2020年ピティナ・ピアノコンペティション特級 ファイナル および結果発表 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

東京で開催されている、2020年ピティナピアノコンペティション(公式サイトはこちら)。

8月21日は、ついに特級のファイナル。

ネット配信を聴いた(こちら)。

ちなみに、2020年ピティナピアノコンペティション特級についてのこれまでの記事はこちら。

 

2次予選

2次予選追記

2020年ピティナ・ピアノコンペティション特級 3次予選通過者発表

3次予選追記

ピティナ特級公式アカウントにリツイートされた

セミファイナル

 

 

 

 

 

なお、以下はいずれも岩村力指揮、東京交響楽団(コンサートマスター:水谷晃)との共演である。

 

 

1. 谷昂登

 

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30

 

力強く深々と鳴らされるロシア風の音が、曲によく合っている。

特に協奏曲においては、彼のこうした音は大きな強みだろう。

幅の広く息の長い、個性的なデュナーミクやアゴーギクも健在。

ミスやタッチのムラは少なくないが、音楽がどっしり構えているためか、概ね気にならない。

 

 

2. 山縣美季

 

ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21

 

協奏曲らしい派手さに頼らず、清廉な音楽性で勝負した演奏。

ロマンティックな第2楽章も、まったりと奏される終楽章も大変美しい。

ただ、全体にややまったりしすぎているきらいがなくはない。

第1楽章の経過句や第2楽章の中間部などはもう少し激情を表出して、美しい主題とのコントラストをつけてほしいところ。

 

 

3. 尾城杏奈

 

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30

 

3人もの同曲演奏者の中では、やや存在感が薄い点は否めないけれど、その分2つの濃い演奏に挟まれた一服の清涼剤のようなところがあって、これはこれで悪くない。

それに、演奏の安定感という点では一番であった(第1楽章カデンツァの盛り上がる左右交互トレモロでのミスは少し惜しかったけれど)。

 

 

4. 森本隼太

 

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30

 

3次のときよりもテンポの変化が急で、速い箇所はさらに速くしており、オーケストラに「俺についてこい」と言わんばかりの勢い(3次は「緻密」、今回は「猛烈」といったところか)。

若々しく威勢が良いのだけれど、その反面やや勢い任せというか、焦っているようにも聴こえてしまう(ミスタッチもちょこちょこある)。

とはいえ、第2楽章の急速部分や終楽章の展開部などではやはり技巧にキレがあるし、全体的に情熱がみなぎり聴きごたえがある。

 

 

 

 

 

そんなわけで、以上の4人の演奏に、私の中で勝手に順位をつけるとすると

 

1. 谷昂登

2. 森本隼太

3. 山縣美季

4. 尾城杏奈

 

というような感じになる。

しかし、どこがどう入れ替わってもおかしくない、拮抗する出来だったように思う。

 

 

 

 

 

さて、ファイナルの実際の結果は以下のようになった。

 

【ファイナル結果】

 

グランプリ: 尾城杏奈

銀賞: 森本隼太

銅賞: 谷昂登

入選: 山縣美季

 

 

予想は大きく外れてしまったが、これはこれで納得がいかないこともない結果である。

尾城杏奈の安定感、完成度の高さは、優勝に値しうるものと思う(4番目に選んでおいていまさら何を言う、と叱られそうだが)。

そして他の3人も、それぞれ今後の磨き上げ方によってはさらなる名演が期待できそう。

 

 

なお、聴衆賞は以下の通り。

 

【聴衆賞】

1位 森本隼太

2位 山縣美季

3位 尾城杏奈

4位 谷昂登

 

 


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