近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018
マイケル・コリンズ(クラリネット)/小川典子(ピアノ)
【日時】
2018年5月4日(金) 時間 15:45~16:30
【会場】
びわ湖ホール 中ホール (滋賀)
【演奏】
クラリネット:マイケル・コリンズ
ピアノ:小川典子
【プログラム】
フィンジ:5つのバガテル op.23
シューマン:幻想小曲集 op.73
プーランク:クラリネットとピアノのためのソナタ FP184
近江の春 音楽祭で、私の聴いた5番目の公演。
クラリネット奏者マイケル・コリンズと、ピアニスト小川典子による共演である。
最初は、フィンジの「5つのバガテル」。
これは、コリンズの師匠のクラリネット奏者に捧げられた曲とのこと。
あまり聴き慣れない曲だが、コリンズのトークにもあった通り、かつてのイギリスのウィットや田園風景を彷彿とさせる音楽だった。
次は、シューマンの幻想小曲集。
この曲で私の好きな録音は、
●メイエ(Cl) ル・サージュ(Pf) 1993年セッション盤(CD)
●メイエ(Cl) ル・サージュ(Pf) 2006年セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
この曲はメイエの独壇場であり、シューマンの憧憬を美しく表現して余すところがない。
今回のコリンズの演奏は、メイエほどの驚異的な繊細さはないものの、弱音の美しさの光る佳演だった。
最後は、プーランクのクラリネット・ソナタ。
この曲で私の好きな録音は、
●メイエ(Cl) ル・サージュ(Pf) 1991年4月23~25日セッション盤(Apple Music/CD)
●メイエ(Cl) ル・サージュ(Pf) 1998年7~8月セッション盤(Apple Music/CD)
●コリンズ(C) マクヘイル(Pf) 2010年6月10~12日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
メイエ盤はやはりすごいけれど、コリンズ盤も負けていない。
繊細で情感豊かなメイエに対し、コリンズにはよりカラッと乾いた味わいがあって、プーランクの重要な側面―新古典主義的な―をよく表現している。
今回、そのコリンズによるこの曲の生演奏が聴けるということで楽しみにしていたが、期待通りの名演だった。
相変わらず、スタッカートも速い走句もパキッと明快でキレがある。
強音はややかすれるけれど、弱音は朗々として余裕があり美しい。
殊に終楽章の鮮やかさは大変に印象的だった。
ピアノの小川典子も、先ほどのソロ・リサイタルでは強靭なタッチにやや驚いたけれど(そのときの記事はこちら)、こちらでは室内楽だからか、あるいはベーゼンドルファーのピアノだからか、強靭さが前面に出すぎることなくクラリネットとうまく調和していた。
プーランクのクラリネット・ソナタのピアノ・パートについては、先日聴いた高御堂なみ佳による、そこはかとないロマンを湛えたみずみずしい演奏がとりわけ印象に残っている(そのときの記事はこちら)。
今回の小川典子はよりザッハリヒなスタイルながら、それがコリンズの音楽性とよく適合していた。
小川典子は、渡英して間もない頃、コリンズの伴奏者として7年間ほど活動していたとのこと。
そして今回、約20年ぶりに共演したとのことである。
20年!
あっという間だったかもしれないけれど、それでもなかなかの年月である。
きっと、お互い変わっているところもあれば、全然変わらないところもあり、相当に感慨深いものがあったのではないだろうか。
2人ともイギリスで活動していても共演の機会はずっとなくて、今回むしろ日本でその機会があった。
共演の縁とは、面白いものである。
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