(ネゼ=セガンの新譜 ロッテルダム・フィル未発売ライヴ録音集) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

好きな指揮者ヤニク・ネゼ=セガンの、バーンスタイン作曲の「ミサ曲」の新譜が発売されたことは、つい先日の記事に書いた(その記事はこちら)。

それからまだ日も経っていないが、彼の次の新譜が発売された。

ロッテルダム・フィル創立100周年、および首席指揮者ネゼ=セガン就任10周年を記念した、未発売ライヴ録音6枚組CDである(Apple Musicその1その2その3その4その5CD)。

詳細は下記を参照されたい。

 

 

 

 

 

 

楽団創立100周年と指揮者就任10年を記念した充実のアルバム

未発売のライヴ録音を収録したこの6枚組CDは、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の創立100周年と、首席指揮者ヤニク・ネゼ=セガンの就任10年を記念したアルバムです。
 ヤニク・ネゼ=セガンが厳選した収録曲目には、マーラーの第10番、ショスタコーヴィチの第4番、マルカンドレ(マルク=アンドレ)・アムランのピアノによる世界初録音のマーク=アンソニー・タネジのピアノ協奏曲、そして極めて感動的なハイドンの『悲しみ』交響曲があります。
 カナダの巨匠ヤニク・ネゼ=セガンは、2008年にロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任し、この素晴らしい録音のセットで分かるように、同楽団の新たな黄金時代を築きました。2011年から2016年に行われたデ・ドーレン・コンサート・ホールでのライヴ録音がドイツ・グラモフォンから初めてまとめて発売されます。(輸入元情報)

【収録情報】
Disc1

1. ショスタコーヴィチ:交響曲第4番ハ短調 Op.43

Disc2
2. マーラー:交響曲第10番嬰ヘ長調

Disc3
3. ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調 Op.93
4. チャイコフスキー:幻想曲『フランチェスカ・ダ・リミニ』 Op.32
5. タネジ:ピアノ協奏曲

Disc4
6. バルトーク:管弦楽のための協奏曲 Sz.116
7. ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調 Op.88

Disc5-6
8. ブルックナー:交響曲第8番ハ短調 WAB108
9. ドビュッシー:夜想曲
10. ハイドン:交響曲第44番ホ短調 Hob.I-44『悲しみ』

 マルカンドレ・アムラン(ピアノ:5)
 コレギウム・ヴォカーレ・ゲント合唱団(9)
 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
 ヤニク・ネゼ=セガン(指揮)

 録音時期:2011年6月(6)、2012年11月(10)、2013年10月(5)、2014年12月(9)、2015年11月(4)、2016年2月(8)、4月(2)、12月(1,3,7)
 録音場所:ロッテルダム、デ・ドーレン
 録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

これは素晴らしいアルバムである。

ヤニク・ネゼ=セガンの演奏は、現代の指揮者らしい完成度の高さを特徴としている。

神経質なまでの細部への驚異的なこだわりという点で、彼はテオドール・クルレンツィスと双璧だと思う(ネゼ=セガンは優等生的、クルレンツィスはやんちゃと、音楽性は対極的だけれど)。

特に、彼の振るフランス物については、ドビュッシーの「海」といい、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」といい、それまでずっと好きだったブーレーズ盤を超えるほどの名盤だったため、今回のドビュッシー「夜想曲」はとりわけ期待していた。

聴いてみると、期待以上の出来映えである。

どの一音、一フレーズもおろそかにせず丁寧に扱い、全ての箇所に磨きをかけていくのだが、それでいて「入念に仕上げた細部の寄せ集め」とはならず、全体としての自然さをも失わない。

そんな彼のやり方は、細部への拘泥を許さないブーレーズとは全く違っているけれど、演奏の質としては全く劣らないし、ドビュッシーらしい詩情を湛えているという点ではブーレーズ盤以上(逆にブーレーズはドビュッシーを「詩人」というよりも「現代音楽の先駆者」として扱っており、そちらもまた絶品なのだが)。

演奏の完成度や音質などを勘案すると、この「夜想曲」は、これまでの「海」や「牧神の午後」前奏曲と同じく、ブーレーズ盤を超えるか、あるいは少なくとも匹敵するような、最高の名盤といっていいように思われる。

 

 

他の収録曲も、素晴らしい。

バルトークのオケコンは、先日の記事に書いたフルシャ盤(その記事はこちら)にも劣らない出来。

柔和で自然なフルシャ盤に対して、より緻密で明晰なこだわりが活きている。

ドヴォルザークの交響曲第8番も、情緒纏綿すぎないさわやかな美演。

マーラーの交響曲第10番は、彼にはモントリオール・メトロポリタン管との旧盤があるけれど、それに劣らぬ名盤(ごくわずかに旧盤のほうがより美しいような気はするけれど)。

ブルックナー第8番はナガノ指揮ベルリン・ドイツ響盤のような引き締まった様式感はないし、ショスタコーヴィチ第4番はビシュコフ指揮WDRケルン響盤のような凄まじい狂気はないけれど、それでも決して駄演ではなくて、やはり細部の完成度が見事。

 

 

素晴らしいライヴ音源が世に出たことに感謝したい。

 

 


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