石上真由子 久末航 京都公演 ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第6番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

「軽さと幻想」

 

【日時】

2018年10月3日(水) 開演 20:00 (開場 19:30)

 

【会場】

カフェ・モンタージュ (京都)

 

【演奏】

ヴァイオリン:石上真由子

ピアノ:久末航

 

【プログラム】

シューマン:ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 ハ長調 作品131

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第6番 イ長調 作品30-1

 

 

 

 

 

カフェ・モンタージュのコンサートを聴きに行った。

石上真由子&久末航による、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏シリーズ全10回のうち、今回が第3回とのこと。

石上真由子というと、医大卒のヴァイオリニストとして有名である。

しかし、2008年の音コンで当時まだ高校生にもかかわらず第2位に入賞した彼女の実力は、医大卒云々といったレベルを超えている。

といっても、これまで私は彼女の演奏を録音でしか聴いたことがなく、今回楽しみに聴きに行った。

 

 

今回の演奏会は「軽さと幻想」と題されており、文字通り軽やかで幻想的な曲が集められていた。

最初の曲は、シューマンの「幻想曲」op.131。

この曲は、私はオイストラフ/ヤンポリスキー盤で聴くことが多く、もちろん良いのだが、シューマン晩年の傑作たるこの曲にふさわしい決定的な名盤には未だ出会っていない。

なおピアノ・パートについては、1ヶ月前に聴いた石井楓子の演奏が、これ以上ないという素晴らしい出来だったけれど(そのときの記事はこちら)。

今回の石上真由子の演奏は、晩年のシューマン特有のファンタジーを感じさせるかというとさすがにそこまでではなかったが、それでもオーソドックスな音楽のつくり方には好感が持て、また音程などテクニック面での安定感もなかなかのものだった(高音域の急速なパッセージや、重音奏法の箇所では、ときにやや危うくなるけれど)。

 

 

次の曲は、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ。

この曲で私の好きな録音は、

 

●五嶋みどり(Vn) マクドナルド(Pf) 2001年5月セッション盤(Apple MusicCD

 

あたりである。

洗練の極み、というほかない決定的な名盤。

今回の石上真由子の演奏は、この盤と比べてしまうとさすがに分が悪いけれど、変に濃厚な味を付けない彼女の音楽性は、この曲に合っている。

第1楽章の途中、転調する際の高音部へのグリッサンドや、あるいは終楽章の無窮動的なパッセージなども、勢い任せにならず丁寧に扱われており、大変良かった。

 

 

最後の曲は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第6番。

この曲で私の好きな録音は、

 

●ファウスト(Vn) メルニコフ(Pf) 2008年7月セッション盤(NMLApple MusicCD

●イブラギモヴァ(Vn) ティベルギアン(Pf) 2010年5月25日ロンドンライヴ盤(NMLApple MusicCD

 

あたりである。

どちらも、今回のテーマである「軽さと幻想」にぴったり合う美演となっている。

今回の石上真由子の演奏は、これら2盤ほどのふわっとした軽やかさはないにせよ、ケレン味のない音楽性が好ましかった。

冒頭の数小節、ピアノが主旋律を奏する箇所ではもう少しヴァイオリンの音量を下げるなど、細かな工夫があるとなお良いかもしれない。

 

 

なお、ピアノの久末航の実演を聴くのも、今回が初めて。

昨年のARDコンクールのネット配信(その記事はこちらなど)でも感じたように、彼の演奏は少しそっけないというか、細部の表現力にやや難があって、私の好みとはずれるところもある。

しかし、同コンクールで第3位を受賞しただけあって、メカニックの点ではかなりのもの。

スタッカートのパッセージや、左手の速い走句など、難しそうな箇所でも安定していて、さすがだった。

もう少し各表現を「歌」に溢れさすことができれば、なお良いのではないかと思う。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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