 EUユース管 2018年8月19日ロンドンライヴ(有料配信)
●三浦謙司(Pf) J.Sirvend指揮 フランス国立管 2019年11月15日ロンティボーコンクールライヴ(動画、その記事はこちら)
●フルネル(Pf) ドゥネーヴ指揮 ブリュッセル・フィル 2021年6月9日エリザベートコンクールライヴ(動画、その記事はこちら)
●イ・ヒョク(Pf) ボレイコ指揮 ワルシャワ・フィル 2021年10月20日ショパンコンクールライヴ(動画、その記事はこちら)
あたりも好きである。
作曲時20歳だった若きショパンの情感を、繊細にみずみずしく表現した演奏が好み。
今回のガルシア・ガルシアは、2021年ショパンコンクール時と同様(その記事はこちら)、明るく力強い、内向的というよりは外向的な、骨太の演奏。
若きショパンの情感というには風格がありすぎ、この曲の私の好みとは異なるが、こういう演奏を好む人もいるだろう(実際彼はショパンコンクールで第3位を受賞した)。
第2楽章の中間部など、オペラのレチタティーヴォか何かのようで、ラプソディックな味がよく出ていた。
そんなガルシア・ガルシア、アンコールのリスト作曲「エステ荘の噴水」はショパンよりも板についており、水しぶきが煌びやかに飛び散る様が目に浮かぶよう。
ファツィオリの明るい音色が最大限活かされた名演だった。
最後のプログラムは、ベートーヴェンの交響曲第7番。
この曲で私の好きな録音は
●トスカニーニ指揮 ニューヨーク・フィル 1936年4月9,10日セッション盤(CD)
●フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル 1950年1月18,19日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●C.クライバー指揮 バイエルン国立管 1982年5月3日ミュンヘンライヴ盤(NML/CD/YouTube1/2/3/4)
●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1983年12月1-3、5日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●西本智実指揮 ロイヤル・フィル 2009年9月22日東京ライヴ盤(CD)
あたりである。
考え方の古い私としては、やはりベートーヴェンの奇数番の交響曲は、ずっしりとした重みをもってヒロイックに演奏してほしい。
カンブルラン&ハンブルク響のベートーヴェン交響曲としては、第8番の演奏動画があって、優美かつ爽快な、この曲で一二を争う名演となっている(その記事はこちら)。
ただ、それも第8番なればこそ、第7番となるとやはりもっと重みのある演奏のほうがいいかと想像していたのだが、今回の演奏は思いのほか良かった。
もちろんカンブルランなので重い響きを作ることはなく、全体に爽やかなのだが、肩の力を抜いたというよりは、しっかり汗をかいた情熱的な演奏だった。
終楽章など、音の響きを楽しみながらまったり進むかと思いきや、なんとクライバーのテンポ。
ハンブルク響のメンバーも、懸命に弾いているのが伝わってくる。
第7番にふさわしい、望外の名演だった。
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