大阪フィルハーモニー交響楽団
第557回定期演奏会
【日時】
2022年4月9日(土) 開演 15:00
【会場】
フェスティバルホール (大阪)
【演奏】
指揮:尾高忠明
ピアノ:藤田真央 *
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:崔文洙)
【プログラム】
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 作品58 *
エルガー:交響曲 第2番 変ホ長調 作品63
※アンコール(ソリスト) *
ブラームス:ロマンス ヘ長調 op.118-5
大フィルの定期演奏会を聴きに行った。
指揮は、音楽監督の尾高忠明。
ソリストは、コロナ禍のため来日できないアンヌ・ケフェレックの代役として、藤田真央が担当した。
彼の実演を聴くのはこれで9回目。
前半の曲は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。
この曲で私の好きな録音は
●W.ケンプ(Pf) ケンペン指揮 ベルリン・ドイツ・オペラ管 1941年4月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●アンスネス(Pf、指揮) マーラー・チェンバー・オーケストラ 2013年11月セッション盤(Apple Music/CD)
●藤田真央(Pf) ゲルギエフ指揮 ミュンヘン・フィル 2020年12月4日ミュンヘンライヴ(動画、その記事はこちら)
あたりである。
今回まさにこの藤田真央の演奏が生で聴けるということで、楽しみにしていた。
そして、期待は裏切られなかった。
マエストロ尾高と一緒でも、いつも通りのひょこひょこっとした登場ぶり、そしていつも通りの最高に洗練された演奏ぶり。
過去のどの巨匠にも増してタッチが滑らかで、なおかつ音色が本当に明るく美しい。
季節柄、満開の桜並木が目の前に見えるかのようだった。
とにかく、一つ一つのトリルが、音階が、アルペッジョが、もう光そのもののように煌めいている。
第1楽章、長大なカデンツァ(バックハウスやグルダと同じ通常のもの)が終わる箇所、ここはたいていピアノのトリルにいざなわれて還ってくるオーケストラの華やかな音色に耳が行くものだが、藤田真央の手になると、ピアノのトリルもその後の細かな装飾音型も、オーケストラのどの楽器よりカラフルで優しく、聴き手の耳をとらえて離さない。
終楽章、プラルトリラーもスタッカートも理想的なまでに繊細で軽やか、エピソード主題のような平易なメロディも彼が弾くと他の誰とも違う桜色の音になる。
あまりの美しさに、満ち足りていながら泣かずにいられない、そんな演奏だった。
アンコールも、晩年のブラームスらしい晦渋さとは一切無縁の、夢のようなロマンスだった。
後半の曲は、エルガーの交響曲第2番。
この曲で私の好きな録音は
●ギブソン指揮 スコティッシュ・ナショナル管 1977年5月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●ガードナー指揮 BBC響 2017年7月6,7日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
あたりである。
ともに、イギリスの指揮者らしい柔らかな表現が特徴である。
今回の尾高忠明&大フィルは、これら2盤に比べるとより威勢のいい、金管なども大きく鳴らす、少しR.シュトラウスの交響詩を思わせるような演奏だった。
私の好みとはやや異なるが、個人的にそれほど強いこだわりのない曲ということもあってか、これはこれで面白かった。
BBCウェールズ響の首席指揮者を務めた尾高忠明は、イギリス音楽のスペシャリストとも言われ、その通りだとは思うのだけれど、それでももともとのルーツはドイツ音楽なのかな、と思わせる演奏だった。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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