ホリプロステージ 「宝飾時計」
【日時】
2022年2月2日(木) 開演 19:00
【会場】
森ノ宮ピロティホール (大阪)
【プログラム】
「宝飾時計」
【あらすじ】
主人公のゆりか(高畑充希)は子役から女優として活躍しているが、驚くほど業界に染まれていない。30歳を迎え、同級生たちが次々と結婚し子供を産んでいく中、「私は何のためにこんなことをやっているのだろう」と自分の存在の意味を見つけられずにいた。そんな彼女の心を日々支えているのはマネージャーの大小路(成田凌)。ある日ゆりかのもとに「21年前にやったミュージカルの記念公演のカーテンコールで、テーマ曲を歌ってくれないか?」という依頼が飛び込んでくる。それは彼女の原点となった舞台だった。仕事を引き受けたゆりかは現場で、当時一緒にトリプルキャストとして主演を務めていた真理恵(小池栄子)と杏香(伊藤万理華)と再会する。自分の人生を肯定したい3人は、他者を否定することでなんとか自分を保っていた。その会話は21年前も今も変わらない。
過去と現在を行き来しながらゆりかは自分の人生を振り返り、孤独に押しつぶされそうになる。日々増える無力感の中、ゆりかは自分の人生の肯定の仕方を考え始め・・・。
【スタッフ】
作・演出:根本宗子
美術:池田ともゆき
照明:佐藤啓
音響:藤森直樹
衣裳:神田恵介(keisuke kanda)
ヘアメイク:二宮ミハル
演出助手:相田剛志
舞台監督:幸光順平、鈴木拓
テーマ曲:「青春の続き」/高畑充希 作詞作編曲:椎名林檎
宣伝衣裳:神田恵介(keisuke kanda)
衣裳協力:DOUBLE MAISON(やまと) familiar BEAMS
【キャスト】
松谷ゆりか:高畑充希
大小路祐太郎:成田凌
板橋真理恵:小池栄子
田口杏香:伊藤万理華
杏香の母:池津祥子
関一:後藤剛範
優大:小日向星一
滝本伸夫:八十田勇一
〈ミュージシャン〉
バイオリン:磯部舞子
ヴィオラ:島岡万理子
チェロ:松尾佳奈
ピアノ:大谷愛
「宝飾時計」の舞台を観に行った。
高畑充希が出演する舞台を観るのはこれで5作目。
高畑充希が脚本家の根本宗子に依頼して当て書きしてもらったという作品。
観てみると、リアルのようでいて少し不思議な、ゆるふわっとした物語だった。
以下ネタバレあるので、気になる方は以下をお読みいただく前に有料オンライン視聴をどうぞ(→ こちらのサイト、2023年3月5日21時まで)。
30歳のリアルな悩みにフォーカスした話かと思いきや、少し違った。
同級生2人についてはリアルなのだが(母・妻としての悩み、引きこもりとしての悩み)、主人公である松谷ゆりかについては、少々特殊な状況設定。
子供の頃、好きになった男の子が突然いなくなってしまい、亡くなったと聞かされ、男の子のことがずっと忘れられないゆりか。
実は生きていて、30歳になり思いがけず再会し、付き合うことになるが、うまくコミュニケーションが取れずすれ違い、結局また逃げられてしまう、それでも相手のことを生涯想い続けるゆりか。
男がなぜはっきりした態度を取らないのかは劇中では明確には描写されないし、ゆりかがなぜこの男に生涯こだわるのかもいまいちよくわからない。
例えば映画「タイタニック」のように、17歳で恋人と死に別れたヒロインが、その後別の人と結婚して子や孫にも恵まれ幸せに暮らし、101歳になって84年前の遠い昔の出来事を懐かしく回想する、といったシナリオのほうが、リアルな気がして私にはしっくりくる。
それでも、今回の「宝飾時計」の、ありそうでなさそうな、ファンタジーでもなければリアルでもない、ゆるふわっとしたところが、脚本家の根本宗子の持ち味なのかもしれない。
“佳き思い出”としてしまっておくことができない、分かり合えない相手として“いま現在”に引き戻される、という点で、ある意味では悲劇であるはずの「タイタニック」以上に悲劇的ともいえる、そんな今風のささやかな悲劇を、笑いの要素も多々交えた軽快なタッチで、ふわっと優しく表現した、そんな作品だった。
主演の高畑充希は、同級生2人の濃いキャラとは違った、より普通な役柄として、オーラを弱めてマイルドに演じていた。
その分、思いを相手にうまく伝えられないゆりかが、終盤のクライマックスで主題歌を歌う際に、か細く始まりながらも徐々に内面を吐露し思いの丈を歌に込めてぶちまけていく、満を持して発揮されるその強いオーラに、圧倒されることとなった。
この主題歌は録音もされているが(Apple Music/YouTube)、このきれいにとられたセッション録音とは全く違った、ゆりかという一人のひとの人生をいきて体現した、劇的な歌唱だった。
彼女はやはり、舞台の人なのだろう。
この歌を伴奏するのが、室内楽(弦楽器3人とピアノ)による生演奏だったのも、とても良かった。
演劇の音楽は録音が使われることも多いと思うが、たとえ大オーケストラの録音であっても、たった4人の生演奏の臨場感に全く敵わない。
(画像はこちらのページからお借りしました)
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