イルミナートフィルハーモニーオーケストラ 大阪公演 西本智実 ビゼー 「カルメン」 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

オペラ「カルメン」 芸術監督・指揮 西本智実

誰がカルメンを殺したのか…!?

 

【日時】

2019年2月17日(日) 開演 16:00 (開場 15:15)

 

【会場】

岸和田市立波切ホール 大ホール (大阪)

 

【演奏・スタッフ】

芸術監督・指揮:西本智実

管弦楽:イルミナートフィルハーモニーオーケストラ

キャスト

カルメン:糀谷栄里子

ドン・ホセ:二塚直紀

ミカエラ:周防彩子

エスカミーリョ:伊藤友祐

スニガ:林隆史

ダンカイロ:西田昭広

メルセデス:村岡瞳

フラスキータ:権優歩

レメンタード:松岡重親

合唱:なみきり合唱団・イルミナート合唱団・岸和田市少年少女合唱団

合唱指導:野上貴子 松岡重親 熊本佳永 ほか

フランス語ディクション指導:熊本佳永

 

【プログラム】

ビゼー:オペラ「カルメン」

 

 

 

 

 

西本智実&イルミナートフィルの演奏会を聴きに行った。

曲目は、オペラ「カルメン」。

この曲で私の好きな録音は、

 

●C.クライバー指揮ウィーン・フィル 1978年12月9日ウィーンライヴ盤(Blu-ray

●レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場管 1987年2月ニューヨークライヴ盤(DVD

●ネゼ=セガン指揮メトロポリタン歌劇場管 2010年1月ニューヨークライヴ盤(Blu-ray

 

あたりである。

また、先日映画上映された、フルシャ指揮ロイヤル・オペラの演奏も良かった(それについて以前書いた記事はこちら)。

ところで、西本智実の「カルメン」は、録音されていない。

実演で聴くのも、私にはこれが初めて。

どのような演奏になるのか、楽しみにしていた。

 

 

聴いてみると、やはり素晴らしい演奏だった。

彼女がベートーヴェンやチャイコフスキー、ドヴォルザークを振ったときのような重量感や熱狂はあまりなく、むしろ落ち着きの感じられる、大人な解釈である。

フランス音楽だからということもあるのか、この曲のデモーニッシュな面よりも、むしろ音楽そのものの美しさを重視しているような印象を受けた。

私の事前に予想した演奏とは違っており、最初は「あれっ」と思ったのだが、聴き進めるとその良さが分かってきた。

弦による歌や、木管同士の絡み合いが、特に強調されるというのでなく、自然な形で美しく表現されていく。

こうした点も、西本智実の重要な持ち味の一つであろう。

彼女のこれまでの演奏においても、例えばプロコフィエフ交響曲第1番終楽章だとか(その記事はこちら、記録のみ)、あるいはベートーヴェンの交響曲第9番第3楽章などで(その記事はこちら)、いまだに忘れられない弦や管の美しいハーモニーを体験したのだった。

ハーモニーを、と書くと少し語弊があるかもしれない。

西本智実は、ハーモニーそのものの美を、ガラス玉に磨きをかけたような透明さで聴かせるブーレーズやカンブルランのようなタイプとは、少し違っている。

彼女の場合、無機的な美を追求するよりは、もっとエモーショナルな、ロマン的なニュアンスを出した演奏となっている。

ただ、ニュアンスといっても、それはクルレンツィスやネゼ=セガンのように、細部まで精巧に仕上げた手細工のような表情付けとも、また違う。

そうした細部への極度のこだわり、ある種の誇張表現ともいうべきものとは全く無縁の、もっと大きな視野で見たロマン性を、彼女の演奏は有している。

この曲のこの部分の解釈が個性的だとか、ここの切れ味がすごいとかではなく、全体的に聴いて何やら実に良いのである。

細部の完成度よりも、全体の完成度。

その意味では、カラヤンやアバドに通じるところのある演奏と言っていいかもしれない(この2人もそれぞれ全く異なる特徴を持っているけれど、この点においては共通しているように思う。そして、フルトヴェングラーも実はそうである)。

局所の表現にとりわけ注力するというよりも、全体としての音楽の流れや構成を感得するインスピレーション、そしてそんな演奏を実現する絶妙なバランス感覚。

こう考えると西本智実の「カルメン」は、例えば彼女の「悲愴」の演奏(その記事はこちら)とは一見全く異なるようでいて、実は同一の要素が底流していることが分かる。

 

 

なお、歌手には強い個性を持った人はいなかったものの、それほど不満を感じないレベルの歌唱が聴けた(中では、ドン・ホセ役の二塚直紀が少し存在感があった)。

また、演出は大掛かりなセットもなく極めてシンプルなものだったけれど、変に曲解した現代的な演出よりもずっと良い。

私には、これで十分である。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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