佐藤卓史 中桐望 京都公演 シューベルト グランド・ソナタ D617 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

「F.シューベルト」

― シューベルト ピアノ作品全曲シリーズvol.12―

 

【日時】

2018年9月29日(土) 開演 20:00 (開場 19:30)

 

【会場】

カフェ・モンタージュ (京都)

 

【演奏】

ピアノ:佐藤卓史、中桐望

 

【プログラム】

シューベルト:

ロンド ニ長調 D608

ドイツ舞曲と2つのレントラー D618

ソナタ 変ロ長調 D617 《グランド・ソナタ》

フランスの歌による8つの変奏曲 ホ短調 D624

 

※アンコール

シューベルト:3つの英雄的行進曲 D602 より 第3曲 ニ長調

 

 

 

 

 

カフェ・モンタージュのコンサートを聴きに行った。

佐藤卓史による、シューベルトのピアノ曲全曲演奏シリーズの第12弾である。

今回は、中桐望との連弾曲集。

2012年浜松国際ピアノコンクールでの2位と3位という、何とも贅沢な取り合わせである。

こんなにハイレベルな連弾は、そう聴けるものではない。

これまでにも、佐藤卓史の連弾としては、

 

vs 川島基  → 2005年と2007年シューベルト国際ピアノコンクール(ドルトムント) 優勝

 

vs 山本貴志  → 2001年日本音楽コンクール(ピアノ部門) 優勝と3位(2位なし)

 

といった豪華な共演(競演?)を聴いてきた。

「おっ」と思わされるような、様々な縁による共演者を選んでくるのが彼の連弾の特徴であり、いつも大変面白い。

 

 

今回の曲は、いずれもあまり馴染みのないものだったけれど、さすがシューベルトだけあって、美しい曲ばかりだった。

あるいは、演奏が良いので、そう感じたのかもしれない。

D608、D618の後半、アンコール(D602)では中桐望が、D618の前半、D617、D624では佐藤卓史が、それぞれプリモ(高音部パート)を担当していた。

このように担当パートが入れ替わると、それぞれの演奏の特質がよく分かる。

中桐望はやや細身の音で、演奏様式はロマン的。

佐藤卓史はより肉厚のしっかりとした音で、その味わいはどちらかというと少し古典派寄りのところがある。

2人のそうした違いの聴き比べを楽しむことができ、それでいて全体としてはシューベルトらしくきちんとまとまっているような、そんな演奏だった。

そして、上述のとおり贅沢な共演だけあって、タッチの安定感やタイミングの合わせ方といったテクニカルな面でも、両人ともにハイレベルである。

 

 

佐藤卓史による曲間のトークでは、これらの連弾曲がいずれも1818年、シューベルトが21歳のときに書かれた旨が紹介された。

当時、シューベルトは生まれて初めて、音楽家としての雇用を得ることができた。

ハンガリーの街ツェリスでの、エステルハージ伯爵家の姉妹、16歳のマリアと13歳のカロリーネのピアノレッスンの職である。

シューベルトは、彼女たちへのレッスンの教材としてこれらの連弾曲を作曲したらしい。

変奏曲D624などかなりの自信作だったようで、ベートーヴェンに献呈したほど。

シューベルトは、教えるうちにカロリーネに恋するようになったといわれる(佐藤卓史はそこまでは言っていなかったが)。

教材という以上に、彼女と一緒に連弾したくて、喜々としてこれらの連弾曲を書いたのかもしれない。

「エステルハージ伯爵家の台所の隅にあったピアノに思いを馳せながら、カロリーネのような中桐さんと、眼鏡の音楽家との連弾をお聴き下さい」

そんな曲紹介の後に奏されたソナタや変奏曲は、カフェ・モンタージュのレトロな雰囲気も相まって何とも趣深く、もう弾いているのはシューベルトその人にしか見えなかった。

 

 

なお、同様の公演が10月5日(金)に東京でも行われる予定とのことである。

興味のある方はぜひ(詳細はこちら)。

また、佐藤卓史による中桐望のインタビュー記事が、彼のブログで紹介されている。

中桐望についてはもちろんのこと、佐藤卓史のシューベルト全曲演奏シリーズの苦労話なども載っていて面白く、ご一読をお勧めしたい。

 

インタビュー連載第1回はこちら

インタビュー連載第2回はこちら

インタビュー連載第3回はこちら

インタビュー連載第4回はこちら

 

 

中桐さんインタビュー1

 

(画像は上記インタビュー記事のページよりお借りしました)

 

 

 

(サインをいただいた佐藤卓史のCD)

 

 


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