(務川慧悟の新譜 ショパン バラード第1番 ラフマニノフ 楽興の時 ブーレーズ アンシーズ) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

一昨日および昨日に引き続き、みたび務川慧悟について書きたいのだが、彼の新譜が先日発売された。

曲目は、ショパンのボレロ、バラード第1番、ノクターン第18番、ラフマニノフの「楽興の時」、ブーレーズの「アンシーズ」である(Apple MusicCD)。

詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

 

務川慧悟/ショパン、ラフマニノフ、ブーレーズ

2019年ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクール第2位、2015年エピナル国際ピアノコンクール(フランス)第2位、2016年イル・ドゥ・フランス国際ピアノコンクール(フランス)第2位、2012年 日本音楽コンクール優勝。若き才能・務川慧悟、待望の国内デビューソロアルバムが誕生。(メーカー資料より)

【収録情報】
● ショパン:ボレロ ハ長調 Op.19
● ショパン:バラード第1番ト短調 Op.23
● ショパン:ノクターン第18番ホ長調 Op.62-2
● ラフマニノフ:楽興の時 Op.16
● ブーレーズ:アンシーズ (version 2001)


務川慧悟(ピアノ)

録音時期:2020年2月19-21日
録音場所:埼玉県、さいたま芸術劇場 音楽ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

【務川慧悟 Keigo MUKAWA】
東京藝術大学1年在学中の2012年第81回日本音楽コンクール第1位受賞を機に本格的な演奏活動を始める。
2019年ロン=ティボー=クレスパン国際音楽コンクールにて第2位を受賞。コンクール史上初の日本人が1位、2位を独占し大きな注目を集める。
東京藝術大学在学中、パリ国立高等音楽院に審査員満場一致の首席で合格し留学。パリ国立高等音楽院ピアノ科第1課程・第2課程、室内楽科を修了し、現在、ピアノ科第3課程、フォルテピアノ科の両科に在籍。
2015年エピナル国際ピアノコンクール(フランス)第2位。2016年イル・ドゥ・フランス国際ピアノコンクール(フランス)第2位。コープ・ミュージック・アワード国際コンクール(イタリア)ピアノ部門第1位、各部門優勝者によるファイナルにて第2位、聴衆賞を受賞。2018年第10回浜松国際ピアノコンクールにおいて第5位を受賞。
2017年シャネル・ピグマリオン・デイズのアーティストに選出され「ラヴェルピアノ作品全曲演奏」をテーマに6回のリサイタルを開催。
これまでに、日本各地、フランス、スイス、上海、ラトビア、イタリアにて演奏会を開催のほか、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、練馬交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、藝大フィルハーモニア、セントラル愛知交響楽団、愛知室内オーケストラ、中部フィルハーモニー交響楽団、NHK名古屋青少年交響楽団、トリフォニーホール・ジュニア・オーケストラ、フランスにてロレーヌ国立管弦楽団、フランス国立管弦楽団と共演。室内楽においては、チェロの木越洋氏、長谷川陽子氏、ヴァイオリンの篠崎史紀氏、大谷康子氏、石田泰尚氏、小林美恵氏等と共演。
テレビ、ラジオでは、NHK-FM“リサイタル・ノヴァ”“ベストオブクラシック” NHK-Eテレ“さらさらサラダ”“ららら クラシック”等に出演。
日本、ヨーロッパを拠点に幅広く演奏活動を行うと共に、これまでに、「ピアノの本」において留学記、ヤマハHPにてコラムを連載するなど多方面で活動している。
2012.13.14年度ヤマハ音楽振興会音楽支援奨学生。2015.16年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。2017年度公益財団法人江副記念財団奨学生。
2019年12月、ドイツのレーベル「ACOUSENCE」より初めてのCDをリリース。
フランク・ブラレイ、上田晴子、テオドール・パラスキヴェスコ、ジャン・シュレム、パトリック・コーエン、横山幸雄、青柳晋の各氏に師事。(メーカー資料より)

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

ショパンのボレロで私の好きな録音は

 

●尾崎未空(Pf) 2009年1月ショパンコンクール in Asiaライヴ盤(CD

●フアンチ(Pf) 2012年9月9日インディアナポリスライヴ(動画

●イーケ・トニー・ヤン(Pf) 2015年10月16日ショパンコンクールライヴ(動画

 

あたりだが、今回の務川慧悟もこれらに並ぶ、勢いのよい演奏。

 

 

ショパンのバラード第1番で私の好きな録音は

 

●ポリーニ(Pf) 1968年4月17-21日、7月1-3日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

●ポリーニ(Pf) 1974年4月?ライヴ盤(CD)

●フアンチ(Pf) 2010年10月10日ショパンコンクールライヴ(動画

●プーン(Pf) 2017年4月27日ルービンシュタインコンクールライヴ(動画

 

あたりだが、今回の務川慧悟は比較的クラシカルなこれらの演奏と異なり、序奏の後の第1主題でLargoからModeratoに速めず遅いテンポのまま、その後のagitatoで急激に速め、第2主題でまたぐっと遅くする、といった表現の振れ幅の大きい幻想曲風の解釈。

実験的な作品であるソナタ第2番(その記事はこちら)と違い整った形式感を持つこの曲にしては、やや自由すぎるかもしれない。

それでも、この難曲を細部まできわめて明瞭に鳴らし、コーダでも分厚い和音をペダルでごまかさず左手のアーティキュレーションまで正確に実現しており、相当にハイレベルな演奏であることは確か。

 

 

ショパンのノクターン第18番で私の好きな録音は

 

●江尻南美(Pf) 2009年頃セッション盤(Apple MusicCDYouTube

●古海行子(Pf) 2016年11月9日パデレフスキコンクールライヴ(動画) ※54:50~

 

あたりで、江尻南美の深遠な悠揚迫らぬ表現と、古海行子の枯淡の表現は、全く対照的ながら共にショパン晩年の境地を体現しているが、今回の務川慧悟は江尻南美に近いタイプで、古海行子なら5分台で終わるこの曲を7分以上かけてじっくり弾いている。

かつ、深々とした江尻南美の音とは違うシャープな音色が彼らしい。

 

 

ラフマニノフの「楽興の時」で私の好きな録音は

 

●ルガンスキー(Pf) 2000年セッション盤(NMLApple MusicCD

 

あたりだが、今回の務川慧悟は、ルガンスキーの深々としたロシアの音はないけれど(特に第4番はさすがルガンスキー、YouTube)、全く劣らぬ洗練された技巧や情熱的なロマンティシズムを持つ。

 

 

ブーレーズの「アンシーズ」(2001年版)は、これまでディミトリ・ヴァシラキスやエゴール・シェヴツォフの演奏が比較的出来が良く、また最近出たヨージェフ・バログのものも良かったけれど、今回の務川慧悟はこれら全てを凌ぐ圧倒的なキレとセンスを持つ決定盤。

 

 

 

 

 

なお、務川慧悟のこれまでのCDについての記事はこちら。

 

務川慧悟のデビュー盤 ラヴェル クープランの墓 バッハ 最愛の兄の旅立ちに寄せて

務川慧悟の新譜 ラヴェル ヴァイオリン・ソナタ ツィガーヌ

務川慧悟&反田恭平の新譜 ラフマニノフ 組曲第2番 ラヴェル スペイン狂詩曲

 

 


音楽(クラシック) ブログランキングへ

↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。